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南波アナが忘れられないWBCの実況とは?TBSスポーツ番組の裏側
TBSは、11月9日(土)開幕の『世界野球プレミア12』を放送します。世界ランキング上位12チームが参戦する野球の祭典で、日本は前回に続き、連覇を狙う注目の大会です。
放送にあわせ、この記事ではTBSを代表するスポーツ番組に注目。『世界陸上』『バレーボールネーションズリーグ』『WBC』『パリ五輪』に携わった担当者に、スポーツ番組の裏側について聞きました。
初めて実況を担当した『WBC』を振り返る
2023年3月開催の『2023ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』で、初めて野球の国際大会のテレビ中継で実況を務めたTBSアナウンサー・南波雅俊。振り返ってみて、いかがでしたか?
南波 スポーツ中継の主役は選手なので、目の前で起きていることを大事にし、邪魔をしない見やすい放送を心がけています。今回は特に、現場の音や間を生かすことも意識して臨みました。放送を終えてみると、解説の皆さんにもっといろいろなことを聞けたなとか、組み立て方は他にもあったなとか、反省が多く浮かびます。
でも、それも含めて間違いなく大きな経験をさせていただいたと思います。特に、WBCデビューの大谷翔平選手の第1球から実況できたことは、人生で忘れられない出来事のひとつです。本当に1球1球、東京ドームがどよめいて、異様な空気感でした。「夢がかないました、はい終わり」というわけではなく、今回の放送に関われた経験を糧に、今後のアナウンサー人生に活かさなくてはと思います。
特に印象に残ったシーンは?
少数精鋭のチームで挑んだ『パリ五輪』
2024年7月に開催されたフランス・パリの夏季オリンピック。TBSの放送のチーフディレクターを務めたのは、TBSスパークルの前野亮太です。オリンピックの放送にはどれぐらいの人数が携わっていますか?
前野 日本で作業するスタッフを含め、全体で150人ほどになります。そのうち、現地に行くのは制作の中継チームとニュースの取材ディレクター、アナウンサーなど約70人です。これは、前々回のリオや、海外開催の夏のオリンピックと比べてかなり少なくなっています。その理由は予算の都合もありますが、アクレディテーション(会場に入るためのパス)の枚数が限られていることが大きいです。
放送に向けて、どんな準備があるのでしょうか。
前野 TBS独自の方針だと思いますが、TBSのスポーツ放送では、データ放送で各競技に出てくる用語解説を準備しています。オリンピックは、NHKと在京民放キー局で構成する「JC」のチームとして放送します。各局から集まったアナウンサーは自局で放送するかは関係なく、各放送枠に振り分けられます。そのため、TBSの放送競技の実況者が、必ずしもTBSのアナウンサーとは限りません。そうすると難しい専門用語の説明をしないまま放送が続くことも予想されます。
そこでTBSでは担当ディレクターが事前にルールを勉強しながら、数百枚のテロップを作っています。オリンピックは種目の数が多い上に、あまりテレビで見る機会のない競技もありますので、事前の準備が欠かせません。
事前取材にも注力した『バレーボールネーションズリーグ』
2024年5月に開催された「バレーボールネーションズリーグ2024」のチーフディレクターを務めたのは、TBSスパークルの林沙織。今大会の準備はいつ頃からしていましたか?
林 2023年の大会からです。「来年もしかしたら地上波で放送するかもしれない」と聞いていたので、各自が自覚をもって中継スキルを磨き、取材に関しても早めに動き出し準備をしてきました。
スポーツ中継は、生放送までどんな風につながっているのでしょうか。
林 スポーツ中継は準備が9割です。「スポーツは筋書きのないドラマ」とよく言われていますが、どんな展開になるのか、勝敗も最後までわからないので、いかに事前に準備し、対応できるかが勝負になります。
例えば、キャプテンの古賀紗理那選手が体幹強化や走り込みによって昨年より高い打点でスパイクを打てるようになっていると取材で知っていれば、それが伝わりやすい場所にカメラを置いたり、撮り方をカメラマンさんと事前に打合せをしたりします。さらにその画を中継で映したときに、実況でその話題に触れてもらって初めて視聴者にわかりやすく伝わるので、アナウンサーとの連携も欠かせません。
林さんも取材へ行かれていますか?
林 取材は基本的に若手に行ってもらっていますが、私は長年、日本代表女子の取材を担当しているので、統括としてチームと向き合っています。古賀選手は高校一年生の頃から取材してきて、リオオリンピックの代表メンバー漏れの悔しさや東京オリンピックで怪我をしたところも見てきたし、キャプテンになって、結婚して…とずっと追いかけさせてもらってきました。
取材中、選手に言われて嬉しかった言葉は?
『世界陸上』に向けて、自ら海外へ取材も
『世界陸上2023 ブダペスト』の総合司会を務めたTBSアナウンサー・石井大裕。大会に向けて、どんな準備があったのでしょうか。
石井 TBSが作ってきた『世界陸上』の歴史をもう一度おさらいしようと思い、1997年のアテネ大会から全大会のDVDを見直しました。当時、リアルタイムで見ていた記憶はありましたが、大人になってから見ると感じ方が違いましたし、織田裕二さんが発せられた飾らない言葉からは、陸上への深い愛を感じました。
普段から精力的にアスリートへの取材をされていますが、選手とコミュニケーションをとる上でどんなことに気を付けていますか?
石井 記者の中にはプライベートまで仲良くなるタイプの人も多いと思いますが、僕は特定の選手に思い入れが強くなってしまうのは良くないと考えているので、現場で自分が感じたことを素直に本人に聞くということを大事にしています。
そのためには取材対象の選手がどんなキャラクターで、どんなところが世界に注目されていて、視聴者は何が見たいのか調べる。まだあまり知られていない選手なら、選手の魅力を探します。それが僕がやらなければいけないことであり、伝えたいことです。
ディレクターやプロデューサーの方々から集めたデータを見るだけでなく、直接取材をするようにしていて、実は今回もジャマイカの大会や全米選手権に行かせていただきました。自分が現地で見たものと、ネットの記事やスタッフのアイデアを合わせて準備しています。
これまで延べ何人の選手にインタビューしました?