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『今月あと1万円しかない!』で初の総合演出に!TBSスパークル薄龍之介の挑戦
TBSは、3月4日・11日の月バラナイト枠で『今月あと1万円しかない! これがボクらの生きる道』を放送します。この番組を企画したのは、TBSスパークルの薄(うすき)龍之介。入社6年目にして初めて企画・総合演出を担当することになりました。初めての撮影でどんな経験をしたのでしょうか。テレビ業界に入った経緯から、放送を控えた今の心境まで、根掘り葉掘り聞きました。
テレビっ子から番組制作の道を目指す
薄さんは2018年にテレビ業界に入ったそうですね。その経緯を教えてください。
薄 中学生の頃からテレビが大好きでした。特に、『水曜日のダウンタウン』や『ゴッドタン』(テレビ東京)といったバラエティ番組が好きで、当時はおもしろそうな番組を片っ端から録画するくらい熱中して見ていました。高校卒業後は映像系の専門学校に進学し、テレビ番組の制作に関わる勉強をしていました。
2018年にスパークルの前身企業に所属し、そこのバラエティ部門でBS放送の歌番組を担当したのが初めての仕事です。由紀さおりさんがメインの1時間番組で、ADとして収録の備品管理やお弁当の発注などを担当していました。いわゆるバラエティ番組とは少し違いますが、この番組が、業界に入りたてで何もわからない僕を育ててくれました。
その後、2019年にTBSスパークルに所属となります。
薄 TBSスパークルに入ってからも、その歌番組は継続して担当していました。あるとき、先輩からバラエティ系の特番をやってみないかと声をかけていただき、『スタァ同級生』(フジテレビ)を担当することになりました。いわゆるバラエティ番組を担当するのは、これが初めてでした。これをきっかけに、2020年頃から『オールスター感謝祭』や『クレイジージャーニー』の復活特番など、バラエティ特番のADを担当するようになりました。
それまで担当していた歌番組と、後に担当された情報バラエティ番組では、どんな違いを感じましたか?
薄 テロップやナレーションの量が違います。どちらも地上波バラエティの方が多いです。ナレーションを入れる際、ナレーターさんが来る前に原稿を印刷して準備しておかなければならないのですが、最初はナレーション原稿の準備にどのくらい時間がかかるのか分からなかったので、ギリギリで間に合わなかったことも…。でも、もともとバラエティ番組に携わりたかったので、早く覚えたい一心でひたすらにやっていました。
毎週行われる企画会議を経て、初めて企画が通る
『今月あと1万円しかない!』の企画はどうやって生まれましたか?
薄 スパークルのある先輩と企画会議しているときです。僕は学生時代に給料日までに使えるお金が1万円を切ることが多くて、その経験から「今月あと1万円しかないという状況って誰しもあると思うけど、そういう人はどうやって給料日まで乗り切るんだろう?これを番組にしたらおもしろいんじゃないか」という話になりました。これをきっかけに企画書を書いてみて、作家さんなども参加する企画会議で相談し、ブラッシュアップしていきました。書き上げた企画書を先輩がTBSの編成の方に提出してくれました。
企画会議とは?
薄 TBSスパークルには企画開発室という部署があり、毎週金曜日に企画会議をしています。そこの室長が前述の先輩で、仕事でご一緒するようになってからは、よく企画の相談をさせていただくようになりました。
バラエティ部の人は全員班分けされていて、例えばTBSの企画募集があったら、班で一通はマストで出すことになっています。基本的にどの班にもディレクターやプロデューサーがついていて、班内での相談もできるので、若手にもチャンスがあります。会社としてどんどん企画を出していこうという流れがあるので、この環境だからこそ、自分も企画を通すことができたのかなと思います。
初めて企画が通ったと知らされたときは、どんな心境でしたか?
薄 すごく嬉しかったですが、不安もありました。企画が通ったとしても、箸にも棒にも掛からないことの方が多いですし、いざオンエアしても「つまらないね」と言われたら全部自分の責任だなと。でも、撮影を終えた今は絶対おもしろくなると確信しています。
それと、本当に仕上げられるのかという不安もありました。今回は、企画・総合演出という肩書でやらせていただいていますが、僕がディレクターとしてデビューしたのは去年なので、自分で総合演出と名乗るのは恐れ多いです。経験が少ないので、アイディアの引き出しがありませんでした。例えば、「これを仕上げるためにこういうことをしなければならない」ということすら思い浮かばないので、選択肢を与えてもらってそこから選ぶなど、企画者として意見を尊重していただきながら、皆さんに助けてもらいながら作っていきました。改めてすごく良い環境だと思います。
初めての密着は想像以上に充実した内容に
撮影はどんな風に進めていきましたか?
薄 まず、500円でトータルコーディネートできる洋服の激安店や、1分10円の飲み放題の居酒屋へ行き、お客さんに声をかけ、給料日までに使えるお金がいくらくらいあるのかインタビューしました。ちゃんと数えてはいませんが、約7人のディレクターと僕で合計1000人以上に声をかけたと思います。
その中で残金が1万円以下の人がいたら、給料日までどんな生活をしているのか見せていただけないか交渉し、許可がとれた方を密着取材しました。普段は『ラヴィット!』の金曜日を担当していましたが、この番組に集中するように指示があったので、撮影に専念できてよかったと思います。
番組ロゴの制作を担当したのは?
薄 『水曜日のダウンタウン』などTBSのバラエティ番組のロゴを制作されている榛葉大介さんにご依頼しました。番組のイメージと番組で使う予定のBGMをお伝えし、3パターンくらいあげてくださったものから選びました。
今回、初めて企画・総合演出を経験し、何が一番勉強になりましたか?
薄 街録に関してはかなり勉強になりました。モジモジして元気がないと答えてくれないし、逆に丁寧すぎてもうまくいきません。言語化すると薄っぺらくなってしまいますが、答えてもらうには適切なノリとテンションとテンポ感があるんだなと学びました。難しいですが、少しは成長したかと思います。
密着するのも今回が初めてだったので、聞き逃したことがあったり、もう少し撮っておけばよかった部分があったりと、編集して改めて気付きました。この経験を次に活かしていきたいです。
撮影を振り返ってみて、いかがでしたか?
薄 この番組は2週にわたって放送されるので、最初は尺が埋まらないのではないかと不安でしたが、密着を始めたら思いのほか撮れ高があり、とても充実した内容になりました。世の中にはお金がなくても自分なりの幸せを見つけながら、明るく生活している人がたくさんいるんだなと知ることができてよかったです。
ロケがうまくいかなかったことを想定し、最初に想定で台本を書きましたが、それよりもはるかにおもしろい人たちに出会えることができました。これは嬉しい誤算です。見たら元気になると思うので、ぜひご覧ください!
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薄龍之介
TBSスパークル エンタテインメント本部 バラエティ部
2019年 現・TBSスパークル入社。『オールスター感謝祭』や『ラヴィット!』などバラエティ番組を中心にAD・Dを経験。ディレクター1年目で初企画採用。