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池袋&赤坂に高さ2mの巨大トイレが出現!TBSアニメ『地縛少年花子くん2』大盛況の体験型イベント秘話を宣伝担当者に聞く

TBSは、2025年1月からTVアニメ『地縛少年花子くん2』を放送中です。放送に先駆け、1月に池袋駅にて巨大トイレが目を引く来場者体験型イベントなどを実施。さらに池袋駅の展示物を使用し、「TBS赤坂BLITZスタジオ ホワイエ」でも、「花子くんギャラリー」を開催中です。〈※2025年3月9日(日)まで、入場無料〉
このイベントのプランニングを担当したのは、TBSテレビ プロモーション部の遠西高幸。企画の発端から準備、施策の振り返りまで、裏話を聞きました。
作中のトイレを巨大化させた、リアル×デジタル施策を企画

まずは、遠西さんが所属するプロモーション部の仕事内容と、ご自身が担当する業務について教えてください。
遠西 プロモーション部は、主に番組の宣伝を担当する部署です。個別の番組を担当する「宣伝プロデューサー」が属する「総合プロモーショングループ」をはじめ、「OA・配信グループ」や「WEB編集・リリースグループ」など多方面にわたるプロモーション領域をカバーしております。
私は「デジタルプロモーションチーム」という立場で、宣伝プロデューサーが宣伝する上で、「効率的かつ効果的なデジタル施策のプランニングや振り返りのサポート」をしています。
デジタル施策の結果を検証し、事例としてためていき、他の対象でも応用できることを意識しており、個別最適というよりも、全体最適になるよう進めています。いろいろな番組にデジタルプロモーションの観点で関わらせていただいていますね。
もう一つの大きな業務が、アニメの宣伝担当としての役割です。「情報番組に出すVTRなどの撮影対応」もあれば、今回のように「放送開始に向けた大々的な企画のプランニングから実行、当日の立会い、振り返りまでを一貫して手掛ける」場合もあります。
『地縛少年花子くん2』に向けた施策の概要を教えてください。
遠西 ご存じの通り、アニメは「製作委員会」制度でさまざまな会社が出資して作られています。委員会内に宣伝を担う会社も参加していて、ベースとなる宣伝業務を担当しています。
しかし1クールに50以上のアニメ作品が放送される中で、TBSが注力するアニメの一つである『地縛少年花子くん2』が埋もれないように、追加でPR施策を検討しようということになりました。
そこで「初回放送前に、話題化や認知を最大化すること」を目的に、「SNSやメディアを通して世の中に『地縛少年花子くん2』のニュースを生み出す企画」を自身で考え、提案しました。
それが2025年1月12日(日)の『地縛少年花子くん2』初回放送前に、池袋で行ったPR施策です。1月3日(金)~9日(木)にアニメイト池袋本店で先行となる展示をスタート。その後、1月6日(月)~12日(日)で、池袋駅構内のイベントスペースに全高約2mの巨大トイレを設置。来場者が花子くんの助手となってトイレをモップで掃除する、という体験型イベントを企画しました。
トイレ掃除をしてくれた方には、描き下ろしオリジナルイラストを使用した花子くんの“助手認定証ステッカー”をプレゼント。さらに、そのステッカーの写真を撮影し、「#花子くんの助手募集中」をつけてSNSに投稿すると、抽選で1名に花子くん・つかさ役の緒方恵美さんと八尋寧々役の鬼頭明里さんのサイン入りステッカーをプレゼントするキャンペーンも実施しました。
それに加え、池袋駅地下のサイネージにも映像を流し、トイレとあわせて「池袋駅のジャック」感を出しました。



イベントは想定以上の大盛況!原作者や声優陣からの反響も
この企画はどのように練っていったのでしょうか。
遠西 まずは「目的」を設定して「ターゲット」を決める、という前段を整理してから、「コアアイデア」を作り、それを起点に立体的な「コミュニケーションプラン」を細部まで考えていく流れで進めました。
書籍の購買分布やSNSフォロワーの属性を分析した結果、メインターゲットは作品のコアファンに設定しましたが、ファンの熱量を高めるだけではなく、アニメ好きの若年層も振り向かせるための企画を作ろうというところから始まりました。
ストーリーは、花子くんがいる「かもめ学園旧校舎3階にある女子トイレの3番目」が怪異のいたずらによって、巨大化して池袋駅構内に出現したというもの。作品中で、ヒロイン・寧々ちゃんが花子くんの助手としてトイレ掃除などを行いますが、寧々ちゃんだけでは助手が足りないので「助手を募集します」という名目で、来場者にトイレ掃除をしてもらうというのがコアのアイデアです。トイレは花子くんと寧々ちゃんが出会う、シンボル的なモチーフなので、それを掃除してもらったら面白いんじゃないかなと思いました。
それに、日本ではトイレ掃除が開運につながるという考え方もありますよね。キャンペーン期間が1月だったので、「新年のトイレ掃除で開運アップも期待できるかも!」というメッセージも密かに込めています。
ちなみに、池袋駅を選んだ理由はアニメの聖地でありながらも、乗降率が高いことと、今回のターゲットの利用率が高いというデータを参考にして選びました。事前に、ほかのさまざまな駅を回って検討した結果、池袋が最適な場所であると確信しました。
この企画に向けていつ頃から動いていたのでしょうか。
遠西 2024年7~8月頃からで、実は企画から半年ぐらいかけています。イベントフローを考えることにも時間がかかりましたが、デザインを担当するTBSのデザインセンター、片山悠樹プロデューサーをはじめとしたアニメ事業部、プロモーション部の三者で毎週定例で打ち合わせを行い、委員会の会議でもどんな空間を作っていくかという議論もじっくり行いました。ファンの方が喜んでくれて、たまたま通りかかった方たちも目をとめてくれるような場所を目指しました。
ちなみに、このトイレはデザインセンターが3Dプリンターで作ってくれたものです。完成したときは、想像以上に大きくて驚きました(笑)。
単純に物を作るだけではなく、どうやってSNSで広げるか…「作って広げる」ことを緻密に考えるのは時間がかかったと思います。
イベントの反響はいかがでしたか?
遠西 正直、想定以上の反響がありました。作品ファンに加え、家族連れや友人同士の方、さらには偶然近くを通りかかった方々も面白がって参加してくれて、どの時間帯も来場者がいる状態でした。結果としては、当初の目標体験者数128%と多くの方に体験いただきました。
また、今回はそれを起点にどうやってデジタルで拡散してリーチを拡大するのかというのが目的でしたが、直近の『地縛少年花子くん2』の情報出しと比較しても、かなり多くのメディアに取り上げていただくことができました。プロモーション部として、媒体の記者さんに企画を伝えて取材してもらったり、リリースを送ってから個別でアプローチしたりと地道な働きかけを行ったことも実を結んだと思います。
また、今回のキャンペーンハッシュタグである「#花子くんの助手募集中」や「花子くん&池袋」といった関連ワードの合計投稿数は同時期に放送された他アニメの事前プロモーション施策と比べても圧倒的に多い結果となり、たくさんのユーザーの方にSNS上で話題にしていただきました。
ほかにも、原作のあいだいろ先生が、Xにイベントのイラストを投稿してくれたり、声優の緒方さん、鬼頭さん、アニメのスペシャルサポーターの宮田俊哉さん(Kis-My-Ft2)のほか、さまざまな関係者に足を運んでいただき、想定外の嬉しい出来事がありました。
現在、「TBS赤坂BLITZスタジオ ホワイエ」のイベントスペースにも展示されています。
遠西 ここでは池袋と同じ巨大トイレのほか、アニメの台本、番組グッズ、キャラクター等身大パネルなどを展示しています。池袋駅に来られなかったファンの皆さんにも楽しんでいただけるような展示企画にしました。

さらに、「絵馬」に作品へのメッセージやお願い事を記入し、絵馬の写真をXに投稿すると、抽選で番組グッズが当たる「推し絵馬」キャンペーンも実施しているのですが、この絵馬も想定以上に書いていただいていて、増刷するほどです。英語以外の外国語で書かれた絵馬も見られ、『地縛少年花子くん』の海外人気を実感できます。

今後は宣伝を通し、TBSのブランドイメージ向上を目指す
ところで、遠西さんはどのようにキャリアスタートしたのでしょうか。
遠西 新卒でPR会社に入社し、広告代理店、メーカーを経て、今に至ります。TBSは4社目で2023年に入社しました。それぞれ違う立場でプロモーションに携わり、マーケティング・コミュニケーションの領域でキャリアを作ってきました。
TBSには、どのような経緯で入社されたのでしょうか。
遠西 前職は自動車メーカーのマーケティング部に所属し、CM制作やデジタル施策、カタログ制作を通した車種ブランディングやメディアプランニングなど様々なことを経験しました。それも楽しかったのですが、自動車のような購買サイクルの長い商材ではなく、サイクルの短い商材のマーケティング・コミュニケーションをやりたいと思い立ち、転職サイトに登録してみたところ、TBSからスカウトをいただいたのが経緯になります。まったくの想定外で自分でも驚いたのですが、まずは話を聞いてみようと思ったのが最初のきっかけです。
もともとコンテンツは好きでしたし、毎日違う番組が作られていて、サイクルの速さも魅力的でした。それに、私が持っていたテレビ局のイメージとは違っていて、TBSは「VISION2030」にもある通り、メディアグループからコンテンツグループへの変革期で、面白いタイミングかもと思いました。
TBSに入社してよかったことを教えてください。
遠西 アニメの宣伝業務に限らず、学ぶことが多いですね。前職で扱っていた自動車は、お客様の比較検討のフェーズが長いので、宣伝の仕方も全然違います。
コンテンツは可処分時間を獲得するという意味では、比較検討があるかと思いますが、自動車より長くないです。そのため、「いかにコンテンツの魅力を短く・分かりやすく、そして適切な人に伝えて興味を持ってもらうか」が重要であると考えております。仕事内容は同じなのに、扱う商材が違うだけで方法が全然違うので、成長できる機会になったと思います。
それに、TBSでは、仕事の裁量が大きいと感じます。『地縛少年花子くん2』のプロモーションも自主提案でしたし、2024年7月からデジタルプロモーションのチームリーダーを任されていますが、自分で考えて動くことが多いです。それが合う・合わないは個人差があると思いますが、自分で考えて挑戦できる土壌があるという点は魅力的です。

プロモーション部としての今後の展望は?
遠西 次につなげるような仕事をしなければいけないと思っています。宣伝をしたら終わりではなく、振り返りや検証を行い、PDCA(※Plan=計画・Do=実行・Check=評価・Action=改善の頭文字を取ったもので、業務や事業などの継続的な改善を目指す手法の一つ)を回していくことが重要です。ひとすじ縄でいかないことも多いですが、徐々にブラッシュアップしていくべく、今はその枠組み作りをしている最中です。
番組制作者がどんなに素晴らしいコンテンツを作っていても、それがどんなコンテンツで、いつどこでやっているのか知ってもらえないと見てもらえません。効率的かつ効果的な方法を模索して、少しでも多くの人にTBSのコンテンツを見て楽しんでいただき、ひいてはTBSのブランドイメージ向上にまでつなげることが大きな役割だと感じています。今後も一つずつ検証をしながらやっていきたいですね。
『地縛少年花子くん2』のプロモーションを通じて、宣伝の仕事に興味を持った人がいるかもしれません。最後に、プロモーション部が求める人材像を教えてください。
遠西 もちろん企画のアイデア(HOW)も重要ですが、提供価値(WHAT)やターゲット(WHO)などから戦略を立ててコミュニケーションプランを作っていくというのが重要だと思っております。優秀なクリエイターが多い会社だからこそ、データを活用しながらロジカルな発想をすることが重宝されるかもしれません。
また、プロモーションという業務の性質上、コストを使う立場であるので、しっかりと振り返りを行い、最適なコミュニケーション方法を追及していく気持ちを持つことも重要です。
正解のない仕事なので、ぜひ同じ熱量を持って議論できる人が一人でも増えたら嬉しいですね。今まさに過渡期を迎えるテレビ業界の仕事は魅力的ですよ。
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遠西高幸
PR会社・広告代理店、自動車メーカーでのマーケティング本部を経て、2023年にTBSテレビ入社。
総合プロモーションセンター プロモーション部にて、デジタルプロモーションプランナーとして番組のデジタルプロモーションプランニングや効果検証を行うことに加え、アニメの宣伝領域も担当。
TVアニメ『地縛少年花子くん2』©あいだいろ/SQUARE ENIX・「地縛少年花子くん2」製作委員会
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