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スポーツ中継は準備が9割!TBSスパークル林沙織に聞く、「バレーボールネーションズリーグ」の裏側

地上波TBS系列とBS-TBSは、5月16日に開幕する「バレーボールネーションズリーグ2024」の日本戦全試合を放送します。同大会は、年に一度、世界のトップチームが男女16チームが参加する世界三大大会の一つです。この大会の予選が終了した時点の世界ランキングによってパリオリンピックに出場できるチームが男女ともに最終決定します。

日本の男子代表はすでにパリオリンピック出場権を獲得していますが、女子日本代表は今大会の結果で出場が決まるため、「男女ともにパリへ!」をテーマに掲げて大会に挑みます。

大会のチーフディレクターを務めるのは、TBSスパークルの林沙織。大会に向けた意気込みやスポーツ中継の裏側について話を聞きました。

男女ともにパリ五輪へ

「バレーボールネーションズリーグ2024」キービジュアル

今回、ネーションズリーグのチーフディレクターを任されてどんな心境ですか?

 本当に光栄でやりがいしかありません。今回、ネーションズリーグ 日本ラウンドをTBSが地上波ゴールデンタイムで8試合放送するので、営業やプロモーション部含め、会社全体でバレーボールを盛り上げようとしてくださっています。一人でも多くの人に中継を見て、選手達を知ってほしい、そして見てくださるファンの方たちが、より応援したくなるような映像を届けなければという使命感があります。

また、TBSのバレーボール班はこれまで携わってきた先輩たちが歴史をつないできてくれたおかげで、日本代表チームとかなり距離が近く、「チームジャパン」としてお互いの仕事をプロとして全うしているように感じています。

今大会の準備はいつ頃からしていましたか?

 昨年の大会からです。「来年もしかしたら地上波で放送するかもしれない」と聞いていたので、各自が自覚をもって中継スキルを磨き、取材に関しても早めに動き出し準備をしてきました。

どんなチーム体制で中継に臨むのでしょうか?

 海外ラウンドをBS-TBSで全試合放送し、日本ラウンドを地上波TBS系列で生中継するので、営業、コンテンツ戦略部、BS-TBS、プロモーション部、イベント事業部、スポーツ局で毎週集まって準備をしてきました。TVerとUNEXTでライブ配信もあるので、「オールTBS」で大会を盛り上げられるように意識しています。

TBSスパークルは、地上波およびBS‐TBSの中継番組制作のすべてを受託しており、さらに、国際映像制作も請け負っています。国際映像の制作の部分では、世界中に自分たちの作った映像が分岐されるというプレッシャーもありますが、しっかりと臨場感がある映像を視聴者の方にお届けしたいと思っています。

TBSスパークル林沙織

何が起きるかわからない、スポーツ中継の魅力

そもそもスポーツ中継は、生放送までどんな風につながっているのでしょうか?

 スポーツ中継は準備が9割です。「スポーツは筋書きのないドラマ」とよく言われていますが、どんな展開になるのか、勝敗も最後までわからないので、いかに事前に準備し、対応できるかが勝負になります。

例えば、キャプテンの古賀紗理那選手が体幹強化や走り込みによって昨年より高い打点でスパイクを打てるようになっていると取材で知っていれば、それが伝わりやすい場所にカメラを置いたり、撮り方をカメラマンさんと事前に打合せをしたりします。さらにその画を中継で映したときに、実況でその話題に触れてもらって初めて視聴者にわかりやすく伝わるので、アナウンサーとの連携も欠かせません。

映像と実況と表示されるテロップがリンクすることが中継においては非常に大切で、取材した内容はスタッフ全体で日々共有しています。

余談ですが、TBSのバレーボール中継は各部署の皆さんが力を入れてくださっていて、冬に日本代表のコーチを招いてバレーボールの勉強会を開催したところ、アナウンサーが7~8名、カメラマンや音声、SW、VTRなど技術さんも10名以上が参加してくれました。皆さん、バレーボール中継をさらに良くしようとしてくれているのでありがたい気持ちでいっぱいです。

林さんも取材へ行かれていますか?

 取材は基本的に若手に行ってもらっていますが、私は長年、日本代表女子の取材を担当しているので、統括としてチームと向き合っています。例えば、女子キャプテンの古賀紗理那選手は高校一年生の頃から取材してきて、リオオリンピックの代表メンバー漏れの悔しさや東京オリンピックで怪我をしたところも見てきたし、キャプテンになって、結婚して…とずっと追いかけさせてもらってきました。

古賀紗理那選手との2ショット

信頼関係を一番大切に仕事をしているので、辛いことや嬉しいことがあったときに「林さんだから取材受けます」と言ってもらえる瞬間が本当に積み重ねてきてよかったなと感じます。

取材では監督やマネージャーさんと密に連携をとり、取材内容や描き方を確認しています。その内容を『S☆1』などのスポーツニュースや『バース・デイ』や『アスリートDays』などに売り込むことも仕事の一つです。

TBSスパークル林沙織・取材の様子

ドラマなど他の番組制作とは随分違うんですね。

 例えばドラマなら台本があって決められたものをいろいろな角度からこだわって撮っていきますが、スポーツ中継は生ものなので、起きたことに対していかに対応していくかという点に重きを置いています。私はスポーツしか経験がないので、ドラマの現場に見学に行ったときは驚きました。

もちろん、予想外のことが起きるから楽しいし、そこが醍醐味でもあり、正解もないので奥深いですよね。雨が降ったり地震が起きたりしたらどうするか、全部準備しておかなければならないので、番組制作の中でも特殊だと思います。

あとは、視聴者の方にどんな思いを込めて見てもらうか、目線付けすることも大事です。いきなり選手全員の顔と名前は覚えられないと思うので、試合ごとに何に注目してもらうか考えながらディレクションしています。

例えば今回の女子はパリオリンピックの出場権がかかっているので、どうしたらその切符がとれるのか、チームは何を強化してどういうバレーをしようとしているのか、試合ごとに注目選手をしっかり紹介していこうと思っています。

ズバリ、今回のネーションズリーグの見どころはどこですか?

 まず、女子はパリオリンピックに出場できるかどうかが今大会で決まります。東京オリンピックで惨敗した悔しさを旨にパリに挑む選手、オリンピックという舞台に憧れ、初出場を目指す選手…選手達のオリンピックにかける想いはさまざまですが、ONETEAMとなってパリオリンピックに挑む姿をみていただきたいです。

男子は、昨年の3位に続き、連続での表彰台を目指しています。すでにパリオリンピックの出場権は獲得しており、世界ランキングも4位と、オリンピックでの52年ぶりのメダルを狙える位置にいます。今大会はパリに向け、試金石となる大会。完成された日本男子バレーをみてほしいです。

また、選手たちの人間ドラマも見どころです。古賀紗理那選手と男子エースの西田有志選手は夫婦で、「一緒にパリに行こう」という思いで頑張っています。選手の数だけ一人ひとりにストーリーがあり、魅力的な選手が揃っているので、ぜひ注目してほしいです。選手を知ってもらえるように、YouTubeやSNSを通じて情報を発信しているのでチェックしてみてください!

WBCの中継や五輪取材等で海外に行くチャンスも!

ところで、林さんはなぜこの仕事をしようと思ったのでしょうか?

 私は教育学部体育専攻だったので、当初は教師になろうと思っていましたが、学校の世界だけしか知らない先生になるのは嫌だったので、人間の幅を広げたいなと漠然と思っていました。就職活動中がちょうど2009年のWBCで日本が優勝したときと重なって、スポーツには人を元気にする力があるんだなとテレビを通じて実感し、スポーツ専門の制作会社であるビューキャスト(現TBSスパークル)に入社しました。実は3年で辞めようと思っていましたが、仕事がおもしろすぎて現在に至ります(笑)。

TBSスパークル林沙織

バレーボールの仕事に関わるようになったのは、いつ頃ですか?

 2012年のロンドンオリンピックのOQT(最終予選)の頃からADとしてバレーボールの中継に関わるようになりました。ロンドンオリンピックのときに女子チームは銅メダルを獲得したのですが、当時のプロデューサーや取材担当の先輩が、眞鍋監督から「一緒に戦ってくれてありがとう」と言われ、一緒に泣いて喜んでいるところがすごく印象的で、自分もこんな風になりたいなと思いながら仕事をしてきました。技術さんやアナウンサーも含め、バレーに対する愛情が深い先輩たちばかりで、先輩たちから受け継いだTBSのバレー中継のチームワークや熱量は今後も後輩たちに繋いでいきたいと考えています。

TBSスパークルの強みは何だと思いますか?

 TBSスパークルは今、TBSグループの制作部門を担っていこうとしているので、いろいろな現場に携わることができます。例えばオリンピックやWBCなどの取材や中継で海外に行くチャンスもあるし、制作会社なので、モノづくりに集中しやすい環境が整っていると思います。

スポーツの現場の話をすると、試合も間近で観れるし、取材で選手に会うこともできるので、スポーツが好きな人にとって本当に夢のある仕事だと思います。例えば私は中学・高校でバレーボールをやっていたので、バレーボールの取材担当になれて本当に嬉しかったですし、高校生の頃の自分に「将来、竹下佳江さんや木村沙織さんに取材できるから頑張りな!」と教えてあげたいくらいです。本当に幸せな仕事だと思います。

それと、日本バレーボール協会のオフィシャルカメラマンとして出向中の後輩もいます。日本代表の選手達と同じジャージを着て、そこで撮った映像が公式映像として各局に分配されているんです。これはすごく夢があるし、ディレクター冥利に尽きることだと思うので、後輩のことですが私も誇らしい気持ちになります。

TBSスパークル林沙織・取材の様子

スポーツ制作の仕事をやりたい就活生にアドバイスするなら?

 私は最初からテレビ業界を志望していたわけでないので、入社時に専門的な知識はなかったですが、それでも大丈夫です。ただ、他の仕事よりも辛いことやプレッシャーが多い部分があるので、自分のやりたいことが明確にあった方がいいと思います。例えば私は大学でラクロス部だったので、「ラクロスの中継がしたい」とか、「スポーツを通じて選手の魅力を伝えたい」とか、どんなことでもいいので目標があると頑張れると思います。

最後に、TBSグループを目指す学生へのメッセージをお願いします。

 今、テレビ業界は過渡期だと言われていますが、テレビの影響力や可能性はまだ他のコンテンツに負けてないと感じています。TBSグループには、挑戦する人を応援する雰囲気があるし、相談したら必ず誰かが手を貸してくれます。コンテンツ制作やコンテンツを生かした新たなビジネスなど、何かやってみたいことがある人は刺激的な日々を過ごせるはずです。そしてこの記事と出会った皆さんは、バレーボール女子日本代表がパリオリンピック出場権を獲得する過程をぜひテレビを通じて応援してください!

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TBSスパークル林沙織

林沙織
TBSスパークル スポーツ・ビジネス戦略本部 中継制作部所属
千葉大学教育学部卒業。2010年入社後は野球(WBCやドラフト)、バレーボール、フィギュアスケートの中継を主に担当。2012年頃からバレーボール女子日本代表チームの取材を開始。2021年から『SASUKE』のプロデューサーも務める。

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