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TBSラジオ初の「フェムテック/フェムケアWEEK」を企画、長田ゆきえの挑戦
TBSラジオは、2023年10月9日から一週間、「フェムテック/フェムケアWEEK」を開催します。期間中、女性の生理や妊活、不妊治療、妊娠・出産・産後ケア、婦人科系疾患や更年期症状など、女性特有の体調の変化について、Podcastを含めたTBSラジオのいろいろな番組で取り上げます。
この企画を立ち上げたのは、TBSラジオの長田ゆきえさん。自身も不妊治療を経験し、双子の母である長田さんが、企画意図や自身のキャリアについて語ります。
生理中の体調不良や不妊治療…ラジオを通して女性特有の健康課題を知る
フェムテック/フェムケアWEEKの企画意図を教えてください。
長田 女性特有の健康課題に関わる話は男性からの理解を深めるためにされがちですが、女性でもわからないことが多いと思うんです。例えば、数年前にあるパーソナリティから「生理中はどうしてもラジオで噛みやすくなっちゃうんだよね」と言われ、すごく驚いたことがあります。というのも、私自身は女性ホルモンによっての体調の変化をあまり感じないので、理解できなかったんです。でも、後日、別の人も同じ話をしていて、本当にあるんだと知りました。
その後、自分が担当してる番組で生理の企画をしたときに、女性リスナーからものすごい量のメッセージが届いたんです。「こんな症状で悩んでます」とか、自分がわからないだけで、重たい症状で悩んでいる人がたくさんいると知り、企画した自分が一番驚きました。
それと、一昨年、自分も不妊治療を経て双子を出産して、もっと多くの人が不妊治療を選択肢に入れられたらいいのにと思いました。不妊治療は特別な人がするものだと思うかもしれないけど、近年は11人に1人は体外受精で生まれた赤ちゃんだというデータもあります。不妊治療を身近に感じてもらうために、ラジオで発信することは大事だと思ったので、今回初めて局をあげてキャンペーンを行うことになりました。
TBSラジオはジェーン・スーさんやフォーリンラブのバービーさんなど発信力のある女性パーソナリティが多く、普段から生理や更年期、妊活の話などは出ているので、親和性が高い企画だと思っています。
ご自身の経験に基づいているんですね。
長田 そうです。そもそも私が不妊治療をしようと思ったのは、バービーさんの番組を担当するようになったことがきっかけでした。それまで私は出産したら仕事の最前線から降りるようなイメージがあったので、仕事を続けるために出産は諦めようと極端な考え方をしていました。でも頭の片隅にはこれでいいのかなという思いもあり、40代に差し掛かったとき、バービーさんの話を聞いてはっとしたんです。「仕事も大好きだけど、その上で、もしよかったら子どももほしいというスタンスなんです。子どもは自分の意思ではどうにもできないけど、私は諦めたくなくて、全てがほしい。女性もそう言っていい時代ですよね」という内容の話をしていて、今の時代は二択じゃない、もっといろいろやっていいんだと気付かされました。
その後、バービーさんの相方のハジメさんや、高畑百合子アナウンサーが番組で不妊治療の話をしてくださったこともあり、一気に身近に捉えられるようになりました。
いろいろなきっかけが重なっていますが、最初はバービーさんの言葉に感化されたと。
長田 バービーさんは人を先導しようとしているのではなく、自然に話しているだけですが、ふとしたときに刺さる言葉が多いんです。番組を担当するようになってから、私自身、人生の選択肢が広がった気がします。ラジオで発信を続けることで、誰かにとって何かのきっかけになってほしいですね。
2020年の冬頃から『週末ノオト』を担当するようになり、今は『バービーとおしんり研究所』として引き続きパーソナリティを務めていただいています。そのご縁もあって、今回のフェムテック/フェムケアWEEKの特番でも、バービーさんにパーソナリティを担当してもらいます。
一昨年、双子を出産。自身の経験を基にPodcastの企画も
長田さんは、Podcast番組『ベビーのいる生活 ~迷える子育て応援Podcast~』を立ち上げられました。これは育休中に企画されたそうですね。
長田 そうですね。私は産後一週間くらい入院していましたが、退院してからどう育てたらいいのか全然わからなかったんです。例えば、ミルクの量。病院では助産師さんが用意してくれたけど、ずっと20 mlずつ飲ませていても大きくならないし、ちゃんと成長するにはいつどうやって増やしたらいいのかわからない。子育ては誰かがちゃんと教えてくれるものだと思ってたのに、こんな状態で親として世に放たれてしまうんだと驚きました。
そんなとき、自分が住んでる自治体で「双子の会」という集まりがあるのを知りました。そこでは子どもを預かってくれて、双子を持つ親が3~4組集まって質問したり情報交換できたりするので、参考になるし、リフレッシュにもなって本当に助けられたんです。ラジオでもこういう取り組みができたらいいなと思い、今年7月に番組をスタートしました。早速、「聴いて孤独感がやわらいだ」という嬉しい感想もいただいています。
子育て中の親御さんによる匿名座談会の番組は、今までなかったですよね。どうやって収録してるんですか?
長田 外に出たいけど子どもがいるから出られないという人も多いので、スタジオにお子さんを連れてきてもらって私やスタッフが面倒を見たり、子どもを自宅に置いて来るならシッターさんの費用をこちらから出したりと、親御さんが気兼ねなく来られるような環境を作って毎週収録しています。
リスナーからはどんな反響がありますか?
長田 メールやInstagramのDMでメッセージを受け付けていて、悩みを送ってくれたり、「座談会に行ってみたいです」という応募があったりします。
例えば、「今取り上げているのは働くお母さんの話が多いので、専業主婦の大変さを取り上げてくれませんか」という意見があったのは盲点でした。自分は専業主婦は未経験なので、考えが及ばなくて。たしかに、専業主婦を取り上げるメディアは少ないので、「働くママはもちろんすごいけど、専業主婦のママも頑張っているのに楽そうに見えたり、働くママさんとの会話に入れなかったり、働いてない私は駄目人間だと考えてしまう」と悩まれているようです。だから、今後は専業主婦の方を集めて収録する予定です。こうやって同じような境遇の人同士で悩みを共有することで、ストレスを発散していただいたり、リスナーにとっては育児の参考になったらいいなと思います。
上京して初めて聴いた『JUNK』にハマり、中途採用でTBSラジオへ
ところで、長田さんはなぜTBSラジオに入ろうと思ったんですか?
長田 そもそも、ラジオが大好きだったんですよね。自分が住んでた地域はTBSラジオが流れていなくて、学生の頃は『オールナイトニッポン』ばかり聴いていましたが、大学で上京して『JUNK』を聴いたらすごくおもしろくて、録音して家で何度も聴くほど夢中でした。新卒の頃もTBSラジオを受けましたが、当時は採用されず、地元のラジオ局に就職しました。
でも、ラジオの中でもTBSラジオは憧れの存在でした。当時からPodcastをやっていて、地方でも聴いてた人は多いと思います。
TBSラジオのどんなところに魅力を感じていましたか?
長田 TBSラジオがすごいと思ったのは、雨傘番組(スポーツ中継番組などが放送が中止された場合、代わりに放送される代替番組)で「全国ネットで広島カープを応援します」や「宮本慎也男祭り」といったすごく攻めた企画をやっていたことです。雨傘番組は急に空いた放送枠なので、局によっては手間をかけずにできる番組を流しがちですが、TBSラジオはそこまで攻めた企画をやる必要がないと思われるような枠でもこんなに攻めたことをやるんだと驚きました。それは、みんなそれぞれやりたい企画がたくさんあるから、穴埋めという考えではなくて「やっと時間が空いたからやりたい!」とすごく活気があるんだろうなと想像ができて、憧れていましたね。その後、秋採用でTBSラジオを受けて、入社に至ります。
実際に入ってみてどうでしたか?
長田 地方局とは全然違いました。例えば、おもしろい本を見つけたとしても、地方局だとその作者をゲストに呼ぶという考えにはならないんですよ。遠くからゲストを呼ぶことは金銭的にもできないので、その地域で活動している人を中心に番組を作ったり、アーティストがその地域に来た時にゲストを呼んだりするくらいでしたが、東京だと全部がゲスト候補になるし、何でもテーマの候補になる。アンテナの立て方が全然違っていて、世の中の動きにすごくビビットに繋がるんですよね。だから転職当初は周りについていけなくて、ダメかも知れないと思っていた時期もありました。
新卒で入りたかったTBSラジオに、見事中途採用された長田さん。最後に、TBSラジオをはじめ、ラジオ業界を目指す若者に向けてアドバイスをお願いします。
長田 私が新卒のときは、ただ「『JUNK』が好きです!やりたいです」しか言えませんでしたが、みんな好きでやりたいという思いは同じなので、そこから一歩踏み込んで、なぜこれが好きで、どんなところが良いのか、分析することが大事です。例えば、『JUNK』は既にあるので、『JUNK』のおもしろい部分を抽出して、別の形もできるんじゃないかとか、深く考えられる人は強いと思います。
TBSラジオは自分の興味があることを形にしたいと思ったら、最短距離でやらせてもらえる環境なので、ぜひチャレンジしてください。
長田ゆきえ
2005年から地方のラジオ局で野球中継ディレクター。2009年にTBSラジオ入社。2009年~2016年『荒川強啓デイ・キャッチ!』ディレクター・プロデューサー。選挙特番や震災特番を担当したほか、『東京ポッド許可局(2013年~)』や学生向け番組『TALK ABOUT(2019年~)』を立ち上げるなど、主に番組制作を担当してきた。
現在は、TBSラジオの番組全体の営業企画などを考えながら、『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』『バービーとおしんり研究所』『ベビーのいる生活~迷える子育て応援Podcast~』のプロデューサー業務も担当。
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