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TBS『ラヴィット!』や『せっかくグルメ』はどう生まれた?番組担当者に聞く、バラエティ誕生秘話
TBSは、「日本でいちばん明るい朝番組」をうたう『ラヴィット!』や、グルメにフォーカスした『バナナマンのせっかくグルメ!!』、「脱出島」企画が人気の『アイ・アム・冒険少年』、著名人が持ち寄った「説」を独自の目線で検証していく『水曜日のダウンタウン』など、多種多様な人気バラエティ番組を放送しています。
これらのバラエティ番組は、どんな経緯で誕生したのでしょうか。各番組を手掛けるプロデューサー・総合演出がインタビューで明かした、番組や番組内の企画にまつわる誕生秘話をまとめて紹介します。
『せっかくグルメ』はバナナマン日村さんを起点に企画
2024年で放送10周年を迎える『バナナマンのせっかくグルメ!!』(毎週日曜よる7時)の総合演出を務める平野亮一さん。どんな経緯で企画したのでしょうか?
平野 この番組はバナナマン・日村勇紀さんを起点に考えました。2013年当時、僕は『もてもてナインティナイン』(※放送終了)のディレクターを担当していて、レギュラー出演していた日村さんと一緒に北海道へロケに行ったのですが、そこで日村さんと一般の方との絡みを見て衝撃を受けました。多くのタレントさんは場を回そうとしますが、日村さんは一般の方と一緒に楽しむことを大事にしていたんです。そのロケの空気感は面白いだけでなく、温かさもあって素晴らしいなと思いました。この日村さんの能力を活かせる番組を作りたいと思ったのが全ての始まりです。
ご自身が過去に担当した番組からもヒントがあったそうですね。
平野 僕は『さんまのスーパーからくりTV』(※放送終了)や『もてもてナインティナイン』のロケで地方に行くことが多く、ロケ先の方から「これ食べていきなさい」「これ持って行って」とよく地元のグルメをオススメしてもらうことがありました。この経験から、全国の多くの方が「地元のグルメに誇りを持っていて、よそからきたお客さんにオススメしたい!」という気持ちがあるはずだと考えたんです。なので、地元グルメをオススメしてもらうインタビューだと一般の方も前向きに参加できていいロケになりそうだなと。そんな「日村さんのロケ能力」と「地元グルメへの誇り」を掛け合わせて企画した番組です。
『水曜日のダウンタウン』編集中にタイトルがひらめいた人気の説とは
『水曜日のダウンタウン』(毎週水曜よる10時)の演出を務める藤井健太郎さん。番組で検証する「説」はどうやって企画しているのでしょうか。
藤井 最終的な決定はもちろん僕が行っていますが、会議で話しながらまとめていく感じが多いですかね。やっぱり誰かの気持ちがちゃんと乗ったものじゃないと面白くならない気はしています。
番組作りで大切にしていることは?
藤井 基本的なことですが、なるべく他で見たことがないものにはしようとは常に思っています。個人的な好みとして、これまでにもあったパターンのものをブラッシュアップして、クオリティーを上げていく作業より、カタチごと新しいものを作る方が楽しいので。
最終的にどういうカタチにするかが一番大事なので、編集は自分で行っていますが、スケジュール的なことも含めロケには基本立ち会っていないですね。その代わり、構成を詰める段階で「こう展開したら、こうしよう」などと、想定される事態への対応はある程度決めています。もちろん、その範囲に収まらないことも多々あるので、判断が必要なことがあれば、現場のディレクターから連絡をもらって指示をしたりもしますが。
「名探偵津田」(正式名称は「犯人を見つけるまでミステリードラマの世界から抜け出せないドッキリ、めちゃしんどい説」)はどうやって生まれたんですか?
藤井 探偵役を誰にしようか考えたときに、すぐにイライラしたり、派手に驚いたりするし、ほどよく可愛げもあってバランスがいいのがダイアンの津田さんだなと思って、もう津田さん一択でした。ちなみに「名探偵津田」ってワードは編集中に思いついたので、ロケの段階では出ていなかったりもします(笑)。
■「清春の新曲、歌詞を全て書き起せるまで脱出できない生活」を2週連続で放送した理由とは?
『ラヴィット!』がニュースを絶対扱わない理由
2021年3月に放送が始まったTBSの朝の帯番組『ラヴィット!』(毎週月曜~金曜、あさ8時)。辻有一プロデューサーに、番組を立ち上げた時の思いを聞きました。
辻 2020年当時は、コロナ禍の真っ只中。在宅勤務で人に会わない生活が続き、嫌なニュースが積み重なった時期で、どのチャンネルを回しても朝からコロナの暗いニュース一色でした。実は僕自身も、その年の夏に一番の親友を亡くすというとても悲しい出来事があり、何も手につかないくらい人生で一番思い悩んでいた頃でした。
そんなとき、「一緒にやろう」と声をかけてくれたのが、チーフプロデューサーの小林弘典。なかなか踏ん切りが付きませんでしたが、その親友が残した家族と交流を続けているうちに、「この家族は毎朝暗いニュースばかりのテレビを見るのはとても辛いんだろうな。きっと今は、大なり小なり日本中でそんな辛いことが起きていて、生きるのがしんどい人が多いのではないかな」と思いました。
でも、そういう人たちにとって必要で、身近な娯楽だったはずのテレビが、コロナによって一番見たくない遠い存在になってしまっている。だったら、辛い思いをした人たちが一瞬でもクスッと笑えて、その日を生きる活力になる、そんな番組ができるなら作ってみたいと思い、『ラヴィット!』の企画書を書き始めました。自己満足なのはわかっていますが、そんな思いで動き出した番組です。
だから最初に「ニュース」は絶対に扱わないと決めたし、テーマはずっと“日本でいちばん明るい朝番組”。こんな話は今までしたこともないので出演者の方を含め、皆さん知らないと思いますが、実はこんな経緯で『ラヴィット!』はできました。紆余曲折を経て今の番組の形がありますが、初心だけは一度も忘れたことはありません。
■テーマソングをサンボマスターの『輝きだして走ってく』に決めた理由とは?
特番は15回、意外と長い『冒険少年』レギュラー化への道のり
『アイ・アム・冒険少年』を手掛けるのは、上田淳也プロデューサー。レギュラー化まで時間がかかったそうですね。
上田 『冒険少年』は2014年に深夜番組として始まりましたが、1年くらいで終わってしまったんです。それで、当時の制作部長の合田隆信さんが「おまえが演出で復活させてみろよ」と言ってくれて、何度か特番を放送しました。しかし、レギュラー化目前で失敗。その後も何度か特番を続けていましたが、編成に異動に…その後、バラエティに戻り、ディレクターの白井秀知さんと一緒にやるようになったらレギュラー化が決まりました。
MCの岡村隆史さんともよく笑い話になっていますが、ゴールデンタイムに特番を15回試しているんですよ。おそらくレギュラー化までにかかった特番放送回数は歴代一位です。ここまで長かったですね。15回も挑戦できたのはラッキーですけど。
番組には子どもの学びに繋がる内容が盛り込まれています。どんなことを意識して作っていますか?
上田 ゴールデンのレギュラーが始まった当初は、当時小学2年生だった息子を寝かさない番組を目指していました。小学校低学年の子どもだと、よる7時からの2時間SPがあると8時過ぎた頃には「明日学校だからもう寝なさい」と言われてしまいますよね。それでも子どもたちに見てもらうために、母親を味方にしようと心がけました。だから下ネタや暴力は絶対になくし、ストレートに子どもが笑えて、「この番組だったら教養がつくね」と思ってもらえる番組をチーム全体で目指しています。