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ドラマ『Eye Love You』で日本ドラマに初挑戦!車賢智に聞く、日韓ドラマ制作現場の違い

TBSでは、2024年1月23日から、ドラマ『Eye Love You』の放送がスタートします。本作は、日韓カップルのファンタジックなラブストーリーです。主演の二階堂ふみの相手役を務めるのは、韓国ドラマ界のライジングスター(※次世代を担うスター)のチェ・ジョンヒョプ。ヒロインの相手役に韓国の俳優を迎えるのは、民放GP帯連続ドラマ史上初めてです。

このチャレンジングな企画には、韓国出身のTBSテレビ 車賢智(チャ・ヒョンジ)がプロデューサーの一人として関わっています。韓国で番組制作に携わっていた彼女は、日本の制作現場についてどう感じているのでしょうか。

大学院生時代の出会いがきっかけでTBSへ

車さんは、2022年にTBSテレビへ入社されました。その経緯を教えてください。

 本当に縁だと思いますが、当時の事業投資戦略局の方からのスカウトがきっかけです。もともと私は、韓国のCJ ENMでドラマやバラエティの制作をしてきましたが、一度放送業界から離れ、日本の大学院で新しい勉強をすることにしました。卒業後、別の仕事をしていたときに上長だった方からお声がけいただき、最初は「外国人の私にTBSから?」と驚きましたが、せっかく日本に来たのだから、日本の放送局も経験してみたいなと思い、入社を決めました。

日本の大学院では何を学ばれていましたか?

 メディアアートの分野を勉強しました。日本文化についてそんなに詳しくなかったし、最初は日本語も全然上手ではありませんでしたが、勉強したかったインタラクションデザインという分野で、英語での意志疎通ができ、なおかつ気が合う教授がいたので、日本の大学院に決めました。

TBS入社後は事業投資戦略部に配属されました。どんな仕事をされていますか?

 事業投資戦略部では、韓国企業への出資や新規事業の立ち上げ、ジョイントベンチャー(JV)の設立など、グローバル関連や日本と韓国をつなぐプロジェクトなどに参画していました。投資業務は商社やコンサル会社出身のキャリア社員が中心となっていますが、制作現場を知る視点があった方がいいということで、ビジネスと現場を繋ぐようなポジションを目指して日々勉強をしています。

そこから、車さんが『Eye Love You』の制作にかかわるようになった経緯は?

 私が入社してすぐの頃、私の前職とも関係のある韓国の撮影現場に、ドラマ制作部の皆さんが見学しに行くという出張に同行することになりまして。その後、日韓カップルのラブストーリーを企画しているプロデューサーさんから韓国人の恋愛事情などについてお話を聞きたいとのご依頼を受けました。脚本を作るときに韓国のあらゆる情報や日韓カップルの事情等を参考にしたかったそうです。そこから、韓国人俳優をキャスティングした時点で合流することになりました。最初は投資戦略部の業務と並行しながら、脚本の打ち合わせに参加していました。

では、ドラマの制作現場には慣れているんですね。

 そうですね。でも、日本のドラマ制作は初めてなので、韓国との違いを少しずつ感じながら学んでいます。一番違いがあるのは、スタッフの構成です。

日本ではプロデューサーとディレクターの役割が分かれている印象ですが、韓国では「PD」いう一人が担当します。だから、企画から脚本作り、キャスティング、現場ディレクション、編集まで全てを一貫して手掛けることになります。韓国では、ドラマの場合、1つの番組に監督と呼ばれるメインPDと助監督と呼ばれるPDが数人いる体制です。私もPDとしてドラマや音楽番組などを制作していました。

今回は、プロデューサーとして入ることになりましたが、チェ・ジョンヒョプさんという韓国人俳優が出演することで現場でのコミュニケーションや翻訳及び通訳業務も兼ねています。脚本上に韓国語のセリフや韓国関連シーンも多数あることで一般的な日本ドラマの制作現場と比べて少し特殊な形で関わっています。

TBS車賢智

沼落ち必至のラブストーリーを目指して

撮影の様子はいかがですか?

 毎日バタバタしながらも楽しくやっています。日本人の俳優と韓国人の俳優やスタッフが交わって作っていく特殊な現場でして、日本語に韓国語、時には英語まで使われるグローバル感も新鮮です。俳優とスタッフ一同、その雰囲気を楽しみながら、お互いの言語も学んでいますね。個人的には日本人俳優さんたちが韓国語の勉強をしてくださって、毎日現場に入る時韓国語で挨拶をしてくれるのがとても嬉しく感じています。

ヒロインの相手役として、チェ・ジョンヒョプさんをキャスティングした決め手は?

 日本の地上波ドラマのキャスティングではありますが、「日本語が話せる俳優」の中から探すとほぼ限られてしまうので、一旦話せるかどうかはゼロベースで考えていました。このキャラクターに合うかと、日本の視聴者にも愛されそうな要素を持っているのかを判断基準としていました。

チェ・ジョンヒョプさんは、日本でも人気になった『わかっていても』(Netflixでヒットした韓国ドラマ)での演技を見て今回の作品のイメージに合うと思ったし、主演した『無人島のディーバ』が韓国でヒットしたので、将来有望な俳優だと思っていました。

ただ、日本での知名度はそんなに高くなかったので、日本の視聴者はどう思ってくれるのか気になっていました。彼は身長186センチという長身ですが、顔はかわいく笑顔が特徴的です。日本人の女性に会うたびに、彼の写真を見せたりして反応を見ていましたね(笑)。日本の皆さんにも愛されてほしいと思っています。

本作はラブストーリーということですが、どんなところにこだわっていますか?

 火曜ドラマは女性の視聴者がメインターゲットでもあるので、視聴者がこのドラマを見て元気になり、見るのが楽しみになるドラマを目指しています。私の周りにも韓国人男性との恋愛に興味がある日本人女性が少なくないので、このドラマを通じて彼女たちの期待に応えることができたら嬉しいなと。積極的にアプローチする韓国人男性ならではの恋愛ネタもたくさん入れました。ぜひ見てキュンとしてほしいです。主演の二階堂ふみさんも「台本を読んでいたら照れてしまって、ソファーにダイブしてしまった」と仰っていて、それを聞いたときは嬉しかったです。

ちなみに実は私、ラブストーリーは今回が初挑戦。韓国ではスリラー映画や刑事ドラマばかり手掛けていたので、血を見なくていいのがまたいいことですね(笑)。

TBS車賢智

日韓両方を経験したからこそわかる、制作現場のリアルな違い

そもそも、車さんがドラマ作りの仕事をしようと思ったのはなぜですか?

 私は高校一年生まで陸上選手だったのですが、膝の手術を数回受けて、今後選手としてやっていくのは難しい状態でした。リハビリや長期入院中にすることがなかったので、本を読むこととビデオを見ることにハマりました。そこでストーリーというものに興味を持ち、高校三年の時インディーズ短編映画で受賞したことをきっかけにこの業界に。大学生のときは、授業にはほとんど行かずに映画現場で仕事をしていましたが、新卒でCJ ENMに入社し、テレビ業界に入りました。小中高時代はスポーツばかりだったので、自分がこういう道を歩むことになるとは思っていませんでした。

TBSで働いてみてどうですか?

 周りの皆さんが本当に優しくて、感動しています。私が韓国の制作現場にいた当時は厳しい人ばかりでしたから(笑)。当時の韓国現場よりは、人間らしく生きられているような気がします。少なくとも週一は必ず休めるし、女性のスタッフも増えてきているので、いいなと思います。

私が韓国の制作現場で働いていた頃は(特にAD時代には)、休みは月1回あるかどうかで、女性スタッフもほとんどいない軍隊のような雰囲気でしたね。ただ、この5~6年で韓国の方もだいぶ環境が改善されたと聞いています。

韓国ドラマは世界でヒットしている作品がたくさんあります。その理由は何でしょうか。また、日本に足りないものは何だと思いますか?

 韓国はシステムの改変や新しい技術の導入など、いいものは早く取り入れようとする精神が強いと思います。いいと思ったことは素早く導入し、違ったら戻すことも比較的早く判断するので、短時間でいろいろなチャレンジができる環境かと思います。仕事の流れや文化の違いはあるのですが、日本のクリエイターも素晴らしい方ばかりなので、技術に差があるとは思いません。

あと、韓国は人口が少なく市場規模が大きいとは言えないので、基本的に国内市場より海外市場を目指しています。また最近だと地上波放送より、OTT(配信サービス)オリジナル作品の比重が高くなっています。それに比べると日本は地上波放送が力を持っているので、羨ましさを感じました。一旦国内で勝負してから、海外へ展開していくというシステムが韓国とは違うところかもしれません。向こうでは、企画の段階で海外向けの目線で制作し、韓国の基準より世界基準を考えることが多かったです。

最後に、就活生へメッセージをお願いします。

 TBSは、番組制作のプロがたくさんいらっしゃって、新規ビジネスにもオープンマインドですし、優しい仲間も多いところです。今後、さらにグローバル向けのビジネスも拡張されると期待しているので、新しい経験をしてみたい方はぜひ来てほしいです。

TBS車賢智

車賢智(チャ・ヒョンジ)
韓国・ソウル出身。新卒でCJ ENMに制作ディレクターとして入社。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科を経て、2022年TBSテレビ入社。事業投資戦略部での業務と並行しながら、『Eye Love You』で日本の地上波ドラマのプロデューサーデビューを果たす。

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