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TBS『有田哲平とコスられない街』は“信頼”を大切に丁寧な出演交渉、若手ディレクターに聞くディープな街ぶら番組制作秘話

TBSでは、『有田哲平とコスられない街』(毎週金曜、深夜0:48~1:18)を放送しています。こちらの番組は、「どのメディアでもコスられていない(あまり紹介されていない)情報」をもとに、MC・有田哲平がその街を知り尽くした案内人と共にディープな“街ぶら”をする超局地的街探訪バラエティです。
番組の立ち上げ時から制作陣の一人として携わっているのは、TBSスパークルの佐藤英太郎。ロケでの裏話や編集の裏側に加え、自身の経歴について話を聞きました。
ロケ地探しは一苦労!一週間以上通って交渉することも

佐藤さんは『有田哲平とコスられない街』において、どんな役割を務めていますか。
佐藤 僕はディレクターとチーフSDを兼任しています。SDはサブディレクターといって、いわゆるAD(アシスタントディレクター)と同じ役割ですが、TBSスパークルではADを「SD」と呼んでいます。
番組が始まった2024年からチーフSDとして関わっていますが、チーフSDを務めるのはこの番組が初めてです。これまで特番を担当して番組の立ち上げに関わる機会が多かったのですが、新番組スタートに向けて、特番と同様に番組フォーマットや資料作成、ロゴ制作などをゼロから行っていきました。スタート後は、主にロケ準備すべての業務を担当しています。
ディレクターを兼務するようになったのは、2025年の夏ごろです。総集編の編集をディレクターとして担当するよう上司から打診され、任せてもらえることになりました。その回の視聴率が悪くなかったこともあり、以降もお願いしてディレクター業務も続けています。
番組は、どのように企画されたのでしょうか。
佐藤 以前放送していた『賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~』が終わり、次の企画を選定する際に、この街ぶら企画が選ばれました。
番組はロケがメインですが、ロケ先はどのように決めていますか?
佐藤 ロケで訪ねる街は、案内人を務めてくれるゲストのキャスティング次第で決めています。基本的にはゲストの方が行きたい店舗に行くので、ゲストが決まってから店舗に番組の出演許可を取り始め、自然にトークが進むよう、事前に歩くルートや話で触れるお店を決めます。時には撮影の2週間前にようやくゲストが決まることもあります。
ただ、店舗に出演許可をいただくのは簡単ではありません。なぜなら、この番組は「メディアでコスられていない=あまり紹介されていない」場所を紹介するというコンセプトから、これまで取材を受けたことがない店舗を取り上げることが多いんです。そのため、お店の方と信頼関係を築くことを最優先に、なんとか出演を承諾していただいています。
なかなか出演に応じてもらえないお店がありましたが、何度かお話をさせていただくうちに、やがて名刺を受け取ってもらえ、最終的にはお話を聞いていただいて、無事に取材の許可をいただいたことも。信頼してもらえたことが嬉しくて、今でも忘れられない思い出です。
ゲスト出演者は、どのように選んでいますか?
佐藤 意識しているのは、その方が「紹介する街に根付いたエピソードをお持ちかどうか」という点。例えば「このお店は若手のときによく通っていたんですよ」というようなエピソードがある方だと適任です。ちなみに有田さんには誰がゲストに来るのかをお知らせしないまま、収録に臨んでもらっています。

有田哲平から褒められた言葉が、心の支えに
ロケはどのように行っているのでしょうか。
佐藤 1回の放送で大体2店舗ずつ紹介しますが、収録は、1か月の放送で紹介する8~9店舗を1日で撮影します。進行役のディレクターは、2店舗ごとに交代しています。
どのお店もおいしいものの、一日で8店舗分の料理を召し上がっていただくのは大変です。しかし出演者の方たちは、お店の方に失礼がないよう、出されたものは全部召し上がってくれます。そのため、あらかじめ盛り付けの量をお店側と相談しています。
過去には街ぶらではなく、「コスられない芸人でコス1GP」と題したネタ見せ企画もありました。
佐藤 錦鯉さんが案内する豊島区千川編での企画ですね。千川には「Beach V」というソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)お笑い部門の劇場があるのですが、錦鯉さんがそこで活動していたこともあり、以前有田さんが出演していた『有田ジェネレーション』のようなオーディション形式のネタ見せ企画を行いました。進行役として小峠英二さん(バイきんぐ)をお呼びして、2週にわたって放送しました。SNSを見ると『有田ジェネレーション』のファンの方にはとても高く評価していただいたようです。
特に印象に残っているロケのエピソードを教えてください。
佐藤 2025年11月に放送した横浜・野毛編です。僕はこの回で、ディレクターとして初めてロケの進行役を務めることになり、とても緊張していたのですが、始まる前にヒコロヒーさんとお話した際、「私が何とかしたる、任しとき!」と頼もしくおっしゃってくれました。ところが、ロケが始まると夜の収録だったこともあり、皆さんかなり酔っ払ってしまったんです。有田さんや、ゲストとして参加していた小峠さんも、お酒が入って上機嫌で…僕はどうまとめたらいいのかわからず、内心はパニックでした。本編ではなんとか編集しましたが、実際のロケは面白くも大変だったことを覚えています(笑)。
トーク部分に関して意識していることは何ですか?
佐藤 トークテーマはネットニュースで取り上げられて話題になるような内容を意識しています。事前に出演者の方にアンケートで回答してもらったエピソードから選び、トークをお願いしています。基本的に初出しの情報を扱うので、実際にネットニュースに取り上げられることが多いです。
有田さんは、カンペを読まれるというよりは、その場で臨機応変にトークを展開される方なので、事前に何もお伝えせず、ロケで初めて聞いた情報をもとに、トークしていただいています。台本はほかの出演者の方にはお渡ししていますが、現場では皆さん見ていないことが多いので、生きたトークをお届けできているのではないかと思います。

有田さんとのやり取りで印象に残っていることを教えてください。
佐藤 有田さんとは番組の収録後に、制作チームで何度か飲みに行かせていただいたことがあります。そのとき、ちょうどお店との交渉の話になり、僕が先ほどお話しした「とにかくお店に通い、お店の方に信頼してもらえるまで頑張る」という話をしたところ、「今時、そういう若い人はなかなかいない。自分の番組にそういう人がいてくれて嬉しい」という言葉をいただき、すごく褒めてもらえたんです。普段、絶対にお世辞を言わない有田さんからの言葉は、僕の支えになっていて、有田さんに褒めていただいたから頑張れているんだなと感じています。
また、有田さんは実は人見知りな一面があり、街で声をかけられてもハニかんで軽く手を振っています。そんなところは、他の街ぶら番組との差別化にもなっているかもしれません。反対に、ゲストで出演する芸人さんは声をかけられやすい方が多いです。例えば、錦鯉の長谷川雅紀さんが登場した回では、子どもたちが大勢集まってきて長谷川さんを取り囲んでいました(笑)。
ディレクターとして編集も担当していますが、特に大切にしていることは?
佐藤 「視聴者にクエスチョンを投げかけ、それに対する答えとして情報を出す」、という流れを作れるように意識しています。これは、僕が入社してからずっと演出の山口伸一郎さんに言われていることです。何も意識しないで編集すると情報の羅列になってしまい、押しつけがましくて見ている方の頭に入ってきません。編集時だけでなく、台本作りでも心掛けています。
また、視聴者の立場に立って考えることを心掛け、現場にいた人にしかわからないような作りにはならないように注意しています。
番組のファンの方に向けてメッセージをお願いします。
佐藤 番組は立ち上げ当初から少しずつ変化を重ね、現在も新たに変わろうとしています。最近ではロケ中に「いつも見ています」と話しかけてくださる方も増えてきました。こうした声や反響に応える形で今後もより面白い番組を目指しますので、ご覧いただけると嬉しいです。
まだ行ったことのない街がたくさんあるので、さまざまな場所の「コスられない情報」を発信できたらいいなと思います。

憧れの人のメッセージをきっかけに、バラエティの世界へ
ところで、佐藤さんはどんな経緯でTBSスパークルに入社したのでしょうか。
佐藤 僕は日本大学芸術学部の放送学科でテレビについて4年間学んでいました。当初は『情熱大陸』のような、密着してその方の面白さを伝えるドキュメンタリー番組の制作に興味があり、ドキュメンタリーの制作会社でアルバイトも経験しました。活動する中で『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)のような、ドキュメンタリーでありながら笑いが生まれる番組を作りたいという思いが強くなり、バラエティ番組の制作を志望するようになりました。
就職活動でさまざまな会社を調べる中で、『東大王』や『ジョブチューン』、『ラヴィット!』の総合演出を務めた山口伸一郎さんが、TBSスパークルの採用ホームページに寄せた「バラエティ番組は作品ではなく、商品である」というメッセージに引きつけられました。この考え方に強く共感し、TBSスパークルのバラエティ部に入社したいと思いました。
YouTubeも見ますし、将来的にYouTubeの仕事をする機会があるかもしれませんが、まずは幅広い世代の多くの人が見ているであろうテレビについて学びたいという思いもありました。実際にテレビ番組の制作を始めて、とても面白さを感じています。
学生時代はどんなことを学びましたか?
佐藤 授業で番組制作をするほか、サークルでも映像制作をしていました。授業では、学内にあるスタジオなどで、3か月ほど準備期間を設けて番組を作っていました。ジャンルはバラエティが圧倒的に多かったですが、1本だけドキュメンタリー映像も制作しました。それは、鍼灸師(しんきゅうし)をしている父のドキュメンタリーです。仕事が忙しくて帰宅が遅い父とは、幼いころからあまり一緒にいる時間が持てませんでした。「父のことをもっと知りたい」と制作を始め、患者さんとの信頼関係など知らなかった父の一面を知ることができて、本当によかったです。
サークルでは、「藝ホウ」という当時200人ほどが所属する団体を立ち上げ、テレビやラジオ、CM用の映像等を制作。出演者のキャスティングやお金の管理などすべてを自分たちで手掛けていました。
一方で卒業制作ではドラマを作りました。バラエティを志望していたので、おそらくこの先、ドラマは一生作ることがないので挑戦してみたいと思ったからです。とてもいい経験になりましたし、学内で学部長賞という賞に選ばれて嬉しかったですね。
小規模ながら、学生時代に相当な数の番組を制作してきたので、業界に入ってからのギャップはあまりなかった方だと思います。

入社後のキャリアを教えてください。
佐藤 入社後はバラエティの部署に配属され、最初は『ラヴィット!』のチームで一か月間SDを務めました。当時はとにかく仕事を覚えることに必死だったように思います。
『ラヴィット!』はシミュレーション業務が多いことが特徴です。ゲーム企画は、放送前に本当に面白くなるのかをスタッフでとことん試し、VTRにまとめて上司に判断してもらいます。例えば、「利きうまい棒チャレンジ」企画では、一日数十本のうまい棒を食べたこともあります。こういった業務が多いので、長く番組制作に携わっているスタッフを尊敬しています。
その後、特番チームに異動し、入社のきっかけとなった山口さんと一緒に仕事することになり、現在に至ります。
実際に山口さんと働くようになり、どのように感じていますか?
佐藤 普段からよく冗談を言う親しみやすさがありながら、番組作りとなると「こうだから、これが面白くなる」というようにきちんと論理的に言語化して説明してくれます。「なんか違うんだよね」という感覚的な指摘ではないので、考えが伝わりやすく、多くのスタッフに慕われるのだと思います。とても明確に説明してくれるので勉強になります。
また、かなり忙しいはずなのに、バラエティだけでなく、話題作を誰よりも早くチェックしています。僕にも「ヒットしている番組やコンテンツに触れて勉強するように」とよく言われるので、積極的にインプットしたいと思っています。
業務において、学生時代の経験が生きた部分はありますか?
佐藤 『ゴールデンラヴィット!2023』を担当したとき、坂道リレー企画の業務全体を仕切る立場を任されたのですが、学生時代に200人規模のサークルでリーダーを務めた経験が生かせたのかなと思います。
また、一緒にサークルを運営していた友人が他局で働いているので、番組の素材を借りる必要があったとき、スムーズにやりとりができました。これは、放送学科にいたからこそ得られたメリットかもしれません。
佐藤さんの今後の展望を教えてください。
佐藤 まだ『有田哲平とコスられない街』でディレクター兼チーフSDという立場なので、まずは一人前のディレクターとして認めてもらうことが目標です。
街ぶら番組は『有田哲平とコスられない街』一筋で担当してきてバリエーションが少ないので、編集のテクニックなどの引き出しを増やしていきたいと思います。
TBSスパークルで、バラエティを作る強みは何だと思いますか?
佐藤 TBSスパークルはバラエティの中でも情報系バラエティの制作が強いです。社内は風通しがよく、何かあっても相談しやすい雰囲気が魅力です。
また、TBS以外のバラエティ制作に携われることも特徴です。今、CS番組を制作していますが、局によって演者の選び方や作り方、雰囲気など、いろいろな違いがあります。それがとても面白いです。
最後に、佐藤さんのようなお仕事を目指している学生に向けてメッセージをお願いします。
佐藤 働き始めると、まとまった休みをとるのが難しくなるので、時間がある学生時代のうちに旅行をしておくのがおすすめです。また、社会人になってからは他業種の友達を作ることも難しくなるので、今のうちにいろいろな人と出会い、友達を増やしておくと、社会に出て何かあったときに助けられることがあるかもしれません。
バラエティはテレビ番組の中でも好き嫌いが少ないジャンルかなと思っていて、いろいろな人に見てもらえるところが魅力だと思います。興味がある方は、ぜひ挑戦してください!
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佐藤英太郎
2023年TBSスパークル入社。情報コンテンツ制作本部番組制作一部に所属。『ラヴィット!』金曜班のSDを務めたのち、特番チームへ異動。『ゴールデンラヴィット!2023』や『今月あと1万円しかない!』のSDを経て、現在は『有田哲平とコスられない街』ディレクター兼チーフSDを担当。
