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ドラマのPR手法をマンガに取り入れてみた!TBS×マンガボックス『私がヒモを飼うなんて』で挑戦した作品の広め方

TBSとマンガボックスが共同制作している『私がヒモを飼うなんて』(以下:わたヒモ)のドラマ放送が本日深夜スタートします。作中に登場するランジェリーは、渋谷PARCOに店舗を構えるランジェリーブランド「アルバージェ ランジェリー」がデザイン・監修を担当。他にも実在するブランドやメーカーの商品が多数登場するなど、マンガとしては非常に珍しい、企業とのコラボ企画が注目を集めています。

企画したのはTBSドラマプロデューサーの飯田和孝。経緯や狙いについて、マンガボックス編集部の松井芙実香、「アルバージェ ランジェリー」のブランドプロデューサー織田愛美さんとともにお話を伺いました。

TBS×マンガボックスならではのスピード感のあるタイアップが実現

そもそも主人公がランジェリーデザイナーを目指す設定にしたのはなぜですか?

飯田 キャラクターの内面を描けるものを探していたときに、脚本家の本山久美子さんからランジェリーを提案されたのがきっかけです。描写的な引きも強いだろうし、ランジェリーデザイナーならではのストーリーが生まれるんじゃないかと思いました。

アルバージェ ランジェリーとはどうやって出会ったんですか?

飯田 お仕事ドラマを作るときには必ず監修が入るので、今回もその感覚で探していたときに知人のスタイリストさんに「アルバージェ ランジェリー」のデザイナーである高崎聖渚さんを紹介してもらいました。

ブランドのコンセプトがとても素敵で、『わたヒモ』の世界観を作るにあたって必要なのはこれだ、と。高崎さんはフランスに留学していたと聞いて、作中に登場する百合さんというランジェリーデザイナーのキャラクターを描くヒントが得られると思いました。

松井 マンガでも監修の方に入っていただくことはありますが、決定までのスピード感が全然違いましたね。漫画家さんはランジェリーデザインのプロではないので、世界観と説得力を持たせるためにデザイナーさんを入れてほしい、と飯田さんに頼んだら、すぐにアルバージェさんを探してきてくださったんです。TBSが今まで積み上げてきた実績と信頼があるからこそ、実現できたことだなと思います。

飯田 これはTBSとマンガボックスが組んだ強みの一つでもあると思います。

飯田和孝
TBSドラマプロデューサー・飯田和孝

作中のランジェリーは全てオリジナルデザイン

作中のランジェリーは全てアルバージェさんが手がけられたのですか?

織田 そうです。普段、「アルバージェ ランジェリー」の商品として実際に発売するためにデザインするといろいろな制約が出てきますが、今回は『わたヒモ』に登場するブランド「アン・リス」としてのコンセプトやストーリー展開に合わせてデザインしたので、自由度が高くておもしろかったと、デザイナー高崎も話していました。

飯田 作中のランジェリーには必ずコンセプトがあるんですよ。例えば「フィエルテ(誇り)」「ノワール(黒)」とか。原作のシナリオを制作する中で生まれたこれらのコンセプトを、高崎さんがストーリーやキャラクターの感情を汲みながらデザインしてくださり、さらにそれを漫画家の美園さんがマンガの絵に落とし込む…。こういった緻密で大変な作業を経て生まれたランジェリーが『わたヒモ』を彩ってくれています。
 

アルバージェ ランジェリー高崎さんによるランジェリーのデザイン画「フィエルテ(誇り)」と、作中の登場シーン
アルバージェ ランジェリー高崎さんによるランジェリーのデザイン画「フィエルテ(誇り)」と、作中の登場シーン

ドラマではこのランジェリーを着用するシーンがあるんですよね。

飯田 一話にあります。主人公は「アン・リス」のランジェリーに出会って変わっていくので、ドラマ化する上で必須のシーンでした。下着姿=セクシーなもの、というイメージがあるかもしれませんが、普段みんな身につけているものだし、海外では下着と外着の境界線が日本ほど明確ではない。その価値観の違いや、そこから派生される男女差別の問題もドラマを通して伝えられたらいいなと思いました。

ドラマ用にランジェリーを製作されるのは今回が初めてですか?

織田 初めてです。ドラマだと出演者さんが身に着けるので、カップ部分の露出具合に気を使いました。井桁さんのお体に合うように作っているので撮影が終わったらもらっていただきたいくらい(笑)。コンセプトや着用する方を詳しく決められた状態でデザインしたことはなかったので、私も、デザイナーの高崎もすごく良い経験になりました。

飯田 僕が今まで携わってきたテレビドラマでは、スーツなどの衣装を出演者さんに合ったサイズで仕立てることはありますが、今回のようにデザインを1から作ってもらったのは初めてですね。とても新鮮で、贅沢な企画だと思います(笑)。

「アルバージェ ランジェリー」ブランドプロデューサー織田愛美氏
「アルバージェ ランジェリー」ブランドプロデューサー織田愛美氏

作中には実在するブランドやメーカーの商品も多数登場

ランジェリー以外にも実際の商品が登場するんですよね。

飯田 COACHやラルフローレンなどのブランドや、アデランスのドライヤー、LOVOTなど実際の商品が登場します。各社にプロモーションしていただいて、商品をきっかけにマンガやドラマを見てもらえるような相乗効果を期待しています。

実際の商品をマンガに登場させるのは珍しいことですか?

飯田 ドラマだと割と普通ですが、マンガではあまり例がないということは今回初めて知りました。漫画家さんはきっと苦労されていますよね。映像や写真だと現物をそのまま撮影すればいいですが、マンガではブランドの商品を絵に描いていただくわけじゃないですか。

松井 通常の作品だと、権利の問題で実在の商品を登場させることは難しいんですよね。ブランドの方には、あくまで“絵”であることは事前にご了承いただいているとはいえ、やはり漫画家さんは「正確に描かなくては」という負担を感じられるかと思います。マンガという形で商品をクオリティ高く表現してくださった美園さんには本当に頭が下がります…。
前例がほとんどないだけに、実際どこまで効果があるかはドラマが始まらないとわかりませんが、こうやって作品を広げようと新たなアイデアを提案してくださる方とお仕事できるのはすごくありがたいですね。

飯田 『わたヒモ』は現状電子書店のみの取り扱いなので、街の本屋さんの店頭に並ぶこともありません。不意に目にするチャンスがあまりないからこそ、少しでもタッチポイントを作りたくて。これをやってマイナスになることはないので、とにかく作品を広めるためにできることは全部やろうとしています。

松井芙実香
マンガボックス編集部・松井芙実香

リアルなアイテムのおかげでコンテンツがより楽しめるようになる

最後に作品の見どころを教えてください。

織田 ランジェリーに関しては、マンガではデザイン画に近いものが見られ、ドラマでは実物として縫い上がるとどうなるのか、その違いが見えておもしろいと思います。

脚本の監修もさせていただいたので、ランジェリーを作る人たちのリアルな思いを感じられるはずです。現場の皆さんはものづくりに対してすごくリスペクトを持っていらして、もしかしたらストーリーの展開に関わってしまうようなシーンだとしても、セリフの修正などの希望もすぐに受け入れてくれたのが印象的でした。

下着は消耗品という扱いをされることも多いですが、良い下着を着けたときの高揚感や自己肯定感の高まりは、女性の社会的な自立にも繋がっていくのかなと考えていて、この作品に触れていただくことで下着に対する意識が少し変わるんじゃないかと思います。

飯田 『わたヒモ』のキャラクターはみんな何かしらを抱えているのですが、今回ご協力いただいた「アルバージェ ランジェリー」さんのコンセプトがこの作品に一本芯を通しているので、見ていて前向きになれるようなストーリーになっています。そこを含めて、ドラマに出てくるランジェリーはもちろん、その他のアイテムにもぜひ注目していただきたいです。

かつて僕らがテレビドラマに憧れを抱いたように、「ドラマに出てくるものってかっこいい」という視点でも見ていただけるのではないかと思います。そこからマンガへ立ち返っていただけると、また新しい発見があるかもしれません。

松井 マンガを読んでいただくとわかるのですが、ランジェリーの繊細なレースだったりオフィスの間取りだったり『わたヒモ』の世界観を表現するためのこだわりが詰まっています。
ドラマもマンガも、それぞれのプロの仕事を楽しんでほしいですね。ちなみに『わたヒモ』単行本の巻末では、作品のために描き下ろしていただいたランジェリーのデザイン資料を紹介しているので、こちらもぜひご覧になってください。

左から飯田和孝、松井芙実香、

■『私がヒモを飼うなんて』
https://www.mangabox.me/reader/188533/episodes/

単行本1~5巻 各電子書店にて好評発売中。
 

飯田和孝
TBSテレビ・制作局ドラマ制作部所属のテレビドラマのプロデューサー。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、2005年入社。TBSでは『義母と娘のブルース』、『ドラゴン桜(2021)』)、『マイファミリー』などのドラマプロデュースに携わり、マンガ『私がヒモを飼うなんて』では原作制作、ドラマ版でも企画・プロデュースを担当。また、この夏放送の日曜劇場『VIVANT』のプロデュースを担当する。

松井芙実香
マンガボックス編集部の編集者。大学卒業後はファッション、カルチャー系の雑誌やwebメディアの編集・ライター業に従事し、2017年よりマンガ編集に転向。『私がヒモを飼うなんて』の他『あおのたつき』、『婚約者が浮気しているようなんですが私は流行りの悪役令嬢ってことであってますか?』、『にぶんのいち夫婦』など、幅広いジャンルの作品を担当する。

織田愛美
2015年「株式会社XY」を設立。翌年、プロデューサーとしてデザイナーと共にランジェリーブランド「Albâge Lingerie」を起ち上げ、『ワタシの戦友ランジェリー』というコンセプトのもと現代女性が抱える特有の社会課題やその解決方法をブランド哲学や商品を通して発信している。また個人活動として、フェムテックや性に関するPodcast番組「ハダカベヤ」をタレントのIMALUと共に企画・出演するなど幅広く活動してる。

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