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総理大臣官邸から日々“この国の行方”を伝える、TBSスパークル渡部将伍の挑戦
日々発信されるニュースの裏には、報道記者の存在があります。しかし、その裏側を知る機会はなかなかありません。そこで、政治報道の最前線である「総理番」を担当しているTBSスパークル渡部将伍に、報道記者の世界を紐解いてもらいました。
「政治部記者」としての心構え
普段の仕事について教えてください。
渡部 普段はTBS放送センターがある赤坂ではなく、日本の政治の中枢である永田町にある総理大臣官邸に出勤しています。主な仕事は総理の出邸から退邸まで、「総理番記者」として総理の一挙手一投足を常に追い続けることです。総理が「何を考え、何を感じ、何を発するのか」、この国の先導者が向かう方向は、この国が向かう方向を示していると私は考えていて、これから起こりうる「変化」の最前線で取材を続けています。総理本人はもちろん、閣僚・官僚たち、多くの国会議員、様々な省庁で働く官僚の方々など、取材先は多岐に渡ります。
また、デジタル庁担当としてマイナンバー制度やデジタル行財政改革を始めとするデジタル化によって起こる、社会の「進化」を追い続けています。私が書いた記事が、例えば家族や友人、どこかの知らない人だとしても、「誰かの命や生活を守るため」の一助になるべく、「必要な情報が必要とする時に届くように」と常に心がけています。
どんなときに仕事のやりがいを感じますか?
渡部 記者としての能力や経験がまだまだ足りていないと日々痛感しているという前提のもとですが、自分の取材で得た情報が原稿に反映されることはやはり記者としてのやりがいではないでしょうか。特にその情報が他社にはない「オリジナル」のものであれば尚更だと思います。
今はニュースの放送枠だけでなく、TBS NEWS DIGなどのプラットフォームをはじめ、発信の手法も方向も多岐に渡る時代なので、自分が取材で得たものを発信できることは何よりもわかりやすいやりがいだと感じています。あとは、地方で生活する家族から「見たよ」と連絡をもらえるのは、今でも嬉しいです。
とはいえ、プレッシャーもあるのではないでしょうか。取材で気を付けているのはどんなことですか?
渡部 当然のことですが、「速さと正確さ」は常に意識しています。報道局で働いている以上、この2つは避けては通れないポイントですし、非常にプレッシャーです。政治の現場では誰か一人のちょっとした発言ですらニュースになることも多々あります。そんな時に、「何がニュースなのか」を素早く判断し、正しく報じるためには、常に情報や知識をアップデートし続けなければいけないと日々痛感しています。報道陣向けに設定された取材の現場以外だけでなく、VTRや出稿に必ずしも繋がらないとしても、可能な限り多くの意見をフラットな目線で取り入れることを意識しています。その上で、初めて情報に触れる人が短い時間でもわかるような整理の仕方で、ニュースを届けられるように普段から準備をしています。
事件報道の現場は緊張感と常に隣り合わせ
渡部さんは、昨年から今年にかけて相次いで発生した広域強盗事件の取材も担当されたそうですね。
渡部 政治部へ配属される直前に、主犯グループが拘束されていたフィリピンに即日取材に入りました。東京からはもちろん、北京やバンコクなど、世界各国のTBSグループの記者やカメラマンとチームを組み、時には猛暑の中、時には収容所の敷地を走り周りながら、2週間の間、ほぼ毎日、全ての報道・情報番組で中継しました。
苦労した点はどんなところですか?
渡部 言語のコミュニケーションなどは思っていたよりもスムーズにいきましたし、日本で取材するよりも何なら取材しやすかったかもしれません。警視庁記者クラブをはじめとして国内からの情報の共有も迅速でしたので、あまり困ったことはありませんでした。
一方で、いつ主犯グループの移送が始まるのかなど、常に気を張り続けていたので、休息もなかなかとれず、気候も日本とは真逆でしたので、体力的には厳しい期間だったなと思います。食事や水分補給も、調達に時間がかかるような取材ポイントが多かったので大変でした。ちなみに帰国したのは2月でしたが、その日のフィリピンの最高気温は34℃、日本の最高気温は4℃でした。
この事件を機に、フィリピンの司法制度にも注目が集まるようになりました。現地の様子はいかがでしたか?
渡部 私も取材して驚いたのですが、「無法地帯」と言っても過言ではないような場所を目の当たりにした時は衝撃的でした。事件の発端でもある、携帯電話を用いた詐欺行為ですが、国内は当時、法改正期間で携帯電話のSIMカードが屋台のような場所で簡単に手に入る環境でした。日本円で1枚300円ほどで購入できますし、電波の開通手続きも、厳格とは言えないような仕組みでした。現在は本人確認などの認証手続きに厳しい目が向けられてきていますが、そのための身分証なども、路地裏を歩けば簡単に偽装したものを入手できるような地区もありました。実際に歩いてみると、私も次から次へと声をかけられ、日本円で3000円もあれば「運転免許証や在留カード、パスポートから大学の卒業証書まで偽装できる」と、“偽身分証”のカタログも見せてもらったこともありました。日本では考えられないような取引が当たり前のように行われており、本当に驚かされました。
世間からの注目度が高い事件でした。取材を振り返り、今の心境は?
渡部 世界が注目する出来事をTBSの代表として取材に参加できたことは、大きな自信にもなり、改めて強い責任感を感じるきっかけになりました。
一流クリエイターから刺激を受けられるのがTBSスパークル
ところで、渡部さんはなぜこの仕事を志望したのでしょうか?
渡部 最初はなんとなく「いろいろなことができればいいな」くらいでテレビ業界を選びました。恥ずかしながら学生時代にテレビの現場で働くために準備したこともなければ、勉強したことも特になかったです。最初に配属された情報番組ではニュースにエンタメ、スポーツに音楽などいろいろな分野に触れるにつれて、世の中で起きている事件や事故、災害を前にした人々の無力さと所詮は他人事という意識を痛感しました。「知っている」ことで命や生活を守れるかもしれない。自分がテレビや様々なコンテンツを通して伝えた内容が、結果としてどこかの誰かを守ることになれればと思い、記者になることを目指しました。
TBSスパークルの強みは何だと思いますか?
渡部 TBSスパークルには多岐にわたるジャンルに挑戦し続けることができる環境が備わっていると思います。番組の企画書をバラエティのスタッフとともに意見を交換しながら作り上げることもあり、常に一流のクリエイターたちの経験や視点に間近で触れることができます。
8時間に及ぶ報道の特別番組に携わった際には、同じTBSスパークルのドラマチームの方々と一緒に1つの仕事をしたことで新たな気付きや知見を多く得ることができました。自分が取材した内容が、脚本となり、役者さんの演技が入り、TBSスパークルのドラマチームのスタッフが再現性の高い空間を作り上げ、1本のドラマが完成した時には感動を覚えました。
テレビ局員にしかできないことよりも、TBSスパークルのスタッフであることでより精錬された技術やコンテンツのクリエイターたちの中で刺激を受け続けて、日々の学びと新たな体験にあふれているのがTBSスパークルという環境だと思っています。
記者を目指す学生がやっておいた方がいいことはありますか?
渡部 やはり原稿を書く上でも、取材する上でも「ポイントを見極める」能力は必要になってくると思います。記者になるためというよりは、記者になってからの例で恐縮ですが、テレビのニュースや新聞の記事をみることも大事かもしれません。
しかし、あくまで報道されているものはいろいろな情報の「ポイントをまとめたもの」ですから、まとめられる前段階の「情報」を自分で要約してみたりするのもトレーニングになるかもしれません。例えば、「政府発表の統計」を自分なりに要約してみたり、極端な例で言えば、観た映画の内容を2分にあらすじをまとめる、でもいいです。インプットしたものを時間を決めてアウトプットしてみるのがいいかもしれません。現場の記者の仕事ってつまりこういうことなので。
最後に、就活生へのアドバイスをお願いします。
渡部 “日本最大級”の制作会社でもあるTBSスパークルなので、私は社内での競争意識も高いと感じます。いろいろなチャンスがここにはたくさんあるかもしれませんが、チャンスは飛び込まないことには手に入れられません。当たり前ですが「ただ言われたことをやる人」よりも「常に思考や目標をアップデートし続ける人」と一緒に支え合いながら、時には競いながらクリエイターとして成長をしていきたいです。何もわからない、何もできないのは当然のことです。わからないまま、何もしないまま、ではなくて、1秒後、1時間後、1日後、1か月後、1年後の自分がどう「変化」し「進化」していけるかを常にアップデートし続ける姿勢が求められる環境です。泥臭く、アグレッシブに、閃きと体験を大事にしながら一緒に頑張れる後輩をお待ちしています。
渡部将伍
2020年、TBSスパークルへキャリア採用。『あさチャン!』『Nスタ』のディレクターとして遊軍記者、番組演出、調査報道などの経験を積む。また、レギュラー番組の傍ら、報道特別番組「報道の日2022」にも参加。現在は報道局政治部で、官邸クラブ・デジタル庁を担当している。
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