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ドラマプロデューサーがマンガ作りに初挑戦!TBS×マンガボックスのオリジナルIP「私がヒモを飼うなんて」の全貌が明らかに

TBSはグループ会社のマンガボックスと協業し、オリジナルIPとなるマンガ「私がヒモを飼うなんて」(以下:わたヒモ)を制作。そのドラマ化が決定し、3月28日から放送されます。マンガ原作をドラマ化するのはよくある話ですが、テレビ業界とマンガ業界がタッグを組んで原作作りを手掛けるのはチャレンジングな取り組みです。

この企画を仕掛けたのは、TBSドラマプロデューサーの飯田和孝。どんな意図があり、何を狙っているのか。そもそもの“テレビ局×マンガ制作”のタッグの狙いを含めて、マンガボックス社長・安江亮太、副社長・十二竜也とともにお話を伺いました。


お互いの課題がマッチし、協業することに

DeNAの1事業として始まったマンガボックスが、TBSと協業した経緯は?

安江 DeNAはプラットフォーム作りが上手な会社ですが、コンテンツに関しては、それを得意とする企業と協業するケースが多くありました。マンガというビジネスを深く見つめるうちに、コンテンツ投資を強化しないとマンガビジネスとしての発展は限定的になると思い、自分たちと一緒にコンテンツを作って広められるマルチメディア展開が得意なパートナーを探していました。

TBSさんとしてはVISION2030に向けたEDGE戦略踏まえ、IP開発力を強めたいという意図があり、僕らがDeNAからカーブアウト(※親会社が戦略的に小会社や自社の事業の一部を切り出し(carve out)、新会社として独立させること)を検討しているタイミングが合致して、共に協業の道を選ぶこととなりました。

十二 僕はこの立場になる前、TBSから社外取締役として一年間関わっていたので、マンガボックスが考えていることは大体わかっていました。ただ、これまではTBSとして番組作りに関わってきて、原作などを「使わせてください」と頼んでいたのが、こちらから「これ使ってみない?」と提案する側になったので、非常におもしろいと感じましたね。 

飯田さんはマンガボックスとの協業を聞いてどう思いましたか?

飯田 僕は原作があるドラマを作るとき、出版社に使用許可をとる流れや、原作使用料などの交渉にいつもジレンマを感じていました。でも、協業によってドラマとマンガの両方に関わることができるようになったので、非常に有意義だと思いました。

左から株式会社マンガボックス安江、十二

 

「わたヒモ」ドラマ化が決まるまで

「わたヒモ」の企画が採用された経緯は?

飯田 原作漫画を製作するための企画募集がマンガボックスさんからありまして、そこで出した企画の一つが「わたヒモ」です。元々ドラマ企画として提出しようと思っていたものを、マンガ用に少し形を変えて提案しました。

安江 企画は20個強集まったのですが、「わたヒモ」は企画書の時点でキャラクターの設定がすごくわかりやすかったし、作品の扱うテーマも電子出版業界で売れ線のラインに乗っていた。あとは映像になりそう、という3拍子揃ったのが採用の決め手でしたね。

十二 それでドラマストリーム枠ができるときにドラマ化を提案しました。「わたヒモ」は映像化に向いているという話はずっとあったので、割と早めに決まりましたね。
 

TBSテレビ飯田

 

 

協業の魅力はマンガとドラマで二度美味しくなること

実際に協業して感じたメリットとデメリットは?

安江 マンガはマンガだけではなく、アニメやドラマ、映画など映像化とセットで展開した方がいいというのはいろいろな事例からわかっていたので、映像化できるのは大きなメリットだと思います。

飯田 テレビは視聴率1%で約100万人が見ていることになるので、例えば興行収入数十億の大ヒット映画よりも、高視聴率と言われる連続ドラマの方が、より多くの人に見られた計算になります。TBSのドラマには、あの「鬼滅の刃」よりも多くの人に見られたと言える作品が沢山あります。つまり、「テレビは見られなくなってきた」と言われていますが、地上波ドラマの力はプロモーションとして大きい。なので、マンガを作ったその先にドラマ化があったらいいなとは思ってました。

ただ、当時はドラマストリームがなかったので、ドラマ化するなら火曜ドラマ(火曜午後10時)かなと考えたんです。となると「子どもが見るかもしれないからエロティックな表現は避けよう」とか、自分で勝手にストッパーをかけてしまっていたのが、強いて言えばデメリットかなと思いますね。マンガとドラマを切り離して考えればよかったんですけど。

十二 そういった経験がTBSのプロデューサーの皆さんの中に貯まっていくのも一つのメリットですよね。仮に今後、火曜ドラマで映像化することになったとして、マンガではちょっと踏み込んだ描写をしておいて、ドラマ化するときにどうするかを考えた方が、マンガとしても強い企画になるし。今の視聴者さんは読解力が高いから、マンガとドラマで内容や表現の仕方が変わっててもわかってくれると思います。

飯田 そういう意味では「わたヒモ」は二度美味しい感じになると思います。

左から株式会社マンガボックス十二、TBSテレビ飯田

 

映像化の形態が増えたら、業界全体の底上げにつながるはず

映像業界、マンガ業界、それぞれどんな反応をされたいですか?

飯田 「TBSのやり方いいね」って言われたら成功だと思います。海外に目を向けると、例えばウェブトゥーン(韓国発のデジタルコミック)の作者は、ドラマ化の際、ドラマならではのストーリーになってもあまり口出ししないので、すぐにドラマ化されるそうです。でも日本は原作者の意を汲みながらやっていくので、映像化のスピード感や自由度はどうしても韓国より下がってしまう。だから、僕らみたいなやり方が増えてもいいんじゃないかと思います。映像化の形態が多様化されたらより競争し合えるし、エンターテインメントとして全体で良くなっていくはずです。もし話題にすらならなかったら、笑ってください・・・

十二 全体の構造は間違いなく新しい試みですが、最終的にはコンテンツがおもしろいかどうかで評価される世界でもあるので、それはそれでまた別の指標が必要かなとは思います。

安江 メリットがあると思うなら他局も取り入れるかもしれませんが、連結としてグループになっていないと中々難しいですよ。例えば、世の中に情報が解禁される以前に各種一次情報に触れられるかどうかは、マイナー出資を受けている状況か、同じグループ内にしっかり入っているかでは違うと思います。

株式会社マンガボックス安江

 

ドラマ放送後、どんな反応を期待していますか?

飯田 まずはドラマとして純粋に楽しんでいただいて、それをきっかけにマンガの読者も増えてほしいです。「ドラマを見たからマンガは読まなくていいや」とはならないような、マンガとは全く違うドラマの作りになっているので。

十二 TBS以外とも協業させていただいてますが、映像作品の中で原作を大々的に取り上げてくださるところって実はあまりないんです。でも今回の企画はTBSとマンガボックスで始めた企画なので、それによるPR効果に期待しています。ね、飯田さん!(笑)

飯田 視聴率だけではなく、配信の回転数やマンガの売上なども数字として出てくるのがすごく楽しみです。普段、原作もののドラマにかかわるときは、最初の謳い文句としてそれまでに「累計何万部」と出すことはありますが、放送後にどのくらい売れたのかはそんなに気にしないですから。放送後の反応を見ながら今後の展望を考えていきたいです。
 

左から株式会社マンガボックス安江、十二、TBSテレビ飯田

 

■ドラマストリーム|TBSテレビ

https://www.tbs.co.jp/drama_stream_tbs/

■マンガ「私がヒモを飼うなんて」

https://www.mangabox.me/reader/188533/episodes/

■マンガボックス

https://www.mangabox.me/

飯田和孝 プロフィール
TBSテレビ・制作局ドラマ制作部所属のテレビドラマのプロデューサー。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、2005年入社。TBSでは『義母と娘のブルース』、『ドラゴン桜(2021)』)、『マイファミリー』などのドラマプロデュースに携わり、マンガ『私がヒモを飼うなんて』では原作制作、ドラマ版でも企画・プロデュースを担当。また、この夏放送の日曜劇場『VIVANT』のプロデュースを担当する。

 

安江亮太 プロフィール
株式会社マンガボックス社長。2011年DeNAに新卒入社。DeNAでは韓国やアメリカでマーケティング組織の立ち上げを手がけたのち、『マンガボックス』、『エブリスタ』の二事業を管掌。その後、マンガボックスを会社化させ、現在代表取締役社長に。
 

十二竜也 プロフィール
1989年にTBSに入社。バラエティのADからキャリアをスタートさせ、テレビ編成部でバラエティ・ドラマ企画や映画の買い付けなど多くのジャンルを経験したのち、ドラマ制作部長、映画・アニメ事業部長に。その後マンガボックスと出会い、現在株式会社マンガボックス副社長。

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