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TBS火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』プロデューサーに聞く、新しいラブコメドラマに込めた思い

2024年7月9日より、7月期の火曜ドラマ枠(毎週火曜よる10時)にて『西園寺さんは家事をしない』の放送がスタートします。原作は「BE・LOVE」(講談社)で連載中のひうらさとる氏による同名漫画。徹底して家事をしない主人公・西園寺一妃と、年下の訳ありシングルファーザーの楠見俊直&その娘の風変わりな同居生活を通し、「幸せって何? 家族って何?」を考えるハートフルラブコメディです。

本作のプロデューサーを担当するのは、TBSスパークルの岩崎愛奈と丸山いづみ。ドラマに込めた思いや自身のキャリアについて聞きました。

従来とは少し違う火曜ドラマ&新しいヒロインの誕生に注目

ドラマ『西園寺さんは家事をしない』キービジュアル

まもなく『西園寺さんは家事をしない』の放送が始まります。まずは、制作現場の様子を教えてください。

岩崎 撮影は和やかに進んでいます。少し待ち時間があると、倉田瑛茉ちゃん(楠見の娘・ルカ役)と、ワンちゃん(西園寺さんの愛犬・リキ役)のところに自然と皆さんが集まって来て、その光景が本当にかわいらしくて癒やされます。現場のスタッフも活力にあふれ、とても風通しが良く、順調に進んでいます。

主人公の西園寺一妃を松本若菜さんが演じます。このキャスティングにはどんな意図がありましたか?

岩崎 西園寺さんは38歳、これまでの火曜ドラマ枠の主人公には珍しく少し大人の設定です。また、今回は胸キュンラブストーリーを主軸にするのではなく、広い意味でのさまざまな愛を描きたいと思っていたので、火曜ドラマに新しい風を吹かせてくれそうな方がいいなと考えていました。

松本若菜さんは、同世代の私たちから見ても魅力的で、西園寺さんに似た雰囲気も感じます。私がプロデューサーを務めた2020年の火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(以下、ナギサさん)でご一緒しましたが、お芝居がすごく上手でお美しい方。それでいて、とても気さくで表情が多彩に変わるかわいらしい方だなと感じていました。そんな松本さんが今回、GP帯(よる7~11時のゴールデン・プライム帯)連続ドラマの初主演を務めること、それにTBSのドラマを選んでくれたことが本当に嬉しいです。松本さんの新しい一面を引き出して、この作品を代表作にしていただきたいと、力を入れています。新しいヒロインの誕生にご期待ください。

主人公を取り巻くキャラクターはどのようにキャスティングしましたか?

丸山 楠見役は、原作を読んだときから松村北斗さん(SixTONES)に演じていただきたいと思って依頼しました。松村さんは人見知りと聞いていましたが、全然そんな感じはなく、休憩中にご飯を一緒に食べたり、父親役として率先して瑛茉ちゃんに向き合ってくれています。瑛茉ちゃんも松村さんに心を開いていて、本当の親子に見えるんです。それは松村さんのお力が大きいと思います。

岩崎 ミステリアスな風貌で歌って踊って料理をするYouTuber・カズト横井を演じるのは、津田健次郎さん。このキャラクターは、原作者のひうら先生が描いた魅力的なキャラクターです。どんな方なら大人の魅力とチャーミングさを出してくれるだろうかと考えた時に、津田さんのお顔が思い浮かびました。思い切って歌って踊ってくださっているので、ぜひ期待していただきたいです。

西園寺さんが勤める会社の社長・天野は、どんな人が社長なら楽しい会社になるかと考えて、いつかご一緒したいと思っていた藤井隆さんにお願いしました。そして美術チームは、藤井さんが社長ならきっとこんなオフィスになるのでは、と藤井さんの雰囲気からインスピレーションを得てセットを作っています。

キャスティングが決まったときに、ひうら先生が「イメージにぴったり!」と喜んでくださって、期待に応えられたのが嬉しかったですし、先生にもこの作品を楽しんでいただけるように頑張ろうと改めて気合いが入りました。

TBSスパークルの岩崎愛奈、丸山いづみ

みんながもう少し楽に生きられる世の中を目指して

今回は主人公が一軒家を買ったという設定ですが、家のセットはどんなところにこだわっていますか?

岩崎 とにかく家事をしない主人公のために、無駄のない動線にこだわった間取りをみんなで考え、視聴者の方が見ても生活しやすそうと感じていただけるように意識しました。大きな家に、素敵なお洋服がいっぱいで…というのも夢があって、それを見るのも楽しみの一つだと思いますし、実際に『ナギサさん』ではドリーム感を大事に制作しました。ですがあれから4年、コロナ禍を経て、人の価値観や考え方など世界の空気が変わったような気がしています。今は現実から地続きになったドリーム感を描きたいというように、夢と現実の塩梅が自分の中で変わってきたかなと思います。

台本作りはいかがでしたか?

岩崎 ひうら先生が描く魅力的なキャラクターを生身の人間が演じるときに、どうしたらその魅力を維持しつつ、さらに良さを引き出せるかを考えて、セリフの言い回しやテンポ感など、かなり話し合って作っていきました。漫画だからできることと、ドラマだからできることがあると思うので、その変換は難しくもあり、面白い作業でした。ひうら先生と作品のファンの方の期待に応えたいですし、ドラマから新規のファンの方を獲得し、漫画のファンも増えるといういいサイクルができるようにしたいですね。

丸山 脚本家の先生方も小さいお子さんを育てていらっしゃるので、みんなのリアルな育児のエピソードが盛り込まれています。子育て世代の方からも共感を得られるのではないかなと思います。

岩崎 スタッフにも子育てや介護をしながら働いている人もいますし、私も出産を経験し、育児をしながら働いています。シングルファーザーである楠見に共感することも多く、その大変さもしっかり描くように意識しました。

ドラマを通してどんなことを伝えたいですか?

丸山 一人暮らしを満喫したり、家事はしないと決めている西園寺さんや、シングルファーザーで育児をする楠見、というように、いろいろな家族の形や生活スタイルを選択する方がこれから増えていく中、さまざまな生活スタイルの方たちがドラマを通して生きるヒントを見つけられたらいいなと思います。

岩崎 原作では、登場人物たちが協力しあって生きているので、こんな風にみんながちょっとした思いやりを持っていられたら、もう少し楽に生きられるだろうなと思うんです。実際に私も、プロデューサーを一緒に務める丸山の協力があり、本当に助かっています。人付き合いが希薄な時代だからこそ助け合いが大切だということを伝えたいと思いました。

それに世の中の人がもう少し楽に生きられるようなアイデアを届けられたら、というのは『ナギサさん』をはじめ手掛けた作品で一貫して意識していることです。『ナギサさん』では「女性は家事、男性は外で仕事」という従来のジェンダーロールの逆転が注目され、こうでなければならないという呪いからの解放や、肩の荷をおろして見られる作品作りを心掛けてきたところが、視聴者の方にも共感していただけたという実感がありました。今回も今の時代に合った人生観やライフスタイルを提案できたらいいなと思います。

TBSスパークルの岩崎愛奈、丸山いづみ

制作現場のワクワク感は、何度経験してもやみつきに

ここからは、ご自身についてうかがいます。そもそも、おふたりがドラマのお仕事をしようと思ったきっかけは?

岩崎 テレビやドラマが好きというのが一番の理由です。それに、いろいろな人が集まって何かを作ることも好きなので、ドラマのような、みんなが楽しいと思うものを作るなら楽しいに違いないと思い、迷いなくこの業界に入りました。

丸山 私もドラマが大好きで、ドラマに携わる仕事がしたかったのがきっかけです。最初はポストプロダクションの会社(映像編集などを行う会社)で編集を担当していましたが、番組全体に関わりたいと思い、制作会社に転職し、今に至ります。

ドラマが好きなおふたりが、これまでで一番感銘を受けた作品は?

岩崎 私は『若者のすべて』(1994年フジテレビ)です。初めて見たドラマだったこともあり、衝撃を受けました。舞台の神奈川・川崎の風景がずっと記憶に残っているし、少し悲しい大人の世界を初めて見た気がしました。脚本を担当した岡田惠和さんとはいつか仕事してみたいと思っていましたが、『ファイトソング』(2022年TBS)で夢を叶えることができました。やっぱり衝撃を受けたものは自分の中にずっと根付いてるんだなと思いました。

丸山 私は『池袋ウエストゲートパーク』(2000年TBS)が青春のど真ん中に見た大好きなドラマです。それと、『愛していると言ってくれ』(1995年TBS)は、私が編集の仕事に携わっていたときに何度も見て、とても好きです。名作ドラマはたくさんありますが、この2作は特に好きですね。

TBSスパークル丸山いづみ

ドラマ制作の仕事にはどんな魅力がありますか?

岩崎 街中でたまに自分の作ったドラマの話をしている方に出会うと、やっぱりすごく嬉しいですね。私も学生時代はドラマを楽しみに一週間過ごしていましたし、自分が作る側になって、誰かの楽しみになるものを作ることができるのは本当に嬉しく思います。また、制作現場に各部署のプロフェッショナルが集まり、みんなで同じ方向を向く瞬間のエネルギーや高揚感、ワクワク感は何回味わっても素敵だなと感じています。

丸山 ドラマ制作は本当に大変ですが、その分、すごく達成感があります。チームの一員になった段階で目指す方向は同じですし、チームが大きな家族のような感覚で、本当に仲良くなります。時には本気の喧嘩をすることもありますが、やっぱり楽しい。その上、作ったドラマが誰かの人生の転機になることもあるなんて、素晴らしい仕事だと思います。興味がある方はぜひ挑戦してほしいですね。

TBSスパークルの雰囲気や、働きやすさについてどう感じていますか?

岩崎 風通しがすごく良いと感じています。私もプロデューサー補のときから「この脚本、どうだった?」と聞いてもらえて、意見を言える環境でした。新人の頃からチームの一員として組み込んでもらえていたと思います。

丸山 チャンスがとても多い会社だなと思います。例えば企画書もベテランだから絶対に通るというわけではないし、若手も含めてみんな同じチャンスがあります。もちろん、私たちも頑張らなくてはいけませんが、頑張った分だけ評価されるように感じています。

最後に、ドラマ制作の仕事を目指す就活生にアドバイスをお願いします。

岩崎 いろいろなドラマや映画を観ておくのがいいんじゃないかなと思います。私も今まで見てきたもの、好きだったものが自分の糧になっているので、糧はやはり多い方がいいと思うんです。それと、何か好きなことやものを増やしておくのがいいのかなと。ドラマ以外でも例えば音楽やお菓子などが、いつかドラマに活かせるタイミングが不思議とあるんです。自分の中の引き出しを増やすという意味でも、好きなものは多いに越したことはないと思います。

丸山 私もほぼ同じ考えですが、映画やドラマ、舞台といろいろなものを観て、この作品のこんなところが印象的だなとか、素敵だなとストックをたくさん持っておくと、実際に作り手になってから役に立つと思います。あとは、好きな俳優さんなど一緒に仕事したいと思う方がいると、それを糧に頑張れるのでおすすめです。

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TBSスパークルの岩崎愛奈、丸山いづみ

岩崎愛奈
TBSスパークル エンタテインメント本部 ドラマ映画部所属
2017年、ドリマックス・テレビジョン(現TBSスパークル)入社。『私の家政夫ナギサさん』『#家族募集します』『ファイトソング』『ユニコーンに乗って』などでプロデューサーを務める。

丸山いづみ
TBSスパークル エンタテインメント本部 ドラマ映画部所属
2020年、TBSスパークル入社。『ペンディングトレイン~8時23分 明日、君と』プロデューサーを務める。

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