• People

世界36カ国を訪問!TBSスパークル江夏治樹に聞く『世界遺産』の裏側

TBSで1996年から放送しているドキュメンタリー番組『世界遺産』。世界各地の世界文化遺産・自然遺産を、圧倒的な映像美でお届けしています。番組のプロデューサーとディレクターを担当する、TBSスパークルの江夏治樹に、撮影の裏側について聞きました。

こだわりは圧倒的な映像美

ロスグラシアレス国立公園(アルゼンチン)
ロスグラシアレス国立公園(アルゼンチン)

『世界遺産』はどんな流れで作られているのでしょうか?

江夏 まずは、プロデューサーが撮影候補を選び、下調べして番組になるか判断します。撮影する世界遺産が決まると、さまざまな文献を読んだり、専門家に話を聞いたりしてディレクターが番組の構成や演出を考えます。

実際にロケをして帰国すると、撮影した映像をすべて見ながら、映像をつないでいく編集作業。その後、ナレーションの下原稿を書いて、ナレーションを収録し、音響効果スタッフに効果音を入れてもらい、30分の「番組」として仕上げていきます。

海外ロケで意識していることは何でしょうか?

江夏 海外ロケは、日程や行程を決めておいても思い通りにいかないものです。天候にも左右されます。でも「これだけは撮りたい」というものは譲りません。それでも、数日粘っても撮れない時もある。駄目なものは割り切って別プランを考えるなど、その場に応じた臨機応変さも求められます。ドキュメンタリーは、撮れたものがすべてです。こだわりと臨機応変さをどう使い分けるのか、ディレクターの腕の見せどころです。

最も過酷で心に残った“南米の富士”登頂

これまでで印象に残った取材は?

江夏 放送1000回記念スペシャルで、南米エクアドルの「サンガイ国立公園」を取り上げました。標高5,260mのサンガイ山は、その雄大な姿から“南米の富士山”と呼ばれる一方で、今も噴火を繰り返す危険な活火山のため、登山者はほとんどいません。そこへ日本のテレビクルーとして、初登頂に挑んだのです。

サンガイ山(標高5260m)
サンガイ山(標高5260m)

撮影隊は総勢24名。さらに23頭のラバを使い、総重量1トン超の機材や食料などを運搬します。降り積もった火山灰で田んぼのようにぬかるんだ悪路を1日9時間歩き、丸3日かけて標高3600mのベースキャンプへ辿り着きました。

山頂アタックベースキャンプまでの荷揚げのラバ
山頂アタックベースキャンプまでの荷揚げのラバ

衛星電話で山頂の天気予報を確認しながら待機すること5日。そうして夜10時、ようやくアタックを開始しました。道中、朝陽に照らされた壮大なアンデス山脈の山並みと雲海を目にした時は「この仕事をやっていて良かった!」と思えるほど感動したのを覚えています。

山頂に着いたとき、どんな気持ちでしたか?

江夏 山頂に着いたのは、ベースキャンプ出発から14時間が経った頃。残念ながら天気予報が外れ、山頂は雲に覆われてしまいましたが、活火山の証である噴気が上がる様子や、氷に覆われた山頂の姿を映像に収めることができました。

往復12日間、テント生活を送ったこのロケがこれまでの『世界遺産』で最も過酷で最も心に残るものでした。誰も見たことがない、驚くような映像が撮りたいという思いが、日本のテレビ初登頂を成功させたのだと思います。

やる気と行動力があれば、好きなものが作れる

TBSスパークル江夏治樹

江夏さんは、どんな学生でしたか?

江夏 大学は建築専攻でした。テレビはあまり見ていなくて、一人暮らしの部屋にテレビがない時期もあったくらい。転機になったのは、大学を一年休学して行った、バックパックの旅。船で中国に渡り、アジア、中近東、エジプトまで陸路で移動しました。旅で得た体験、出会った人や風景に大きな感銘を受け、「もっと世界を見てみたい」と思うようになりました。

この仕事を志望したのはなぜですか?

江夏 海外取材に強いテレビ番組の制作会社なら、仕事で海外に行けるかもしれないし、自分にぴったりな仕事だと思いました。大学は建築専攻だったので、建築デザインや設計の会社も受けましたが、『世界遺産』の制作会社ということでTBSビジョン(現・TBSスパークル)を受験。面接時には、バックパックの旅などで撮影した写真を持ち込みました。最初に内定をいただいたので「縁だな」と思って入社を決めました。

TBSスパークルの強みは何だと思いますか?

江夏 巨大プロダクションだからこそ、「大きな仕事」に挑戦できると思います。さまざまなジャンルのプロフェッショナルが集まっているので、自分が詳しくない分野に関して相談できる人がいます。「やる気」と「行動力」があれば好きなものが作れる。それがTBSスパークルの強みだと思います。

就活生へメッセージをお願いします。

江夏 この仕事で一番大切なのは好奇心。大自然にせよ、人の営みにせよ、知らない世界を目の前にすると、おのずと自分の感動を誰かに伝えたくなるものです。まずは自分が「見たい!」「知りたい!」と思うこと。そして「伝えたい!」という想いを持つこと。その先にテレビ番組ができあがります。

TBSスパークル江夏治樹

江夏治樹
2004年TBSビジョン(現・TBSスパークル)入社。2010年からTBS『世界遺産』のディレクターを担当、現在はプロデューサーも兼務している。ほかにもBSテレ東『写真家たちの日本紀行』、テレビ朝日特番『地球の目撃者 南米チリ』、朝日放送『大改造!劇的ビフォーアフター』BSフジ特番『滝川クリステルのアースウォーカー~小笠原諸島編』BSフジ特番『進化の島ガラパゴス 世紀の大発見!幻のピンクイグアナ』などのディレクターを担当。

■関連記事

ドキュメンタリー初挑戦でオートレーサー森且行に密着、TBSスパークル穂坂友紀が挑戦を続ける理由

きっかけはゴーギャンの「私記」…TBSスパークル匂坂緑里が通信簿の少女を追った6年間

「白鳥の湖」の歴史を紐解き、当時の舞台を再現…TBSスパークル宮武由衣の挑戦

本サイトは画面を縦向きにしてお楽しみください。