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日本で初めてバルサキャンプを企画!ASLJ浜田社長に聞く、TBSの教育事業の未来

TBSは2022年10月に学びNEXT事業部を新設。その取り組みの一つとして、2022年12月に関連会社となった株式会社Amazing Sports Lab Japan(以下ASLJ)とともにスポーツ教育事業を拡充していくと発表しています。

3月8日にTBSのグループ内大学「TBSグループユニバーシティ」で開催された学びNEXT事業部主催セミナーには、ASLJの浜田満社長が登場。今後、TBSグループとしてどのように教育事業にコミットしていくか、サッカーの話題や教育論なども含めて語りました。また、最後にTBSホールディングスから出向している宇野取締役もコメントを出しています。(聞き手:蓮見孝之アナウンサー)

クラブ運営やスクール、キャンプ…11の多様な事業を展開

ASLJはどんな会社ですか?

浜田 子どもたちに常に最良のものを提供していき、最大限の力を発揮し続けられるような施策を事業として取り組んでいる会社です。僕自身、サッカーをやっていて、たまたま2004年に会社を作ることになりました。クラブ運営やスクール、キャンプなど11部門の事業サービスを展開しています。

そのうちの一つにバルサアカデミーキャンプがあります。これを立ち上げたきっかけは何ですか?

浜田 2005年にバルセロナのソシオの受付代理店を担当し、その交渉でバルセロナに行って、現地のスクール部門を紹介してもらいました。そこで見た指導の仕方や雰囲気を見て、日本でも作りたいと思ったのがきっかけです。2007年に日本で初めてバルサアカデミーキャンプを企画しました。

バルサキャンプの様子

バルサアカデミーキャンプの立ち上げ当時、日本のサッカー事情などを含めて、どんな状況でしたか?

浜田 今でこそ欧州のサッカースクールは当たり前のようにありますが、当時の日本では存在していませんでした。FCバルセロナのサッカースクールでさえ、現地でできたのが2003年頃なんです。

そんな中、バルサキャンプは4日間で15万円ぐらいかかるうえ、宿泊もある。海外のコーチが来日して、直接指導するというような今までに全く例のないサッカー指導のイベントだったので、画期的でしたね。

バルサキャンプの様子

過去のバルサキャンプには幼少期の久保建英選手も参加

ASLJはサッカー日本代表であり、スペインリーグの中のレアル・ソシエダで活躍中の久保建英選手の支援をされてきました。久保選手との出会いはいつでしたか?

浜田 彼が小学2年生の夏休みですね。バルセロナキャンプを始めた3年目に彼が来ました。彼のお父さんによると、久保選手が5~6歳の頃、「俺、バルサに入りたい」と言い出したそうです。そこからお父さんがバルサに入る方法を探し、当時バルサと繋がっている日本で唯一のイベントがバルサキャンプでした。

スクールのプロジェクトに参加し、そこでMVPを獲得すると、次のチャンスが掴めるんですよね。

浜田 当時はMVPに選ばれればバルセロナに招待され、バルセロナスクール選抜の一員として大会に行けるという特典がありました。久保選手はベルギーの大会で活躍し、そこでもMVPに選ばれ、その情報がバルセロナのカンテラの方に届いたそうです。でも入団テストを受けられなかったので、僕らも協力してテストを受ける機会がほしいと直談判したという経緯があります。

バルサキャンプの様子

当時の久保選手は他の選手とどう違いましたか?

浜田 小学2年生ですでに5年生ぐらいの技術と戦術眼を持っていて、別格でしたね。わからないことはすぐに質問するし、コーチの指摘も自分が違うと思ったら主張するような子でした。そこは言語能力の高さがポイントで、図書館で借りた本が1日でなくなってしまうくらい、読み聞かせを何十冊もやっていたそうです。

久保選手は当時、お父さんと「バルサに入る」とゴール設定し、何をすればいいか親子で決めて努力されてきました。ただ、親の考えとお子さん自身が正しいと思ってやっていることが一致するとは限らない。その見極めが難しいと思います。

浜田 親が決めて押し付けないことですよね。正しい努力をできるかどうかは、子どもが楽しんでいるかどうかが一番重要だと思います。親がいろいろなことを調べて選択肢を与えるのはいいけど、子どもがやりたいと言わない限り、絶対にやらないことがポイントですね。本当にやりたいならコミットが必要で、そこに努力できるか確認し、親も向き合うのがすごく大切かなと思います。

ASLJ浜田満社長

TBSとはサッカー以外のスポーツの事業展開を目指す

ここまで大変なことも多々あったと思いますが、事業で結果を出せたポイントはどう考えていますか?

浜田 僕はサッカーの指導はボランティアが当たり前の時代に仕事として始めましたが、無償では会社として存続できないので、ちゃんと回るような価格設定にしました。少し割高な金額に見えるかもしれませんが、求めている人たちはたくさんいるんですよ。結局、価格と内容が見合ってなかったら淘汰されるだけなので、最初にお金の面をしっかり見極めたのがよかったのかなと思います。

あと、僕がずっとやってきたポイントは、要望に応えることです。例えば、「スペインでサッカーをやりたいんですけど何とかなりませんか?」と言われたから海外留学部門を作りましたし、一人からの要望があるなら、その人以外にも同じ要望をお持ちの方がたくさんいらっしゃるはずなので、そこに向けて商品を作ることですね。そうすると要望を出した人たちはビジネスの形になるのを手伝ってくれる。もしくは応援してくれます。それを続けてきたから11部門になった。僕らの事業はほとんどリクエストベースです。

今後、TBSグループとして教育事業にコミットしていくなら、どのように進めていけるでしょうか?

浜田 まずはTBS社内のお子さんを抱えてる方々を集めて座談会を開いていただき、親目線でどんな要望があるかを聞きます。例えばうちの奥さんもそうですけど、送迎の問題がまずあります。送迎できないから行きたいところに行けないんですよ。じゃあそれをどうするか、その視点で1個の事業を考えてみる。一つの不満は一つのビジネスの種なので、一つずつ考えてみることが大切かなと思います。できるものはやってみて、できないものは削る。その繰り返しだと思います。

例えば小学校は6年間、中学校高校合わせて6年間、5~6年経つと次のステージに行ってしまいます。そうすると、座談会をもとに作ったビジネスがすでに必要なくなってしまう可能性があります。その点はいかがでしょうか?

浜田 僕らも山梨に初めてアカデミーを設立した時には「浜田さんもっと前に作ってくれればよかったのに」と何度も言われましたよ。ですから、とにかくまず始めることが重要だと考えています。そして、始めるといろいろな問題が起きるので、それの改善を繰り返すのが大切だと思います。

TBSとASLJの今後の展開はどう考えていますか?

浜田 TBSさんと一緒に取り組みたいのは、サッカー以外のスポーツに関する事業です。特に幼少期は運動能力の開発に注力しないと、どのスポーツにおいてもトップアスリートになりにくい。まだまだ競合も少なく、広げられる領域なので、しっかりやっていきたいですね。

宇野 スポーツビジネスはあらゆる産業とコラボできる、非常に拡張性の高い事業なので、とてもおもしろいと思っています。メディアとスポーツはもともと親和性の高い関係ですが、「既に存在する試合や選手・チームを伝える」のではなく、「試合や選手・チームそのものを創り出していく」のがAmazing Sports Lab Japanの仕事ですから、メディアとはまた違った種類の「創造性」が求められるのだと思います。サッカーという「地球規模のコンテンツ」を軸に、それをタテ・ヨコ・ナナメ、どう拡張させていくか。そして、メディア企業のTBSとどんな化学反応を起こせるか、これからがとても楽しみです。

蓮見孝之アナウンサー、ASLJ浜田満社長

株式会社Amazing Sports Lab Japan
代表取締役社長 浜田 満
株式会社Amazing Sports Lab Japan代表取締役。関西外国語大学スペイン語学科卒業。スペイン語、イタリア語、英語の三か国語が話せ、FCバルセロナ、ACミラン、アーセナルFC、ユヴェントスFCなどの欧州ビッグクラブのライセンスビジネスやマーケティングに携わる。現在は、FCバルセロナキャンプ、FCバルセロナスクール、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジのプロデュース、コンサルティングなどを行っている。

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