• CHALLENGE REPORT

BS-TBS「攻め」のドラマブランディングと、インティマシーコーディネーター導入

BS-TBSは今年、ブランド戦略のひとつとして約11年ぶりに連続ドラマの制作を再開させました。BS-TBSならではと思われるものを届けたいという想いから「他ではやっていないような企画性の高い、エッジの効いたドラマ」の制作に挑戦しています。夏に放送した「あなたはだんだん欲しくなる」ではドラマとBSではおなじみとも言える通販をコラボするなど新領域にトライ、そして10月からは「帰らないおじさん」と「サワコ~それは、果てなき復讐」を放送しています。特に「サワコ」は、刺激的なラブホラーサスペンスで性的な親密さを表す「インティマシーシーン」が含まれる、攻めた作品。ドラマ化するにあたり「インティマシーコーディネーター」の方に参加を依頼しました。これは業界的にも注目される取り組みでした。

インティマシーコーディネーターとは

映像制作における性的なシーン(インティマシーシーン)を、演出の意向を最大限実現しつつ、俳優の身体的・精神的な安心・安全を守るために、両者の間に入って調整をする。


導入の経緯:「サワコ」有我健プロデューサー

攻めたドラマにしたいとドラマ班全員で話す中で、「サワコ」の原作漫画は満場一致で面白い!という話になったのですが、作中にいわゆる「インティマシーシーン」がちりばめられているんです。そして、それが登場人物の心情変化や物語の展開などに関わってくる重要な要素だと感じました。減らすのは簡単だけどその原作の良さを最大限活かしたドラマにしたい、でもどうやって撮影しようか…そこで、昨今話題になっているインティマシーコーディネーターの方に入っていただこうという話になったんです。

具体的にどんなことをするの?:インティマシーコーディネーター浅田智穂さん

たとえば、一話で出てくる台本のト書き

舞台は美術学校で、サワコはデッサンモデルをつとめるので、「服をするりと落とすサワコ。」とあれば、大前提で全裸になる可能性もありますよね。なので、この詳細を監督に確認します。今回は、ここは上着をするりと脱ぎ落すだけということだったので、サワコを演じる趣里さんとも確認し、インティマシーシーンにはしない、ということになりました。

このように事前に確認すれば、当日演出と俳優が誤解なく、俳優は安心して演技に臨めます。しかしこれまでだと、俳優は撮影当日一枚服を脱ぐだけだと思って現場に来たら、もっと露出が多い演技を求められた、ということも起こりかねなかった。
ですので、事前に台本をもとに監督と、演出プランをとにかく細かく、疑問に思うところをすべて確認し、それを俳優に伝え、意向を確認するのが仕事です。
 

コーディネートのポイントは?

①基本的には俳優が同意を得たことしかしないよう、監督と俳優と、インティマシーシーンと思われる演出方法について、丁寧にコミュニケーションを重ねます。
②インティマシーシーンは必要最小限の人しかいないようクローズドで行います。これは俳優が安心・安全な環境で演技に集中できるようにするためです。
③俳優の側に立っているのではなくて、あくまで俳優・演出、双方が理解し、納得のいくよう話し合いを重ねます。作品を何より尊重することが大事だと考えています。

心掛けていることは?

・俳優の方とできるだけ早く関係性を築けるようにコミュニケーションをとります。それは、ニュアンスを読み取るためでもあります。どこまで自分に本心を話してくれているのか…すこしでも躊躇が見られた場合は、しっかりと話し合いをするようにしています。
・監督とプロデューサーが見せたい描写を、いかに安心・安全に撮影するかをサポートする立場なので、内容に関しては基本的には口を出しません。いかにいいシーンにするか、そのための環境づくりが私の担当だと考えています。
 

注目される職業になっていますが…

浅田:確実にこの職業は煙たがられる…、いばらの道だなと思っていたんですが。誰も知らないところから、このように注目されるようになってきて嬉しく思います。
映像業界にはまだたくさん問題がある中で、自分一人ではできることはすごく限られているのですが、このインティマシーシーンに関しては、真摯に一本一本携わっていくことが、今私にできることかなと思っています。

有我:実際、放送を観ていただいている方にはこういった(インティマシーコーディネーターが参加している、していないの)違いは見えるものではないのですが、「浅田さんがいてくださってよかった」と俳優・スタッフが口をそろえて仰っていただいたのが、すべてだと思っています。今後私がこういった(インティマシーシーンが含まれる)作品に携わることがあれば積極的に検討したいですし、それが当たり前になっていってほしいと思っています。
また、今回、事前にスタッフには「リスペクトトレーニング」を受講していただきました。一つ一つの発言は相手をリスペクトする気持ちがあってのものなのか、みんなで議論する、そういったトレーニングです。その効果もあってなのか、ハラスメント的なことはなかったのではないかと思います。みんな気持ちよく仕事をする…そういったことも今後、制作現場に必要なのかなと感じています。インティマシーシーンだけが特別なことではなく、スタッフの労働環境など他にも課題はたくさんあると思いますので、それら一つ一つが少しでも解決していくことを意識したいです。

 

■「サワコ~それは、果てなき復讐

   主人公・サワコが元同僚マチカの人間関係に浸食し破壊していく。愛と復讐に彩られたラブホラーサスペンス。

 (TVer、Paravi、Amazon prime video、hulu、U-NEXT、ひかりTV で配信中)
 

  最終回:12月4日(日)よる11時放送

 サワコ(趣里)のもとからマチカ(深川麻衣)を連れ出し逃げる春斗(小関裕太)。

 しかし、2人の前にナイフを持ったノノ(平井亜門)が現れ、マチカは再びサワコの待つ別荘の地下室へと連れ戻されてしまう。健介(曽田陵介)からの手紙がきっかけでサワコの言いなりになったノノだったが、ここにもサワコの狂気が及んでいた…。そして、2人に運命の時が訪れる。絡まりあった運命の果て…愛と憎悪が彩った復讐の結末とは──

 

■1月期ドラマ

  「ママはバーテンダー~今宵も踊ろう~

  毎週木曜日よる11時30分放送    1月19日(木)スタート   

    元宝塚のトップスター紫吹淳さんが初主演を務める連続ドラマ。  

 日本バーテンダー協会が作品監修し、紫吹さんが現役バーテンダーの指導を受けて撮影に挑みました。

 

(本記事は「TBSレビュー」(11/27放送)をもとに再構成しました)

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