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ドキュメンタリー初挑戦でオートレーサー森且行に密着、TBSスパークル穂坂友紀が挑戦を続ける理由

3月17日から開催中の「TBSドキュメンタリー映画祭 2023」では、『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』を含む全15作品が公開されています。

同作は、TBSスパークル穂坂友紀の初監督作品です。2021年1月にレース中の落車事故で大怪我を負ったオートレーサー森且行に密着した様子が描かれています。作品にどんな思いが込められているのでしょうか。

出会いは『あさチャン!』の企画、森さんの生き様に惚れて密着を決意

『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』を制作した経緯を教えてください。

穂坂 森さんとの出会いは2021年8月。私が総合演出をしていた情報番組『あさチャン!』で、事故後初のインタビューを依頼したことがきっかけでした。最初は何度も断られましたが、直筆で手紙を書いたところ取材を受けますと電話をいただきました。両足に麻痺が残り、歩けるようになるだけでも奇跡と言われている森さんが、まだ杖でしか歩けないその体で、必ずオートレーサーに復帰するとキラキラした目で言うその強さに瞬時に惚れました。復帰の奇跡を起こすその瞬間まで追いかけたいと、出会ったその日に思いました。

当時はオートレースもSMAP時代の森さんもよく知らなかったし、番組の企画の一つとして始めたので、映画にするなんて考えていませんでした。ドキュメンタリー映画の監督は43歳にして初挑戦です。

初めてのドキュメンタリー制作はいかがでしたか?

穂坂 はじめは、日常生活をどんどん取り戻していく森さんの姿を見ているのが楽しかったですね。でも、両足麻痺の現実を突きつけられ「復帰戦が引退戦になるかもしれない」と言われてどこまで真実を伝えるかをすごく悩みました。

撮影中に心掛けていたことは何ですか?

穂坂 森さんを好きになりすぎないように、惚れすぎないように、ファンの1人にならないように、適度な距離感を保つようにしていました。復帰を誓ったものの、理想と現実にはものすごく差があり、一時は引退を考えるほど、森さんはとても苦しんでいました。

ファンになってしまうと、壁にぶちあたる彼にカメラを向けられなくなってしまう、聞きたいことも聞けなくなってしまう。でもリアルを伝えるためには辛いシーンもしっかり撮影し、試練を乗り越えていく過程を描かなきゃいけない。だからディレクターである夫を取材チームに入れて、森さんを好きになりすぎないようにしていました(笑)。

2年にわたる密着取材の様子は『情熱大陸』でも放送されました。森さんの反応はいかがでしたか?

穂坂 『情熱大陸』は森さんの49歳の誕生日である2月19日に放送されたので、「最高の誕生日プレゼントをありがとう」と言ってくれました。

映画も喜んでくれましたが、彼は映画公開までに復帰して、それをラストシーンにしたかったのかもしれません。でも私は「ここまで頑張ってきたから、自分のペースで復帰すればいいんだよ」とエールを送りたかったので、復帰前に公開できてよかったと思います。作品を観てくれた人が復帰戦を応援しに行ってくれたらいいですね。

随所に見えるSMAPとしての誇り

作中、森さんの体にボルトがたくさん入っているシーンがありますね。

穂坂 ボルトは今も骨盤には残っているので、また落車したら次こそ本当に歩けなくなる、死んでしまうかもしれないという覚悟で走っています。だから復帰してほしいけど、無理しないでほしいとも思う複雑な気持ちです。

SMAPのメンバーとは今でも連絡を取っているんですか?

穂坂 そう聞いています。復帰を目指す原動力は5人の存在が大きい。5人が芸能界の第一線で頑張っている限り、自分も第一線で活躍していたいという思いが強い。

SMAP脱退時に「お互い日本一になろう」と約束したから、24年かかったけれど日本一になるまで諦めなかった。今回の事故からの復帰もそう。「おまえなら乗り越えられる」とメンバーに言われたからこそ、諦めなかった。諦めるわけにはいかなかったのだと思います。

森さんの脱退は1996年なので、30年近く経っています。そこまで思いが続いているのは驚きです。

穂坂 SMAPメンバーへの思いを話す時の森さんの穏やかな顔・目を見ると、彼の中で5人の存在がいかに大切なのかが伝わってきます。離れていた時間は関係ない、6人にしか分からない心のつながりがあるのだと思います。復帰戦は5人にもぜひ見てほしいですね。

森さんは4月6日に復帰されると発表がありました。

穂坂 復帰戦やその後を追った映画の続編を作りたい。自腹で70万円のカメラを買って撮影しているので、彼が挑戦し続ける限りカメラを回していこうと思っています。

いくつになっても挑戦を続けられるのは、森さんのおかげ

穂坂さんは何を目指してテレビ業界へ入り、これまでどんなキャリアを歩んできましたか?

穂坂 学生時代は報道記者を志望していましたが、願い叶わず…情報番組を長年経験する中で、10年位前から自分で番組をつくりたいと総合演出を目指すようになりました。そのためには大きな会社に入らないとチャンスが巡ってこないとわかったので、スパークルの前身企業に中途入社しました。『あさチャン!』は立ち上げから携わり、チャンスが巡ってきて総合演出になれました。

仕事でどんな時に楽しいと感じますか?

穂坂 後輩たちの成長を見るのがすごく楽しいです。正直、以前は自分さえ良ければいいと思っていましたが、『あさチャン!』の仕事を機に、自分に人望がなかったり、自分が人を大切にしなかったりすると、人が全くついてこないと気付きました。自分が理想とする番組を作るためにも、今は自分の右腕を育てることに注力しています。

TBSをはじめ、テレビ業界を志望する若者にアドバイスをお願いします。

穂坂 最初は「なんとなくテレビに興味がある」という理由でもいい。でも新しいことに挑戦する気持ちは忘れないでほしいです。報道、情報、ドラマ、バラエティ…いろいろな分野に携われるチャンスがテレビにはある。私もなれると思っていなかった総合演出になれたし、43歳にしてドキュメンタリーに初挑戦できましたしね。

40歳を過ぎると「新たに人間関係をつくるのも面倒だし…」と思いがちですが、4月から新たな部署でゼロから挑戦したいと希望を出しました。学生時代から夢だった初の報道局です。現状に満足せず新たなことにチャレンジしよう、そう思えたのは森さんのおかげです。


【TBSドキュメンタリー映画祭】
https://www.tbs.co.jp/TBSDOCS_eigasai/

第3回を迎える映画祭、今年は東京、大阪、名古屋、札幌で順次開催。

穂坂友紀
2003年業界入り、2018年TBSビジョン(現TBSスパークル)入社。「みのもんたの朝ズバッ!」「あさチャン!」など情報番組の他、「報道の日2021」などを担当。

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