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誰よりも魅力的にアーティストを撮影したい…TBS『CDTV』『音楽の日』やコンサートなど音楽の現場で活躍するカメラマンが、撮影の舞台裏を語る

TBSで放送される『CDTV ライブ!ライブ!』や『音楽の日』などの音楽番組では、情熱的なライブ映像を撮影するカメラマンが欠かせません。

音楽番組を撮影するカメラマンの業務内容は、どんなものでしょうか。TBSスパークルのクリエイティブテック本部 番組制作映像部に所属し、音楽番組の撮影に携わる皆川ルナに話を聞きました。 

ロケ番組からキャリアをスタート、念願の音楽番組の担当へ

皆川さんが所属するクリエイティブテック本部 番組制作映像部とは、どんな部署ですか?

皆川 カメラマンや音声、照明を担当する技術スタッフが所属する部署です。カメラマンは約20名在籍し、『ラヴィット!』のようなバラエティ番組のほか、『Nスタ』などの報道番組、情報番組の撮影を担当しています。

部署では、TBS以外の局のロケ番組を担当することもあります。ロケは基本的に少人数で行うので、気心の知れたスタッフで円滑に進めようという目的で、指名をされることも多いです。他局の番組に携わることができるのは、弊社の大きな特徴かもしれません。

その部署で音楽番組のカメラマンを担当しているのは、皆川さんお一人だけだそうですね。

皆川 もともと他局のスタジオ番組のカメラマンを担当していたことがきっかけです。ずっと「音楽番組に携わりたい」と会社に伝えていました。たまたま周りに音楽番組を目指すカメラマンがいなかったこともあって、入社4年目頃から任せていただけるようになり、他局へ出向して働いていました。

入社後はどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

皆川 弊社の前身となる会社がロケを専門的に請け負っていたので、最初はロケ番組の音声業務に就いて流れを学びました。出演者さんにマイクを付けたり、テープやバッテリーの管理をしたり、ミキサーという集音機材とカメラをつないだりといった業務が中心でした。

カメラマンとしては、最初はロケで2~3台あるうちの3番手のカメラからキャリアをスタート。実務経験を積み、徐々にスキルを上げていきました。

その後、約1年のアシスタント期間を経て、カメラマンとしてスタジオ業務に参加できるようになりました。

ロケ番組や通常のバラエティ番組と、音楽番組ではどんな違いがありますか?

皆川 音楽番組は音に乗せて撮影しなければならないので、小節を数えながら撮影するのが特徴の一つです。スケジュール上、撮影前に曲を聞き込む時間がないときも、一度聞いて小節の数を台本に書き、それを頼りに撮っています。

また、音楽番組では出演者それぞれの「色」を汲み取って魅力的に撮ることが求められます。

TBSスパークル皆川ルナ

音に乗って映像を撮る、音楽番組における画づくりの極意

音楽番組のカメラマンの業務は、どのような流れで進行しますか?

皆川 レギュラー番組の場合、当日に台本をいただき、撮影する楽曲を聞いたり、出演者が踊っている参考映像がある場合はそれを見たりして、打ち合わせを行います。その後、曲を確認しながら撮影プランを考えてリハーサルを行います。そこでディレクターとどのように撮影するか相談して決めていきます。

番組によっては事前に音や映像の資料を共有してくれることもあります。以前はCDやDVDをいただいて事前に確認していましたが、近年は台本も含め、資料はほぼデータで共有されるので、効率的になったと感じます。

撮影プランはどのように考えているのでしょうか。

皆川 ディレクターが用意してくれる台本をもとに考えています。台本にはカット割りが指定されていますが、例えば「バストショット」と書いてあったとしても、シンプルにそのまま撮るか、少しズームインしたり、照明を入れるため角度を変えたりするべきかを検討します。最近では音ハメ(※曲や歌詞のタイミングに動きを合わせる表現手法)が流行しているので、ダンスの動きに合わせて撮影することもあります。

撮り方は人によって違うので、カメラマンそれぞれの個性が感じられて面白いです。時には「あの人はあんな風に撮るんだ。それなら撮り方を合わせてみようかな」と考えることも。最終的な方向性はディレクターやチーフカメラマンの判断になります。

リハーサルで撮った映像を見て、出演者さん側から「こちらの向きから撮ってほしい」「決めぜりふのときはこの角度から」などリクエストされることもあります。

TBSスパークル皆川ルナ

一番組につき、カメラマンは何人で担当しますか?

皆川 番組によって異なりますが、私が長年担当していたレギュラー番組は、通常6人いました。1カメ、2カメのように、担当するカメラはチーフカメラマンが割り振ります。各自決められたカット割りがあり、放送では各カメラが撮った映像を切り替えてお届けしています。

使うカメラは一人一台。重さ7~8kgの肩に担ぐタイプのほか、キャスター付きの大きいカメラやクレーンカメラなど、番組によって使用するカメラはさまざまです。

現場では、どんな風に撮影するのでしょうか。

皆川 台本のカット割りに合わせて撮影します。自分のカットが終わったら後ろに下がったり、走って次のポジションまで移動したりするのですが、キャスター付きのカメラは、動かすのにコツが必要で、慣れるまでは苦労しました。

また、複数のカメラマンがそれぞれのポジションへ移動するので、映っていないところでぶつかってしまうことも。ですから台本の段階で動きを相談して、ほかのカメラマンやスタッフと一緒に、集中して業務に取り組んでいます。

ちなみに、私は頭の中で歌いながら撮影することが多いです(笑)。

収録番組と生放送番組では、どんな違いがありますか?

皆川 若手の頃、収録番組でどの小節を撮っているのかわからなくなってしまって、気付いたら自分が撮らなければならないカットを飛ばしてしまったことがありました。

撮り直しになると、出演者さんや他のスタッフに迷惑をかけてしまいます。私の1カットのためだけに何十人ものスケジュールが変わってしまって、とても申し訳ない気持ちになりました。

一方で、生放送はもちろん撮り直しができません。どちらも同じくらい緊張感を持って臨んでいます。

『音楽の日』のような特別番組はいかがでしたか?

皆川 『音楽の日』に携わった際は、長時間の生放送番組のため、事前に数日間のリハーサルを続けてから本番に臨みました。

特に、ダンス企画で長いメドレーを撮影したときは苦労しました。ダンスは振りに合わせてカメラワークを考えるので、踊りを覚える必要がありますし、当日はスタジオに出演者さんが大勢いらっしゃったので普段よりも気を遣いました。一歩間違えたらカメラを持ったままぶつかって事故が起きてしまうので、アシスタントさんも含めて念入りに動線などのリハーサルを行いました。

TBSスパークル皆川ルナ

『CDTV』を通して身についた、遊び心のある撮り方

これまでのキャリアで転機になったことを教えてください。

皆川 入社から10年を過ぎた頃、『CDTV ライブ!ライブ!』を担当するようになったことです。当時は出向から戻ってきたタイミングで、ある程度、音楽番組を経験していましたが、バラエティ番組の多いTBSは音楽番組にも遊び心があると感じました。

年越しのスペシャルは大晦日から元旦にかけて毎年5時間ほど生放送を行いますが、現場のお祭り感に圧倒されました。出演者さんの中には『NHK紅白歌合戦』のステージを終えてから駆けつける方もいらっしゃいます。

出演者さんもカメラマンも、本番ではリハーサルと全く異なる動きをすることがありますが、ディレクターが「いいねえ」と言って、面白がって対応してくれることがTBSの強みだなと感じました。初めて参加したときは苦労しましたが、始まったらとても楽しかったことを覚えています。

ちなみにリハーサルは放送前に4~5日かけて行い、事前収録分の映像も撮影します。かなり鍛えられました。

2025年は年末に他局で生中継される大型歌番組でセンターカメラマンを担当されたそうですね。

皆川 こちらの番組は、会場のホールだけでも約20人のカメラマンが参加し、チーフカメラマンの方がポジションを割り振ります。私はセンターカメラを担当し、当日会場で演奏された楽曲の全てを撮影しました。一番近くで安定して画を撮れるカメラなので、「メインとなる映像を撮っていこう」という気持ちで挑みました。

基本的には台本でカット割りがしっかりと決められていますが、出演者さんによっては本番でアドリブの動きをされるので、対応が求められることもあります。出演者さんの衣装も事前に共有されていて、「衣装が特に見どころの方は、全身のカットを入れよう」などとプランを立てました。

リハーサルは本番の3~4日前に、何日かに分けて行われました。スピーディーに進んでいった記憶があります。

皆川さんが撮影した、出演者さんの頭に乗った人形からズームアウトする映像が話題を呼んだそうですね。

皆川 台本には「バストアップからズームバックしてグループショット」と書いてありましたが、リハーサル時にその出演者さんが頭に物を乗せていたのでズームアップしたんです。その一連の演出が本番にも採用されました。

こういった遊び心は『CDTV ライブ!ライブ!』の撮影で培ってもらえたものだと思います。昔の自分だったら、遠慮してしまって撮れなかったかもしれません。ですが撮らないと視聴者には伝わりませんし、「面白い映像を撮りたい」という気持ちを大事にしてよかったと思います。

音楽番組以外では、どんな番組を担当していますか?

皆川 『Nスタ』のお天気中継は、週5回のうち1回分を弊社が担当しています。これは4人体制で、カメラマン、アシスタント、音声、TD(テクニカルディレクター)がそれぞれ一人ずつです。

普段からBoonaちゃんが激しく動いたり、気象予報士の森田正光さんがリハーサルとは少し違う動きを本番でされたりするので、気合が入ります。

時にはドラマの出演者さんが告知で登場することも。『オールスター感謝祭』の時期には司会の今田耕司さんが告知で出演されますが、リハーサルとは違うユニークなことをされるだろうと念頭に置きながら、今田さんのアドリブに応えられるようにと撮っています。

TBSスパークル皆川ルナ

コンサート撮影では、誰よりも魅力的な瞬間を映像でとらえる

ほかに、新たに取り組むようになった業務はありますか?

皆川 近年は、アーティストのコンサート映像の撮影にも参加させていただいています。会場のスクリーンに出す映像や生配信用の映像、DVDなどのパッケージ製品の映像をまとめて手掛けています。

これは、コンサートの撮影業務を手掛けているフリーのカメラマンさんが弊社に来ていたのがきっかけで、仲間に入れてもらいました。以前からお客さんが入っている場での収録が好きで、いつかコンサートの仕事にも挑戦したいと思っていたので嬉しかったです。最初はステージから離れた距離にあるカメラを担当することになりました。

その後、すぐコロナ禍になり、コンサートの撮影業務が全てなくなってしまいましたが、代わりにライブ配信業務がスタート。そのとき、とあるアーティストさんが「歌番組のように撮れるカメラマン」を探していて参加したのをきっかけに、継続して呼んでいただけることになりました。

コンサートの撮影では、どんなことを心掛けていますか?

皆川 そのアーティストさんを誰よりも魅力的に撮ろうと意識しています。具体的に説明するのは難しいですが、例えば「手の所作を入れるべきか、それよりも顔をメインに映した方がよいか」、どちらがいいかは毎回、状況で変わります。振りに合わせてカメラを動かした方が良いときもありますし、楽曲の雰囲気によってプランも変わります。

コンサートと音楽番組の撮影には、どのような違いがありますか?

皆川 まず、カメラの台数が全く変わります。規模によって異なりますが、音楽番組では大体6~8台ほどで、コンサートの撮影は東京ドームなどの広い会場では約30台です。

撮影対象のアーティストさんがグループの場合、メンバーの一人をずっと追うこともあります。例えば少人数のメンバーで、仮に4人組の場合は一人につき一台のカメラがついて、残りの26台はDVDや配信という形で世に出すことを考えて、いろいろな角度から撮影します。手の振りがあったら、それが収まるように撮影しておくなど、素材を集めるような感覚です。

やはり、お客さんを前にしていると、アーティストさんのテンションが変わってきますね。その瞬間にしか撮れない映像が撮れるのは、コンサートならではだと思います。

ほかに撮影中、各カメラが撮った素材を全てリアルタイムで確認できる点はテレビの撮影とは異なる点で、随時ほかの映像を確認しながら自分が撮るアングルを考えます。この撮り方は難しく、編集まで考慮した撮影の仕方はまだまだ勉強中です。

TBSスパークル皆川ルナ

自身の撮影映像でお客さんが歓声を上げる瞬間が嬉しい

ところで、皆川さんはどういう経緯で入社されたのでしょうか。

皆川 学生時代にテレビをよく見ていたので、漠然とテレビ業界に憧れがありました。特に、音楽番組に興味がありましたが、最初からカメラマンを目指していたわけではありません。

たまたまテレビディレクターとして働いている親戚がいて、「専門学校でカメラや制作の勉強をしてみたら?」と助言され、専門学校へ入学。編集やカメラの技術を学び、先生の紹介で入ったのが、現TBSスパークルです。

学生時代にしておいて良かったことは何ですか?

皆川 学生時代の友人と現場で一緒になることがあって、関係を築いておいてよかったと思います。『CDTV ライブ!ライブ!』の現場には偶然にも学生時代の友人や先輩後輩がいて、そのご縁もあって携われることになったんです。いろいろな方と関わっていたおかげかなと感じています。

この仕事の魅力は?

皆川 新しい人に出会ったり、見たことのない機材に触れたりと、毎日違うことをしているので飽きないですね。新しい手法を学んだら、別の現場で共有したり、反対に教えてもらうこともあったりして、お互いに刺激を受けます。

撮影では、ライブや収録を問わず、お客さんが入っている場での仕事が特に好きです。自分の撮影している映像がスクリーンに映って、お客さんが盛り上がる場面に立ち会えるのが、嬉しいんですよね。「この画、良いですよね」と共感してもらえているような気持ちになります。お客さんの歓声で私もテンションが上がりますし、反応によってカメラワークが変わることもあるんですよ。

今後の展望を教えてください。

皆川 今後はもう少しコンサートの仕事を増やしていけたらいいなと思います。コンサートや外部の仕事を経験してからは、将来的にスイッチャー(※複数のカメラ映像を切り替える専門職)の仕事にも関心を持つようになりました。スイッチャーはカメラマン経験を経て担当する人が多く、職人技が求められる仕事ですが、習得できたら楽しいだろうなと思います。

また、後輩の育成にも興味があるので、もし音楽番組のカメラの仕事をしたいという方に出会えたら嬉しいです。

使ったことのないカメラもまだまだたくさんありますし、これからも新しいことにチャレンジしていきたいと思います。

最後に、皆川さんのような、音楽番組のカメラマンを目指す就活生に向けてメッセージをお願いします。

皆川 この仕事は勉強さえすればできるものではありません。もちろん勉強や練習は必要ですが、経験しないとうまくならないので、まずは挑戦させてもらうチャンスをつかむこと。周りの人に「こういう仕事をしたい」と宣言し、「この子になら担当させてもいいな」と思ってもらえるような関係性を築くところから始めるといいかもしれません。

TBSスパークルに入ったら、最初はロケのカメラマンからスタートし、スタジオ業務を任せられるようになるまで修行を積むことになるかと思います。その後、スタジオ業務に取り組むことになると思うので、自分の進みたい道を切り開いてください。

入社後には研修があるので、初心者でも大丈夫です。興味がある方はぜひ挑戦してみてください。

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TBSスパークル皆川ルナ

皆川ルナ
2008年旧東放スタックス(現TBSスパークル)入社。クリエイティブテック本部 番組制作映像部所属。
主に音楽番組の撮影を担当。近年はコンサート映像の撮影も手掛けている。

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