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大ヒットTBSアニメ『五等分の花嫁』新作放送!世代や国を超えて愛され5周年、プロデューサーが語るヒットの理由

TBSは、2024年12月23日(月)深夜1:29~2:29に、新作のTVスペシャルアニメ『五等分の花嫁*』を放送します。原作は「週刊少年マガジン」(講談社)で連載した春場ねぎ氏による同名漫画。主人公の高校生・上杉風太郎が、五つ子姉妹の家庭教師を務めることになったのを機に始まるラブコメディーで、今回は新婚旅行編を描きます。

2019年のアニメ第1期放送開始から5周年を迎えた2024年は、今回の新作アニメのほか、さまざまなイベントを展開。これまでにTVアニメ2シリーズ、TVスペシャル2本、映画1本が作られた大人気作は、どのように広がっていったのでしょうか。第1期から制作に関わってきた、TBSスパークルのアニメプロデューサー・比嘉麻衣子に、企画立ち上げ当初から現在に至るまでの話を聞きました。

『五等分の花嫁』の制作期間は異例の約1年だった

新作のTVスペシャルアニメ『五等分の花嫁*』キービジュアル
新作のTVスペシャルアニメ『五等分の花嫁*』キービジュアル

比嘉さんは『五等分の花嫁』にいつから関わっていますか?

比嘉 アニメ第1期の立ち上げから現在まで関わらせていただいています。私にとって『五等分の花嫁』は初めてアシスタントプロデューサーとして独り立ちして、アニメの作り方を勉強しながら携わってきた大切な作品です。主に制作と宣伝を担当しています。

プロデューサーは、制作においてどんな役割でしょうか。

比嘉 アニメは製作委員会方式といって、複数の会社が出資して製作されることが多いです。現場では、監督が作品全体を総括し、プロデューサーはさらにその全体を見るイメージです。監督とプロデューサーの仕事内容は、ドラマの現場と大きく違いはないと思います。

『五等分の花嫁』では、TBSが幹事社で作品全体の責任を持つ立場なので、私は現場にコミットして、どんな風に作品を作っていくか舵を取ってきました。そんな中でもありがたいことに、スタッフ・キャストをはじめ委員会の方々も作品に対する想いがとても強く、同じ方向を向いて作品を築いてこられました。

アニメ制作はどのような流れで進むのでしょうか。

比嘉 『五等分の花嫁』を私が任されたときに企画自体は決まっていたので、脚本会議やキャスティングから始まり、アフレコ、音を付けるダビング作業、納品といった流れで進めました。

通常、アニメは企画から映像作りまで約3年かかりますが、実は、第1期は1年以内で制作を終えたという、稀なスケジュールで進められました。とにかく放送に間に合わせなければと、とても大変でしたが、現場の皆さんに頑張っていただいて、なんとか間に合いました。

それに、原作サイドのレスポンスが早いことにも助けられました。そのおかげで、今のようなグッズ・施策の多様な展開の実現に繋がったのではないかなと思います。

キャスティングはどのように決めましたか?

比嘉 上杉風太郎役の松岡禎丞(よしつぐ)さん、五つ子役の花澤香菜さん、竹達彩奈さん、伊藤美来さん、佐倉綾音さん、水瀬いのりさん…と人気を誇る豪華な声優さんが揃っていますが、キャスティングはテープオーディションで審査させていただきました。本編のセリフを落とし込んだオーディション原稿を読んでいただいたところ、すんなりとイメージにはまって決まった印象です。

声優さんのスケジュールを事前に抑えるのは大変です。制作スケジュールがない中、人気声優の方々全員揃って、スケジュールを抑えられたのは本当に奇跡でした。

アフレコの様子はいかがでしたか?

比嘉 第1期のときは、キャストが全員揃ってアフレコできました。皆さん本当に実力がある方ばかりで、個性豊かな五つ子姉妹それぞれの役をしっかり掴んで演じてくださいました。

それと女性が多い現場なので、美味しい食べ物を差し入れたり、他のスタッフさんからいただいたりすると、とても喜んでくださって。その楽しい打ち解けた様子が、もしかしたら五つ子の家族としての雰囲気作りにも繋がっていったのかなとも思います。キャストさんのインタビューでは、アフレコの思い出を聞かれると、皆さん必ず差し入れのことを話してくださっていたのが、印象に残っています。

続くアニメ第2期(2021年)を制作していたのはちょうどコロナ禍。ブースに入れる人数に制限があって、アフレコでは全員が揃う機会がありませんでした。その後、イベントのタイミングでやっと声優の皆さんが集まれて、第2期の名シーンの生アフレコを披露していただきました。お客さんたちもとても喜ばれていましたが、私たちも裏ですごく感動していました。

TBSスパークル比嘉麻衣子

アニメでは珍しく、衣装にスタイリストを入れることも

アニメ第2期の制作はどのような流れで決まったのでしょうか。

比嘉 当初は第1期だけの予定でしたが…おかげさまでアニメの反響がとても高く、原作コミックスもすごく売れたそうで、第1期最終回の放送前に製作委員会で話し合い、第2期と映画の制作が決まりました。

第1期と第2期では絵に少し違いがあるように感じます。

比嘉 それは第2期で、キャラクターの体型や表情など基本設計を考える「キャラクターデザイン」の担当スタッフが変わったからだと思います。第1期は頭身が高めで大人っぽいキャラクターにしていましたが、第2期では頭身は少し低めで全体的に丸みのある感じに仕上げてもらいました。第2期は原作5巻の内容から始まるということもあり、原作5~6巻のイラストをメイン参考にしつつ、かわいらしくデザインしていただきました。

五つ子のファッションも見どころの一つです。私服は、原作の春場先生がかわいい服装で描いてくださっているので、その原作の設定をもとにしています。実は、キャラクター衣装はスタイリストさんに依頼したこともあるんですよ。TVスペシャルアニメ『五等分の花嫁∽』(2023年)のエンディングや雑誌の特集(※下の写真・右の雑誌)の衣装は、四葉役の佐倉綾音さんのスタイリストを担当していた森俊輔さんにお願いしました。これは他のアニメではあまり見られない施策だと思います。

TVアニメ5周年記念の音楽ベストアルバム、企業コラボグッズなど多様な展開
TVアニメ5周年記念の音楽ベストアルバム、企業コラボグッズなど多様な展開

その甲斐もあってか、『五等分の花嫁』は女性の視聴者がとても多いです。最初は男性がメインでしたが、映画公開のタイミングでファン層が広がったように感じます。映画の舞台挨拶には、小学生のお子さんまで観に来てくれていて、びっくりしました。

ファンは日本以外にも広がっているそうですね。

比嘉 XやYouTubeのコメントを見ると、海外のお客様からのリアクションも多いですね。特にアジア圏にファンの方が多くいらっしゃって、台湾や東南アジア圏でもTVスペシャルアニメ『五等分の花嫁*』が公開されました。

ちなみにアニメ公式Xの更新は、同じTBSのプロデューサー・田中(TBSスパークル 田中潤一朗)に任され、第1期から私が担当しています。経験がなかったので、他のラブコメ作品のSNSを参考にしながら、必死に運用してきました。その甲斐もあってファンの方々の反応を一番近くで見ることができるので、いつも参考にさせていただいてます。

グッズ化のお話も多数いただいていて、今、週に約20件のペースで監修の確認をしています。ほかにも、スマホとコンシューマー向けのゲーム展開の監修も行っています。

なぜここまでファン層が広がったとお考えですか?

比嘉 やはり、一番はかわいい五つ子のキャラクターが持つ魅力ではないでしょうか。さらに物語のテーマで家族の絆をしっかり描いていることで、たくさんの人に共感していただけたのかなと思います。

それと、『五等分の花嫁』が掲載されていた「週刊少年マガジン」は、アダルト要素が入った作品もある中、春場先生はそういった要素に頼らないとこだわっていたので、女性も入りやすかったのかもしれません。

あとは毎年のように映像作品を発表したり、スペシャルイベントを行ったりと、原作が終わってもファンの方を飽きさせないような施策を続けています。2024年はTVアニメ放送5周年の記念コンサートやアニメ原画展などを行い、好評をいただきました。キャストさんも、ファンの方も『五等分の花嫁』は永遠に終わらないと思ってくださっているようで、ありがたいですね。

TBSスパークル比嘉麻衣子

最新作はアニメオリジナル、ハワイロケで背景をリアルに再現

アニメ放送5周年記念で制作されたTVスペシャルアニメ『五等分の花嫁*』は放送に先駆け、2024年9月より映画館で限定公開しました。プロデューサーの業務内容としてTVと映画で違いはありますか?

比嘉 映画は配給会社さんに向けた対応や、映画公開を周知するためのプロモーションなど、TV放送よりしなければならないことが多いと思います。

特に、2022年公開の映画『五等分の花嫁』のプロモーションは苦労しました。当時は情報番組等で取り扱ってもらうために上司に協力してもらった記憶があります。現在のTBSはアニメに力を入れていますが、『五等分の花嫁』のヒットも一助になれたのかなと感じていて、頑張ってきてよかったなと思います。(※映画『五等分の花嫁』はTBSテレビが出資する劇場用アニメーションとして、2022年時点で過去最高の興収約22.4億円を記録)

それと、今回のTVスペシャルアニメ『五等分の花嫁*』は制作現場の皆さんがクオリティーを上げるために直前までこだわって制作してくれました。そんなこともあり、納品は映画館公開の3日前。素材の現物受け取り指定の映画館には、スタッフが分担して現地に届けましたが、中でも沖縄は台風の時期で飛行機が欠便していたりと本当に大変でした。皆さんの連携のおかげで無事に公開日を迎えられたので、感謝しています。

ズバリ、新作の見どころは?

比嘉 今回は春場先生にご協力いただき、初めてのアニメオリジナルストーリーとして新婚旅行編を制作しました。原作ではハワイに行くところまでは描かれていましたが、その続きの新作エピソードを描いています。五つ子たちの新しい一面にご期待ください。

ハワイのシーンは実際にロケハンを行い、現地の様子をリアルに再現しました。意外に思われるかもしれませんが、アニメもロケハンすることがあるんです。実在する場所を使うには、許可取りもしています。

今作は、ハワイと言えば有名なピンク色の「ロイヤルハワイアンホテル」など、実在する場所が数多く登場します。ロケハンはある程度目星をつけて、スケジュールをびっしり詰めて1日で山・海・マーケットを巡ったりと、とにかく移動が大変でしたね。こだわって作りましたので、背景まで見ていただきたいと思います。

『五等分の花嫁*』は、ハワイの風景にも注目を
『五等分の花嫁*』は、ハワイの風景にも注目を

未経験からアニメ業界へ、将来はオリジナル作品に意欲

ところで、比嘉さんはなぜアニメプロデューサーになったのでしょうか。

比嘉 もともとアニメ制作に興味がありましたが、きっかけになったのは大好きな作品『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年MBS)です。企画した岩上敦宏さんのインタビューを読み、クリエイターと制作会社を結び付ける役割を担うアニメプロデューサーの仕事に強く惹かれました。

就職活動ではアニメの制作会社を受けましたが結局受からなくて、新卒で映画関連の会社に入り、アニメとは全く違う業務をしていました。それでも、アニメを作る仕事を諦められず、たまたま見かけたTBSスパークル前身の会社のアニメ制作職を受けてみたところ、合格をいただきました。転職組の同期3人はアニメ制作会社出身で、業界未経験は私一人だけでした。

未経験から今ではアニメプロデューサーとして活躍されています。どのような経緯でここまできたのでしょうか。

比嘉 最初は『ミイラの飼い方』(2018年)を担当することになったのですが、本当に何もできることがなかったので、着ぐるみを着るのが仕事でした(笑)。その後、すぐに『五等分の花嫁』のプロデュースを担当することになり、鍛えられました。プロデューサーまで務められたのは、本当に運が良かったんだと思います。

それと、『魔法少女まどか☆マギカ』の制作会社であるシャフトさんが、『五等分の花嫁』1期11話の制作に関わってくださり、そのご縁からTVスペシャルアニメ『五等分の花嫁∽』(2023年)を制作していただくことになりました。シャフトさんには『五等分の花嫁』の大ファンの方がいらっしゃるそうで、制作物から強い熱意を感じました。だからこそ『魔法少女まどか☆マギカ』のような作品が作れるんだろうなと思ったほどです。シャフトさんとお仕事するのは目標の一つだったので、とても嬉しく思いました。

比嘉さんは、アメリカ最大級のアニメイベント「OTAKON」にも今年2024年に出演されたそうですが、どんな経緯で決まったのでしょうか。

比嘉 プロデューサーの田中が『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(2013年より第3期)をきっかけに「OTAKON」に参加することになり、毎年、TBSの作品を取り扱っていただく関係が築けたようで、今年は私も『変人のサラダボウル』(2024年)のPRとしてゲストでご招待いただきました。

イベントでは、原作の平坂読先生とキャラクターデザインの福地和浩さん、原作の担当編集の岩浅健太郎さんと一緒に登壇し、サイン会も行いました。特に、キャラクターデザインの福地さんが舞台でイラストを描く様子を披露したところ、皆さんとても喜んでくれましたね。

海外のお客様は、クリエイターへの関心が高い傾向があり、日本ではキャストさんのファンが多い印象があったので、その違いが面白かったです。

今後はどんなアニメを作りたいですか?

比嘉 かわいい女の子の作品が大好きなので、『五等分の花嫁』のような作品をまた作りたいです。あとはいつか、オリジナルの作品を一本は作ってみたいと思っています。オリジナルアニメの制作には、5年くらいかかるので大変だろうなと覚悟しつつ…実写で描けないことができるアニメには、たくさんの可能性があります。プロデューサーになれたからには挑戦したいですね。

最後に、比嘉さんのようにアニメのプロデューサーを目指す就活生にメッセージをお願いします。

比嘉 未経験だった私でも、こうやって仕事をさせていただいてるので、アニメが好きな人なら頑張れる環境なのかなと思います。TBSスパークルのアニメ部員は十数人いますが、みんな本当にしっかりしていて優秀で、穏やかな雰囲気です。一緒に働ける仲間が増えると嬉しいです。

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TBSスパークル比嘉麻衣子

比嘉麻衣子
2018年、現TBSスパークル入社。主な担当は『五等分の花嫁』シリーズ、『まちカドまぞく』(2019・2022年)、『変人のサラダボウル』(2024年)、『聖者無双』(2023年)など。

『五等分の花嫁*』 ©春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁*」製作委員会

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