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TBS『ラヴィット!』で新境地、赤荻歩アナがゲーム実況やSnow Man・佐久間大介とのステージ秘話を語る
TBSで放送中の人気番組『ラヴィット!』(毎週月~金、あさ8時)は、日々さまざまな企画を通して日本の朝を明るく盛り上げ、話題を呼んでいます。番組内のゲームコーナーで実況役を担当しているのは赤荻歩アナウンサー。2024年はほぼ毎日出演し、注目を集めています。
赤荻アナは『ラヴィット!』に出演するようになり、どんな変化があったのでしょうか。ご自身の経歴を振り返りながら、番組や仕事に対する思いを聞きました。
笑いが絶えない『ラヴィット!』現場の裏側
赤荻さんが『ラヴィット!』に出演されるようになった経緯を教えてください。
赤荻 初めてスタジオに出演したのは、番組がスタートした2021年の8月です。MCの川島明さん(麒麟)と、レギュラー出演者の馬場裕之さん(ロバート)がゴーカートレースの対決をするということで、実況を任されました。
『ラヴィット!』を見ていない方は、「バラエティ番組のゲームの実況」と聞いてピンとこないかもしれません。私も最初はそう思いましたが、誰が勝つか競う点ではスポーツ実況に似ているところがあります。それまで野球や相撲、バスケ、ボクシングなどの実況を経験していたので、やりやすいなと思いました。
初回は一生懸命実況しただけで手応えはわかりませんでしたが、川島さんから「赤荻さん、このためだけに来たんですか?」とツッコミが入り、「はい」と答えたらスタジオに笑いが起きて。続けて「これから何か対決するときは絶対、赤荻さんに頼みます」と言っていただき、今に至ります。あの頃から考えたら、今はほぼ毎日出演しているので、予想だにしない展開です。
今ではほぼ毎日『ラヴィット!』に出演されていますが、どんな心境ですか?
赤荻 毎日が特番のようで楽しいです。アナウンサーとしては、今まで経験したことのないジャンルの実況に挑戦できるのは嬉しいですね。例えば、青木マッチョさんが初出演したときは「あみだくじ」の実況をしました。こんなに珍しい仕事をしているのは、少なくともTBSでは私だけなので、その点は自信を持っていいのかなと思います。
というのも、若手の頃からずっと、アナウンサーとしての武器を見つけることが私の課題でした。レギュラー番組がなかった時期も何度かあって、いただける仕事はがむしゃらにやってきましたし、自分の武器を探り続けたからこそ、いろいろなジャンルに積極的に触れて守備範囲を広げられたのかなと。そうした経験が、今につながっているのかなと思います。
また、『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」や『めちゃ×2イケてるッ!』の「シンクロナイズドテイスティング」など他局の人気企画をリアルに再現したこともあります。TBSにいながらそのコーナーをアナウンサーとして担当できたのは贅沢な経験でしたね。
実況では、どんなことを意識しているのでしょうか。
赤荻 『ラヴィット!』は生放送なので、視聴者を置いてけぼりにしないということを大事にしています。収録番組ならば編集で対応できることを、私の実況でまかなうイメージです。例えば「マリオカート」の実況なら、プレーヤー4人で分割した4画面表示になるうえに、どの出演者が何のキャラクターでプレーしているのか、パッと見ただけではわかりません。ですから、誰が何をしてどうなっているのか、ガイド役となれるよう意識して臨んでいます。
現場は時にカオスですが、それも『ラヴィット!』の魅力です(笑)。生放送という時間の制約がある中、進行する上で、出演者の方々が何をし始めるか、どう転がるかがわからないことは本当に大変です。どこまでも笑いの連鎖が続きますからね。毎日緊張する暇がないぐらいバタバタしていますが、ただ、これだけやりがいがあると、もう楽しくて仕方がないですね。
登場時にはユニークな自己紹介文がテロップ表示されています(主に火曜日)。誰が考えていますか?
赤荻 その日のテーマに沿って、制作スタッフと一緒に考えています。ボツになることもありますが、時には企画が生まれることもあります。例えば、『はなまるマーケット』(1996~2014年放送)で高倉陵さん(三拍子)と私が「はなまるエプロン隊」を務めていたことから、「私と三拍子 高倉さんは元はなまるエプロン隊」という紹介文を出した日がありました。それがきっかけで後日、高倉さんのリクエストで『はなまるマーケット』の「クイズ!デイリーママダス」復活企画をご一緒することになりました。ほかにも「実はタイムマシーン3号関さんと同じ誕生日」という紹介文にしたら、関太さんと一緒に誕生日会を企画してくださったり。
制作スタッフとはかなり密にコミュニケーションをとっています。『ラヴィット!』はスタッフの皆さんがとにかく汗をかいて、たくさんシミュレーションをしたうえで作られているので、そんな番組に携われるのはとても光栄ですね。
ゲーム実況のほかに、赤荻さんにちなんだ企画もありました。
赤荻 今年2024年2月に放送した「的場赤荻クイズ」は、俳優の的場浩司さんがサプライズ登場してくださって…とても面白い方で、私も楽しくて印象に残っています。
実は2007年頃、的場さんにご挨拶した際、「自分で言うのもなんですが、私、的場さんに似ていると言われることがあって、お会いできて嬉しいです」とお伝えしたことがありました。すると的場さんから「妻から、あなたの若い頃に似ているアナウンサーがいるよって言われたんだよね」と返していただきました。この10年以上前のやりとりを、的場さんがいまだに覚えてくださっていたので感激しました。
企画自体は、くっきー!さん(野生爆弾)の発案で、出演者が写真をぱっと見て的場さんか私かを答えるものです。どの角度が的場さんに似ているかを研究して撮影しました。
この企画が波及して、ほかに似ているといわれる、俳優・原田龍二さんと私のどちらかを当てる「原田赤荻クイズ」もあるんですよ。原田龍二さんの妻・愛さんにもご協力をいただいて一緒に撮影をしました。本当に感謝しております。
番組では、こうした企画やゲーム実況のほかにも、進行・ナレーション・ロケとさまざまな役割をいただけて嬉しいですね。
「ラヴィット!ロック2024」(8月開催)にも出演されましたね。反響はいかがでしたか?
赤荻 今年はさっくん(Snow Man・佐久間大介さん)が声を掛けてくださって、「ビリンビリンバンボン」というユニットに参加しました。早口ラップに加え、歌って踊るなんてしたことがないですし、アナウンサーは通常、舞台の上手か下手にいるのに初めてステージの中央に立つことになって、とても緊張しました。
他のメンバーの稲田直樹さん(アインシュタイン)と、きょんさん(コットン)も本業とは違うステージにとまどい、練習では3人ともどんな風に動いたらよいかわからなくて、棒立ちでした。そうしたら、さっくんが「こういう風にやりましょう!」と全部演出してくれて、ようやく形になってきたんです。さっくんがいなかったら、立ち位置から動けず歌謡ショーになっていたところでした(笑)。
配信でイベントをご覧になった方も多く、いろいろな人から「噛んでたでしょ?」と言われましたが、噛んでいません(笑)。
仕事以外は家庭に全振り!仕事の準備も子どもたちと楽しむ
赤荻さんは、これまでにバラエティ番組の経験はあるのでしょうか。
赤荻 スポーツとニュース、情報番組を担当することが多かったので、『さんまのスーパーからくりTV』(1992~2014年放送)を担当できたことは嬉しかったです。ここでバラエティ番組におけるアナウンサーの仕事、立ち居振る舞いを教わりました。ただ、毎日のように担当するバラエティ番組となると『ラヴィット!』が初めてです。
実はお笑いが好きで、ずっとお笑いの番組を担当したいと希望していました。それで、TBSラジオ『ラジオ寄席』(1974~2022年放送)を担当することになり、今は『落語研究会』に携わっています。
ラジオでは『安住紳一郎の日曜天国』を担当しています。ラジオは映像がない分、言葉でしっかり伝えなければなりませんので、テレビとは違う緊張感がありますね。
さまざまな現場で経験を積んできて思うのは、最終的に制作スタッフや視聴者の皆様に「赤荻がいれば、なんとかなるんじゃないか」とか、「見ていて安心する」と思ってもらえるようなアナウンサーになりたい、ということですね。まだまだ経験値は欲しいですが。
『ラヴィット!』に出演するようになってから、変わったことは?
赤荻 基本的には変わらないですね。「丁寧に謙虚に」という自分のテーマがぶれないように、いただける仕事には全力で取り組んでいます。やはり、アナウンサーは社員であり、スタッフの一員ですので、勘違いをしないよう心掛けています(笑)。
それに、アナウンサーとしての立ち位置があるからこそ、『ラヴィット!』に出演する一流の皆さんの中にポツンとアナウンサーが入って真面目に進行することで生まれる、ちょっとしたずれが面白いんじゃないかなと思います。
変わった点を挙げるとすれば、子どもたちがよくテレビを見るようになったことでしょうか。『ラヴィット!』を見ている子どもたちから、「パパ、これ実況して」と頼まれることもあって、ごはんを食べているところなど家でも実況するようになりました。実は、自宅にも実況ボードがあって、子どもたちが「赤荻歩ごっこ」をしています(笑)。
プライベートでは3児の父。いろいろなお仕事をされていますが、育児とのバランスはどんなことを意識されていますか?
赤荻 仕事以外の時間は全て家庭に振り当てています。自分の時間は、通勤時とお手洗いだけ(笑)。休日は子どもたちと、どこに行くかばかり考えています。仕事が忙しくて時間がないときは、子どもたちと交換日記をしていたことも。日記は今も書いてもらっていて、時間があるときは添削して「ここ、もうちょっと掘ってみようか」とアドバイスしたりしています。
また、仕事の準備を手伝ってもらうこともあります。例えば「マリオカート」や「PICO PARK 2」などのゲームで一緒に遊んで実況に備えたり、相撲実況を担当していたときは一緒に相撲を見て、実際に相撲を取ったり。子どもと一緒に仕事の準備ができるのは楽しいですね。
ただ、時に妻からは「またマイナス思考になっている」と言われるくらい、かなりの心配性です(笑)。その辺りは自分でも直したい所ですね。『ラヴィット!』でも「あの場面でこういう風に言えばよかったな、生放送じゃなかったらな」と思うことも多々あります。
それでも、番組は毎回面白く終わっているのがすごいと思いますね。スベっても面白くなるし、失敗が失敗に見えないところが『ラヴィット!』の魅力。それはやはり、川島さんの存在が一番大きいですね。出演者の皆さんも「川島さんが何とかしてくれるだろう」と考えて、笑顔で思いきりやっていると聞きましたし、実際に何とかしてくれて笑いで終わります。おかげさまで、私も収録中はずっと笑っていますよ。
アナウンサーを目指すなら、気になることは解消すべし
ところで、赤荻さんはどんな経緯でアナウンサーになったのでしょうか。
赤荻 テレビが好きというのはもちろんですが、小学生のとき、放送委員会でお昼の校内放送で好きな曲を流して話すのが楽しかったという思い出が、原体験としてありました。
本格的にアナウンサーを目指そうと思ったのは大学時代のアルバイトがきっかけです。イベントのMCをした際に、あるアナウンサーの方とご一緒する機会がありました。その方が進行や場の雰囲気の作り方が本当にお上手で…プロの仕事を間近で見て感動し、アナウンススクールに通い始めました。就職活動のときはアナウンサーを第1志望にして進め、ご縁があってTBSに入社が決まり、今に至ります。
新人アナウンサー研修チームのチーフも担当されていましたね。
赤荻 2021年から3年間、新人研修を担当してきました。研修での指導は、発声・発音から始まり、原稿の読み方、リポートの仕方など、基礎が中心です。あとは、現場で経験を積みながら身に付けていくものだと思います。
アナウンサーの仕事は、感覚が大事なところもあります。ただ、感覚は教えられないですし、それぞれが持った自分の感性を大事にしてもらいたい。みんな同じではつまらないですから、個性はしっかり残したうえで基礎を身に付けてもらうため、研修メニューを考えるのが結構大変でした。
TBSのアナウンサーは個性の塊です。私が一番普通だと思います(笑)。仕事の取り組み方はそれぞれ違いますが、ベクトルは同じ方向を向いています。その環境下でいろいろなアプローチの仕方を学んで、自分なりの道・自分だけの武器を手にしてほしいです。
そんな赤荻さんが、アナウンサー志望の学生にアドバイスするとしたら?
赤荻 アナウンサー志望の方にアドバイスするなら「気になることは解消してほしい」ということでしょうか。これは私のテーマでもあります。アナウンサーは日常生活も含め、経験したこと全てがトークのネタになります。ですので、例えば気になる映画があったとしたら、その映画を観に行ける人か、行かない人か、それがアナウンサーとしての境界線となります。映画を観に行けば、面白かったかどうか話すことができますが、行かなければ一個ネタが消えるわけです。ですから、アナウンサーを目指す方には、ぜひ行動に移してほしいと思います。
最後に、就活生に向けてメッセージをお願いします。
赤荻 TBSグループはテレビやラジオだけでなく、ゲームを作ったり、劇場を持っていたり、街作りをしたり、学習塾を経営したりと仕事の幅広さが魅力です。働く場がたくさんあるので、具体的に何がしたいかわからないと思う人でも、ここに来たらやりたいことが見つかると思います。
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赤荻歩
2004年TBSテレビ入社。現在、『ラヴィット!』のほか、『ひるおび』(月)、『JNNニュース』(水・金)、『落語研究会』、『経済の話で困った時に見るやつ(けいこま)』(TBS NEWS DIG配信)等で活躍中。