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国民的お菓子が世界を救う大冒険『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』!松田元太は、らいおんくん役でアイドルの本領発揮⁉ 映画の企画・プロデューサーに聞く制作秘話

2025年5月1日(木)、映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』の全国上映がスタートします。本作は、1978年の発売開始より長らく愛され続けるギンビス社の動物型ビスケット「たべっ子どうぶつ」をもとに作られた、フル3DCGアニメーションです。

オリジナルストーリーで、スーパーアイドルとして大人気の「たべっ子どうぶつ」が、お菓子と人間が仲良く暮らす「スイーツランド」で世界を救うために繰り広げる大冒険を描きます。らいおんくん役の松田元太(Travis Japan)、ぞうくん役の水上恒司、ぺがさすちゃん役の髙石あかりら若手俳優陣をはじめ、豪華声優が大集結していることでも話題です。

本作の企画・プロデュースを務めたのは、TBSテレビの須藤孝太郎。企画から制作までの裏話に加え、自身のキャリアについて話を聞きました。

脚本作りに3年!5年がかりで完成した笑いあり感動ありの超大作

映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』キービジュアル

はじめに企画の経緯を教えてください。

須藤 企画を立ち上げたのは2020年2月ごろ、「たべっ子どうぶつ」のキャラクターステッカーが貼られたギンビスさんの社用車を街中でたまたま見かけたのがきっかけです。 当時、キャラクターIPビジネスに興味があって、キャラクターメインの作品を作りたいと考えていたところでしたので、「たべっ子どうぶつ」のキャラクターの多さと認知度の高さに可能性を感じました。

また、僕は深夜アニメを担当することが多かったので、家族向けのコンテンツを作りたかったのと、大好きな映画『トイ・ストーリー』シリーズ(1996年日本公開の1作目より2025年時点で全4作)のような「大人も子どもも楽しめる普遍的な作品を日本でも作りたい」という思いもありました。そこで、はじめからテレビアニメではなく映画を作ろうと決めていました。

どのように制作が進んでいったのでしょうか。

須藤 まず、ギンビスさんのホームページに掲載されていたカスタマーセンターに「アニメの映画を作りたいです」とご連絡しました。実は、その際に自分で作ったプロットを持って伺ったんです。内容は、「たべっ子どうぶつ」のキャラクターたちが自分をお菓子だと認識している世界で、僕が考えたオリジナルキャラクターのおおかみくんだけは、自分を動物だと思っている。『トイ・ストーリー』でバズ・ライトイヤーが自分はおもちゃではないと思っていたように、皆と違う価値観を持っている…そこから展開していくストーリーです。結果的に内容は変わりましたが、ギンビスさんにご快諾いただき、監督や脚本家、制作会社などスタッフに声を掛けて、本格的に動き始めました。

脚本制作はいかがでしたか?

須藤 脚本制作は約3年かかりました。お菓子の「たべっ子どうぶつ」にはキャラクターは存在しますが、ストーリーや性別などの設定が特になかったので、映画ならではの設定を考える必要があったからです。

俳優としても活躍されている、脚本家の池田テツヒロさん(俳優名義は池田鉄洋)を中心に皆で意見を出し合い、作ったプロットは30本ほど。実は、ロンドンで少年と「たべっ子どうぶつ」たちが、いろいろなトラブルに巻き込まれながらも、最終的にはハッピーエンドを迎えるという内容の決定稿が一度は完成しましたが、ストーリーがさらさらと進んでいくことに物足りなさを感じて、最初から作り直したんです。それもあって、当初は2023年公開を目指していたところから、2025年5月になりました。

ギンビスさんからいただいた「お菓子に夢を与えられるような映画を作ってください」という言葉も大切に作っていきました。

ゼロからオリジナル作品を作るのは初めてでとても苦労しましたが、池田さんがご自身のアイデアを加えながら、皆の意見も全部取り入れつつ、まとめてくれて感謝しています。

映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』シーン画像

どんなことを伝えたいと考え、ストーリーを作ったのでしょうか。

須藤 今回は、画面の外で見てくださる方を意識しながら作りました。僕は映画館の上映終了後のザワザワした雰囲気が好きで、周囲の人がどんな会話をしているか、よく観察しています。映画を見た後で、「昔はこんなお菓子が好きだったな」「たべっ子どうぶつ、食べていたな」というように懐かしく話をする機会を持っていただけたら、すてきなことだと思います。

本作には、「たべっ子どうぶつ」以外のお菓子のキャラクターも登場するそうですね。

須藤 映画を見てのお楽しみですが、他のお菓子のキャラクターも登場します。ギンビスさんの競合である、他社のお菓子のキャラクターを登場させるのはハードルが高いのではないかと思いましたが、「お菓子業界全体を盛り上げたい」というギンビスさんの思いによって実現しました。

『トイ・ストーリー3』(2010年)に『となりのトトロ』(1988年)のトトロ、『シュガー・ラッシュ』(2012年)、『シュガー・ラッシュ:オンライン』(2018年)に日本のゲームキャラクターが登場するシーンがありますが、知っているキャラクターが出ていることが面白さにつながるので、メーカーの垣根を越えた取り組みに挑戦しました。

キャラクター作りでは、何を意識しましたか?

須藤 全員が「完璧ではない」ことを意識しました。例えば、らいおんくんは喜怒哀楽がはっきりしていて愛嬌もある「たべっ子どうぶつ」のリーダー的存在。ですが、ストーリーの序盤では調子に乗っているように見えたり、どこか頼りないところもあります。それぞれの良い部分、良くない部分をきちんと入れつつ、お互いを受け入れながら皆で協力することで強い力を発揮する様子を描きました。

映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』シーン画像

また、今回はオリジナルキャラクターとして、ぺがさすちゃんが登場します。当初からオリジナルキャラクターを出したいと希望していて、当初はネッシーのようなUMA(未確認生物)が面白いのではないかという話が出ました。ただ「たべっ子どうぶつ」たちは、「スーパーアイドル」という設定があったので、他のキャラクターたちにないものを持った、優雅な歌姫のようなキャラクターにするために、神話の架空の生き物であるペガサスに決まりました。

モフモフでかわいい「たべっ子どうぶつ」をはじめ、3DCGアニメーションにはどんなこだわりが?

須藤 「最高の物語を世界中の子どもたちへ」という企業理念にひかれ、マーザ・アニメーションプラネットさんにお願いしました。3DCGを突き詰めて実写に近くなりすぎると、「たべっ子どうぶつ」のかわいらしさが削がれてしまいます。3Dと2Dの良いところを取り入れながら「触りたくなるモフモフとした柔らかさ」を意識して、徹底的にこだわって作り込んでくださいました。

イラストを3Dキャラクターに開発するところから始め、360度全方位から見た姿やいろいろな表情のパターンを用意していただき、それをキャラクターの数だけ作る必要があったので、大変だったと思います。

また、女の子のペロ、マッカロン教授、おかし海賊のメンバーといった人間のキャラクターは、映画オリジナルキャラクターです。モデルがいないので、社内のクリエイターの皆さんでオーディションを開いて決めてくださったそうです。

TBSテレビ須藤孝太郎

一人で見に行くか迷っている人こそ、ぜひ映画館へ

キャスティングはどのように決めましたか?

須藤 ペロ役以外はオーディションをせず、直接オファーさせていただきました。それぞれのイメージに合う方を選ばせていただき、制作陣で全会一致でした。メインキャラクターである、らいおんくん役の松田元太さん、ぞうくん役の水上恒司さん、ぺがさすちゃん役の髙石あかりさんは、作品を今後も長く続けたいという思いから、20代中盤の若手俳優さんにお願いしました。

アフレコはいかがでしたか?

須藤 アフレコは揃って行った方もいらっしゃいますが、松田さん、水上さん、髙石さんは、一人ずつ挑まれました。

現場では通常、録音ブースとスタッフブースでマイクを使ってやりとりしますが、松田さんは気さくな方で、お互い部屋を行き来してお話することが多く、とても密にコミュニケーションを取ることができました。ご本人は「難しいな」とおっしゃっていましたが、こちらから細かいお願いをする必要がなく、普段の松田さんのまま演じていただきました。

冒頭で「みんなー、準備はいい?」とたくさんの観客に呼びかけるセリフがありますが、とても自然で、「さすがスーパーアイドルだ!」と感心しました。実は、「見捨てないで」というセリフのニュアンスは松田さんのアドリブで演じていただきました。少し甘えるような愛嬌があって、僕たちの想像を超えた素晴らしいセリフ回しで驚きました。

水上さんは今回がボイスキャスト初挑戦でしたが、台本をかなり読み込んで役作りしてくださったのが印象的でした。ぞうくんは体が大きいので、最初は少し太めの声を作ってきていただいたのですが、もう少し落ち着いたイケメンボイスを、とお願いしたところ、瞬時に切り替えて演じてくださいました。引き出しをたくさん持っている方だなと思いましたね。

髙石さんのぺがさすちゃんは本作でもオリジナルキャラクターで重要な役どころでした。抜群の歌声と凛とした雰囲気、そして周りを勇気づける、まさにぺがさすちゃんにピッタリのお芝居を演じていただき、アフレコ現場ではスタッフ一同、非常に湧いておりました。

キングゴットン役の大塚芳忠さん、マッカロン教授役の大塚明夫さん、わにくん役の立木文彦さんやゴッチャン役の関智一さんと、豪華な声優の皆さんに出演していただきましたが、役作りについてこちらからお願いしたことはほとんどありません。何を求められているのか理解された上でアフレコに臨んでいただいたので、テストが始まった瞬間から本番と変わらない見事なお芝居をしてくださいました。

映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』シーン画像

制作中は、ギンビスさんとのやり取りもあったのでしょうか。

須藤 もちろんです。代表取締役社長の宮本周治さんは、非常にパワフルで新しい挑戦に積極的な方です。本作のプロジェクトには全て目を通していただきました。ネガティブな意見を頂戴することはなく、むしろ「たべっ子どうぶつが、どんどん前に出てくる感じがほしいです」と前向きなご意見をいただきました。

完成した映画をギンビスの方々に見ていただきましたが、「本当に素晴らしかった」と喜んでもらえて嬉しかったですね。

作品の今後の展望は?

須藤 キャラクターコンテンツは長く続けていく必要があると思うので、今回の映画だけで終わりにするつもりはありません。新作を作り続けることで世にコンテンツが残っていくので、映画の続編を作ったり、テレビアニメとして作ったり、いろいろな展開を考えていきたいです。

ちなみに、「たべっ子水族館」もアニメ化してほしいというお声をいただいています。CGで水を作るのは大変で時間がかかってしまいそうですが、ゆくゆくは「たべっ子水族館」のアニメを作り、「たべっ子どうぶつ」のキャラクターも集合した作品があってもいいかなと。ストーリーを自由に作れるのは、オリジナル作品の強みですね。

映画を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

須藤 家族や友人同士で見ていただくのはもちろんですが、一人で行くか迷っている方がいらしたら、ぜひ足を運んでいただきたいです。『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』というタイトルですが、お菓子がテーマの作品なので、見終えた後に子どもの頃の思い出がよみがえったり、家族やまわりの人たちとの絆を思ったり、きっと感じるものがあるはずです。年齢や性別関わらず、たくさんの方にご覧いただきたいですね。

TBSテレビ須藤孝太郎

TBSアニメを代表するキャラクターコンテンツを目指して

ところで、須藤さんはどんな経緯でTBSに入社されましたか?

須藤 僕は新卒でキングレコードに入社しました。約15年働いた中でアニメの仕事を10年以上担当しましたが、音楽の仕事がしたくて入社したので、実はそれまでアニメとは無縁でした。ですが次第に自分のしたいことが少しずつできるようになり、アニメの制作のなかで、劇伴やBGM、主題歌のプロデュースなど、音楽まわりの仕事も幅広く手掛けていました。実は『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』でも音楽プロデューサーを務めています。

前職では主に深夜アニメを担当していたことと、新卒からずっと同じ会社にいたこともあり、環境を変えて自分がどれくらい通用するのか試してみたいと考え、2022年にTBSに入社しました。TBSはアニメに力を入れるようになったのがテレビ局の中でも最後発です。その分、「皆でTBSアニメを盛り上げていこう」という共通の思いがあります。その雰囲気がとてもいいなと思いますし、皆がきちんと話を聞いてくれるので、仕事をする上でとても良い環境です。

ちなみに、『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』は前職で企画を立ち上げましたが、TBSに入ってから企画を立て直しています。知名度が高いお菓子とはいえ、電波を使って宣伝した方が効果的ですし、映画とテレビ局の相性はとても良いと考えていたので、今の形になりました。

須藤さんは、キングレコード時代の2018年にテレビアニメ『ポプテピピック』を手掛けて話題になりました。今回の「たべっ子どうぶつ」も含め、キャラクターをアニメに変換する際、どのように考えていますか?

須藤 僕自身は意図していませんが、「これをどうやって映像化するの?」と言われるような案件を手掛けることが多いです。ただ、そんな風に言われることは実は嬉しくて、「誰もしないようなことをひっそり手掛けて、世に広がったら嬉しい」という考えで仕事をしています。

そう思うようになったのは、キングレコード時代、20代のときにアシスタントとしてついていたプロデューサーの方の影響が大きいです。「誰もしていないことにあえて目を向けて、検証しながら自分のオリジナリティーで広げていけば、それがきちんと一本の王道になる」と言われ、実際に行動に移すところを近くで見てきました。いわゆる「隙間産業」の考え方ですね。『ポプテピピック』と『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』は作品の方向性は対極ですが、考え方は全く同じです。

TBSテレビ須藤孝太郎

プロデューサーとして大事にしていることは何ですか?

須藤 クリエイターの皆さんのアイデアを押さえつけないことです。もし僕がアニメーターだったら自由にやらせてほしい、と考えるので、クリエイターの皆さんにはNGなしで自由に作っていただく。何かあったらプロデューサーが謝ればいい。その信頼関係が制作で一番大事だと考えていて、これは前職からずっと変わっていません。

普段はどのように制作のヒントを得ているのでしょうか。

須藤 僕は何か一つに詳しいのではなく、「広く浅く」のタイプです。Wikipediaを見るのが趣味で、気になることを見つけたらすぐに調べるようにしています(笑)。

あとは、ネットミームなどネットでトレンドになっているものを見逃さないようにしています。最近はLINE絵文字の「えもじの子(仮)」をよく見かけるので、何かできたら面白そうだなと考えているところです。

ご自身の今後の展望は?

須藤 他局の『ドラえもん』や『名探偵コナン』のように、TBSを代表するアニメ作品を作りたいと思っていました。『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』がヒットして、長く続けられるキャラクターIPコンテンツに成長できるよう、育てていきたいですね。

また、TBSにはワクティ(TBSグループキャラクター)やラッピー(『ラヴィット!』の番組オリジナルキャラクター)といったキャラクターがいるので、集めてアニメーションを作ったり、TBS実写原作をアニメに落とし込んでみたり、TBSならではのコンテンツも考えてみたいです。

最後に、須藤さんのようなアニメプロデューサーを目指す就活生に向けて、メッセージをお願いします。

須藤 学生時代はバイトや勉強、海外留学など、何でもいいからしたいことに取り組むこと。それが自分の考え方や生き方にどのように影響し、社会人になったら何をしたいのか、考えられたらいいと思います。

僕は大学入学時にはレコード会社で働きたいと考えていませんでしたが、学生時代に音楽活動をしていたことが、後につながりました。「何がどこでどうつながるか、やってみないとわからないんだな」と実感したので、いろいろなことにチャレンジしてみるのがおすすめです。

プロデューサーは不思議な仕事で、極論を言えばコミュニケーションが取れれば誰でもできると思っています。作品は一人では絶対に作れません。アニメーターさんや声優さん、監督など現場のスタッフの方々は、それぞれ専門的な技術を持っていて尊敬しています。そんな方たちの能力を最大限に発揮することが、プロデューサーには求められます。ですから、「アニメを作りたい」という熱意も必要ですが、それをひけらかさず謙虚でいること。アニメプロデューサーを目指すなら、誠実さを忘れないでほしいと思います。

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TBSテレビ須藤孝太郎

須藤孝太郎
1985年生まれ、北海道札幌市出身。
2008年キングレコード入社。音楽・アニメ部門であるスターチャイルドレコードに2010年から配属。アーティストやアニメ作品の宣伝・販促を担当し、2013年からプロデューサーとなる。2022年にTBSテレビに転職。アニメ映画イベント事業局 アニメ事業部。

『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』©ギンビス ©劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会

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