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TBSのSDGs特番『超こどもの日』で高嶋ちさ子 親子が音楽の贈り物!&『世界くらべてみたら』はジェシーがロケでハプニング⁉両番組のプロデューサーが明かす舞台裏
TBS系列で取り組んでいるSDGsの全社プロジェクト「地球を笑顔にするWEEK」〈2024年11月3日(日・祝)~11月9日(土)〉。TBSでは最終日を締めくくる大型特番として、『超こどもの日 2024 秋 2100年まで生きる君へ』〈11月9日(土)ごご4時~〉を放送します。
番組プロデューサーを務めるのは、『世界くらべてみたら』(以下、『せかくら』)に立ち上げから携わっている田崎真洋。自身の経歴から、両番組に込めた思いや裏話を聞きました。
キノコ研究に没頭した農学部出身のプロデューサー
田崎さんはもともとSDGsに興味があったのでしょうか。
田崎 SDGsというと幅広いですが、環境問題にはとても興味を持っていました。元々、将来は環境問題に関わる仕事ができたらと思っていたので、大学では農学部に進学。大学院を修了するまでキノコを研究していました。
それでは、なぜTBSテレビに?
田崎 大学院に入ったばかりの頃、講演会でNHKのプロデューサーの話を聞いたことがきっかけです。その方も農学部出身で、「メディアは理系の内容もたくさん扱うけれど、理系の人材が全然いない」という話をされていて、この業界に興味を持ち始めました。
それから大学院に通いながら出版社でアルバイトをするようになり、研究職とメディアの二つの分野を視野に入れて就職活動を。「自分の好きな理系分野を楽しく見られる番組を作りたい」という思いで、TBSに入社しました。大学院の仲間には、テレビ局やメディアに就職した人はいませんでしたね。
入社後、どんな経緯でプロデューサーになったのでしょうか。
田崎 入社後、僕がキノコが好きだと知れ渡っていたからか(笑)、最初に配属されたのは生活情報を扱う『はなまるマーケット』(2014年終了)でした。その後、ディレクターを担当しましたが、自分としてはあまり向いてないと感じていました。ある時、プロデューサーを任せてもらったところ、とてもやりやすいと思い、それ以降はずっとプロデューサーを務めています。
バラエティ番組のプロデューサーは、主に企画立案や経費関係などを担いますが、僕は何をしてもいい役だと思っていて、その立ち位置が気に入っています。編集したければ編集してもいいですし、時にはADの手伝いをすることもあります。
ちなみに、総合演出は演出面と編集を統括する立場です。今、僕がプロデューサーを務めている『せかくら』の総合演出のスタッフは本当に優秀で、僕が他の番組等で手が回らないときは最終チェックの前段階まで全て任せることもあります。
日本と世界をフラットに見つめる番組を目指して
田崎さんは2017年にスタートした『せかくら』のプロデューサーとして、立ち上げ時から関わっています。まずは、番組が始まった経緯を教えてください。
田崎 以前、『世界のみんなに聞いてみた』(2011~2012年)という、『せかくら』とほぼ同じコンセプトの深夜番組がありました。スタッフの間でもう一度やりたいねという話になり、『せかくら』を立ち上げることに。僕は『せかくら』のスタートからプロデューサーを務めています。
どんな思いを込めて立ち上げたのでしょうか。
田崎 当時はコロナ前だったこともあり、海外を取り上げる番組がいろいろとありましたが、なんとなく「日本ってすごいね」に結び付けるものが多いと感じていました。もちろん日本の良いところは褒めていいけれど、世界から見たら不思議なところもあって、それもしっかり紹介したい。日本と世界各国の良いも悪いも比べることで見えてくるものがある、そうしたフラットな視点を持った番組を作ろうと、みんなで話しました。
番組の企画はどのように立てていますか?
田崎 企画立案は、僕と総合演出の二人で決めています。毎週、放送作家さんからいただく案をもとに、時勢や季節、あとは「よる7時台・8時台」の放送時間帯の違いを考慮しています。特に2024年10月からは、ベースの放送時間が「よる7時から」に変更したので、より親子で楽しめて、その先にちょっとした気付きや学びがあればいいなと思いながら企画を立てています。
MCの国分太一さん(TOKIO)と上白石萌音さんの起用理由は?
田崎 国分さんは、『世界のみんなに聞いてみた』から引き続き出演していただいています。収録後には毎回、国分さんと一緒に収録の面白かったところ、うまくいかなかったところなどを、ざっくばらんにお話しさせていただいています。演出部分を任せてくれていますが、国分さんも本当に制作者目線になってアドバイスをくださるので、一緒に番組を作らせていただいている感覚です。
上白石さんは、前MCの渡辺直美さんがアメリカに拠点を移し、日本とアメリカを行き来することになったので、もう一人加わってもらうことになったのがきっかけです。長年アイドルをされてきた国分さん、お笑い芸人の直美さんとMCを担当するなら、分野や年代が違う方がいいと思い、20代の女性の俳優さんから探しました。
上白石さんは幼少期にメキシコに住んでいたことがあり、海外にとても関心が高く、『せかくら』の出演者たちのファミリー感ある雰囲気に馴染む、あたたかさもお持ちです。それに、上白石さんが初めて出演した映画で実は国分さんと共演されていた、というご縁もあるんです。ご本人はこれまでバラエティ番組は番宣で少し出演する程度だったそうで、今でも緊張するとおっしゃっていますが…。制作陣は国分さん、上白石さんにとても助けられています。
スタジオに出演されている外国人の方々はどうやって集めていますか?
田崎 基本的にはロケがベースにあるので、ロケに行った国の方を中心に集めています。VTRだけではわからない、その国の情報をプラスして話していただきたいので、事前にリモートで取材させてもらいながら調整しています。
彼らには、番組が関わるイベントにも参加いただいています。東京都港区が主催する「Minato Blossom Festa~みなとでつなぐ世界の輪」は、世界各国の文化に触れられるイベント。そこに『せかくら』が相性が良いとのことでお声がけいただき、3年連続で参加しています。過去には、『せかくら』外国人出演者が、来場者と世界のゲームをしたり、写真撮影したりする内容を実施しました(2024年は11月2、3日に開催)。
どこに着地するかわからない、スリリングな海外ロケの裏側
『せかくら』といえば、海外ロケが見どころです。どこへ行くのか、ロケのスケジュールなど、どのように決めていますか?
田崎 場所やスケジュールは内容によって異なります。例えば、「日本の採点カラオケを世界でやってみた!」というコーナーは、アニメや日本に関するイベントなどを開催している国を常にリサーチして、それに合わせてロケの予定を組んでいます。番組を継続することで情報が入りやすくなり、特に最近は好循環が起きているなと感じています。
ロケに行くスタッフは1~2人と、少人数なことが多いです。ディレクターは海外ロケに行きたい、という思いがあるスタッフが15人ほど集まっています。
田崎さんも海外ロケに参加されていますか?
田崎 本当は行きたいですが、僕は限られたロケしか参加できません。上白石さんによる「日本のわらしべ長者を世界でやってみた!」のロケではスペインへ同行しました(2023年11月放送)。このコーナーは各国をまわって、わらしべ長者のように物々交換を行うもの。事前の仕込みは一切なく、実際に出会った方と交渉しています。
スペインでは、前の国で子どもが描いたポケモンの絵からスタートしたところ、たまたまポケモンのTシャツを着ていた男の子が通りかかったので「あの子は絶対ポケモン好きだから行ってみよう!」と声を掛けて…最終的に上白石さんは高級生地店のレース生地を手にしました。
せっかく海外ロケを行うので、すでに知っている情報を取材しに行くのではなく、現地に行かないとわからないことや、現場で起こったことを大事にしようと意識しています。
海外ロケにはトラブルや苦労もあるのでは?
田崎 『せかくら』の深夜放送時代、SixTONESのジェシーさんとメキシコロケに行ったとき、撮影後にみんなで食事をしていたら、現地の男性から「俺はメキシコのテレビ番組のプロデューサーだ。明日、日本のテレビの取材をさせてくれ」と声を掛けられたことがあります。面白そうだと思ったので、慌てて各所に確認をとり、翌朝、何が起こるのか期待しながら待ち合わせ場所に行ったら、誰も現れなくて…男性とは一切連絡が取れなくなりました(笑)。だまされたのか、酔っぱらいの戯言だったのか。結局、何も起きなかったのでオンエアしていませんが、こういったトラブルの方が視聴者の方も見ていて楽しいんじゃないかなと思うので、大事にしたいですね。
ほかにも、現地に着いてから撮影NGと言われて交渉を続け、ギリギリでOKが出たこともあります。「なんとかなるだろう」と楽観的に構える気持ちも大切かなと思います。
一度の放送で終わらせず、SDGs活動を続けることを重視
まもなく『超こどもの日 2024 秋 2100年まで生きる君へ』が放送されます。どんな番組ですか?
田崎 2024年5月に放送した『超こどもの日 2100年まで生きる君へ』で取り組んだプロジェクトの、その後をお伝えする続編です。TBSのSDGs特番は、今年からSDGsにまつわるオリジナル企画を立てて、放送しています。
SDGsとは「持続可能な開発目標」のこと。特番を一度放送して終わりにするのではなく、番組で継続して取材・活動していく内容が大事だと考え、企画しました。
ズバリ、見どころを教えてください。
田崎 ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんと、高校生の息子さんの活動に注目していただきたいです。これは、日本の子どもたちが使わなくなったリコーダーやピアニカを、外国の子どもたちに贈るプロジェクトです。
企画の発案は高嶋さんの息子さん。日本では小学校でリコーダーやピアニカを経験しますが、卒業後はほとんどの人が使わなくなってしまうため、もったいないと感じたそうです。一方、海外には音楽の授業で楽器に触れられない国も多いそうで、そんな子どもたちに「少しでも音楽に触れてもらいたい」という思いで始まりました。
実はこの活動は、元々、高嶋さん親子が自分たちで始めようとしていたもの。高嶋さんに5月の番組への出演をオファーした際、「ちょうど今こんな計画を始めようとしている」と教えていただき、手を組むことになりました。
5月の放送ではプロジェクトの立ち上げまでの紹介でしたが、今回は夏に高嶋さん親子が東南アジア・ラオスの子どもたちに楽器を届けた様子を紹介します。高嶋さん親子がどんな思いでこの活動を行っているか、が番組内でわかると思います。
日本人の誰もが触ったことがあるだろうリコーダーやピアニカを再利用するのは、まさにSDGsを実践している活動です。高嶋さん親子は音楽がベースにあるからこういった活動になりましたが、環境問題にまつわるヒントは誰にとっても身近なところにあるんだなと感じました。番組を見て、自分だったら何ができるのか、考えるきっかけになったらいいなと思います。
『せかくら』や『超こどもの日 2024 秋 2100年まで生きる君へ』をきっかけに、田崎さんのように理系からバラエティのプロデューサーを目指す人材が増えるかもしれません。最後に、就活生に向けてメッセージをお願いします。
田崎 TBSでは採用の一環として「TBSバラエティ制作塾」というインターンを実施しています。そこに集まってくれた学生はテレビが好きで、貴重な人材だなと嬉しいです。ただ、TBSグループは放送以外の事業も手掛けるようになってきているので、「テレビが好き」だけでなく、ほかに自分の強みを見つけておくといいかなと思います。
僕は就活でインターンに参加していませんし、最初からメディア志望だったわけではありません。学生時代はキノコという珍しい分野の研究に時間と労力をかけていました。
一方で海外へ行くのがとても好きで、バックパッカーとして旅をした時期もあります。この経験が『せかくら』で役に立っているので、「就職のため」という視点ではなく、時間を自由に使える学生時代のうちに、何か自分が熱中できるものを見つけることが大事だと思います。テレビはなんでも題材にできるのが魅力ですから。
そして理系の人材がもっと増えたらいいですし、就職活動の選択肢に入れてもらえたら嬉しいですね。
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田崎真洋
2009 年TBSテレビ入社。『はなまるマーケット』のアシスタントディレクター、『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』プロデューサーなどを経て、 2017年の立ち上げ時より『世界くらべてみたら』のプロデューサーを担当。 企画や取材同行、将来を見据えた番組の方針づくりなど、番組制作全般に携わっている。