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BS-TBSドラマ『天狗の台所』待望の続編登場、駒木根葵汰・塩野瑛久・越山敬達ら“天狗のスローライフ”を描く人気作の裏側を編成担当に聞く
2024年10月22日(火)より、BS-TBSにてドラマ『天狗の台所 Season2』の放送がスタートします(毎週火曜よる9時)。原作は『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中の田中相氏による同名漫画。2023年放送のSeason1では、ニューヨーク育ちの少年・オンが、両親から天狗の末裔であることを知らされ、天狗のしきたりによって、日本で暮らす兄の飯綱基と一年間の隠遁生活を送ることに。兄弟と仲間たちが心を通わせる姿を描いた人気作の続編です。
風光明媚な自然の中で丁寧に暮らす描写が印象的な本作は、どのように作られているのでしょうか。編成担当を務めるBS-TBSの鈴木駿に話を聞きました。
好評を博し続編決定、自然豊かで穏やかな収録を振り返る
ドラマ『天狗の台所 Season2』は、どんな経緯で制作が決まったのでしょうか。
鈴木 おかげさまでSeason1の放送や配信の反響がとても大きかったことから、Season2の制作が決まりました。元々、Season1の時から制作チームで「続編をやりたいね」という話が出ていたそうです。
キャストは、主人公・飯綱基(いづな・もとい)を演じる駒木根葵汰(こまぎね・きいた)さん、基の幼なじみ・愛宕有意(あたご・ゆい)役の塩野瑛久さん、基の弟・オン役の越山敬達さんたちが、前作に引き続いてご出演くださいます。
鈴木さんは編成担当を務めていますが、具体的にどんなことをしていますか?
鈴木 脚本打ち合わせから始まり、新キャストのキャスティング会議や衣装合わせ、本読み、撮影の立ち合い、撮影後のポスプロなど、今回のドラマの全てに関わっています。肩書きは編成担当ですが、地上波(TBSテレビ)の編成担当とは少し業務内容が異なるかもしれません。
私はSeason2から制作に携わることになりました。以前は「編成トラフィック」という、放送が安全に運行するための管理を担当していました。過去にドラマ『怪談新耳袋 暗黒』の制作に携わったことはありますが、こんなに深く作品に関わるのは今回が初めて。Season1はとても良い作品だと思っていたので、携わることができて嬉しいです。
まず、脚本はどのように作っていったのでしょうか。
鈴木 今回はドラマオリジナルのストーリーもあり、原作者の田中相先生にも参加していただきながら、みんなで作っていきました。
脚本家はSeason1と同じメンバーで、すでに信頼関係が構築されていたので、順調に進められたのではないでしょうか。打ち合わせでは非常に活発な意見交換があり、長い時は一日4~5時間、半年ほどかけて完成させました。
Season2のテーマは「オンの一夏の成長」。Season1で基と一年間、丁寧な生活を送ったオンが、ニューヨークでの淡白な暮らしに嫌気が差し、母とぶつかって天狗の里に戻ってくるところから始まります。ニューヨークに戻る資金を自分で貯めることになったオンが奮闘し、人々との関わりの中でより成長する姿に注目してください。
また、原作には出てこないドラマオリジナルキャラクターも登場。天狗の里で出会う、オンと同年代の少年・颯真を、原田琥之佑(こうのすけ)さんが演じます。田中先生も面白がってご了承くださいました。
前作を見てくださった方はもちろん、Season2からの方にも楽しんでご覧いただけると思います。
撮影はいかがでしたか?
鈴木 前作から約1年ぶりとなる撮影は今年2024年の8月末から9月末まで、約1か月間泊まり込みで行いました。ロケ地は静岡県小山町で、原作の単行本1巻の表紙で描かれているような稲穂の風景が魅力的な場所です。台風の時期と重なって稲が倒れてしまったり、稲刈りの時期がきたり…など、自然に左右されながらも撮影を進めました。
制作陣はSeason1から引き続き関わってくださる方が多く、現場はとてもアットホームな雰囲気でした。休憩中もみんなでセットの古民家の和室で雑魚寝したりして…カメラマンや監督たちがリラックスしている姿を見るとなんだかほっこりしましたね。
主人公・基の役作りや演出はどのようにされているのでしょうか。
鈴木 基は寡黙でありながら、的確なアドバイスもできるキャラクター。駒木根さんは言葉より表情や佇まいで伝えることも多かったと思いますが、見事に演じられていました。普段はとても陽気な方で、基とは全然雰囲気が違います。ラジオを聞かれている方はよくご存知だと思います(笑)。役に入るときのスイッチの切り替えがすごいなと感心しながら見守っていました。
演出面は、説明しすぎず、しっかり余白を作ることが意識されていたと思います。人物を正面からではなく、あえて背中から撮ったカットを選択するなど、視聴者に想像の余地を与えるような撮り方をしています。がっちり作り込むのではなく、あくまで自然な形でなされていて、それはSeason1があったからこそ。制作陣と俳優チームの息がぴったりだなと感じました。Season1から続く、静かな映像美も見どころです。
現場でのキャストの様子を教えてください。
鈴木 キャストの皆さんはとてもフレンドリーで仲良くお話されていました。宣伝用の動画を撮っているときに、画面の外からみんなで声をかけて茶化したり(笑)。撮影以外の時間も流れる良い空気が、作品に反映されていると思います。
印象的だったのは、父役の原田泰造さん、母役の渡辺真起子さんも含めた飯綱家キャスト4人の関係性。まるで本当の家族のように温かく、Season1のブランクを感じさせないくらい自然な雰囲気でした。本編でもその雰囲気がよく出ていると思いますので楽しみにしていただきたいです。
ちなみに原田さん、渡辺さんが驚かれていたのが、オン役の越山さんの成長です。越山さんは現在15歳の中学3年生で、この一年で10cm以上も身長が伸びたそうです。撮影期間中も身長が伸び続けていたようで、他番組出演用に準備した衣装が合わなかったことも。ドラマ上の時間経過とリンクし、リアルに成長する姿が見られるのは貴重だと思います。
Season1から現場のムードメーカーでもあった有意役の塩野さん。Season2で有意は仕事の環境が変わり多忙な毎日を送ります。実際、塩野さんも非常に忙しいスケジュールのなかで撮影に参加されていて、ご自身の今にどこかリンクするところがあり、役に気持ちを込めやすかったとおっしゃっていました。
犬のむぎを演じるスピカちゃんはSeason1のときは幼く、家の外に飛び出してしまうこともあったそうですが(笑)、今回は成長して落ち着いた様子でいてくれました。むぎが言葉を話すシーンは、トレーナーさんが名前を呼んだり、おやつをあげたりして口を動かしているタイミングを狙って撮っています。その後、角田晃広さん(東京03)に声を入れていただきますが、むぎが本当に話しているように見えますので角田さんは器用な方ですよね。
また驚くスピードで現場になじんでいたのが、今回から参加した有意の兄・愛宕慈雨(じう)役の古屋呂敏(ろびん)さん。慈雨は京都弁を話す役で古屋さんも京都出身のため、演じやすかったそうです。
随所にこだわりが詰まった美術セットに注目
『天狗の台所』といえば、調理シーンが印象的です。どんなこだわりを込めて撮っているのでしょうか。
鈴木 一番は「いかに美味しそうに撮るか」ということ。時間はかかりますが、一工程ずつ丁寧に料理と向き合いながら撮っています。材料の都合もありますが撮影はあまりテイクを重ねずに大体2テイクくらい。調理シーンはあまり演じきらず、自然な感じを大事にしています。ある監督曰く、「これはドキュメンタリーだ」そうで、まさにそんな雰囲気を感じていただけると思います。
料理は手元のみを映すシーンでも実際に駒木根さんが作っています。駒木根さんはとても器用で、フードコーディネーターの方が「これは結構大変」と言われたものでも難なく作ってしまうんです。撮影で越山さんに「こうやればいいよ」と教えている姿は、本当の兄弟のようでほほ笑ましかったです。
ここからは、小道具や美術セットについてお聞きします。基の家のセットは、本当に人が住んでいるようですね。
鈴木 Season1と同じ古民家をお借りして、今回また家具などを入れてセットを組みました。台所には基本的にプラスチック製品は極力置かず、木やガラスなどで作られたものが多いところが特徴です。棚の調味料などは全て本物を瓶に移し替えて持ち込んでいます。
前作から同じ美術スタッフさんは原作をリスペクトしている方。こだわりを随所に込め、緻密に作られた小道具やセットに、あらためて感激しました。隅々までご覧いただきたいですね。
調理シーンで登場する、まな板などは本当に使い込まれたように見えますね。
鈴木 小道具もSeason1から引き続き使用するものが多いです。注目は経年変化の表現。基のまな板は、使用感を出すために加工されています。飯綱家の表札も同様に、板の状態から加工して、雨風をしのいできた風格がありますよね。
「オンの畑」の看板も、印象的です。
鈴木 今回はオンの作る野菜が物語のキーとなり、看板も重要な小道具です。Season1終了後も、美術を手掛ける山崎美術さんの屋外でずっと保管されていて、畑に立っているのと同じように、実際に雨風を受けて良い風合いになっています。
基が腰に掛けているバッグには、何が入っていますか?
鈴木 畑の管理をするときに使う道具、農作業用のハサミやナイフ、手ぬぐいなどが入っています。水筒も原作に似せたものを用意したそうです。
ほかに、縁側などに吊るしている唐辛子(下の写真:まな板の上)は、専門の方が作ったものもありますが、劇中で駒木根さんが実際に結んだものも使われています。
アクセサリーは、Season1でオンが、基とむぎのために作ったもの。実際に越山さんも植物のジュズダマの実に穴を開けて作ったそうです。基とむぎは、Season2でも身に着けています。
天狗のお面は、本作の象徴的な小道具ですね。
鈴木 このお面はSeason1の隠遁納めの儀式で舞うシーンでオンがかぶりました。普段は神棚のところに常に飾られていて、風景の一部となっています。Season2では、ほかに懐かしのあのお面も登場しますので、楽しみにしていてください。
今回もSeason1のように、「BS-TBSの公式note」で1話ずつバックストーリーを公開したり、グッズを発売したりといった施策はされますか。
鈴木 宣伝・配信・事業チームなど、それぞれが熱心に取り組んで準備中です。今回も制作陣がリレー形式で「BS-TBSの公式note」の更新を行う予定です。グッズは放送中に販売予定なので、ぜひ楽しみにしていてください。
ほかにも、渋谷駅構内で掲示物を使ったキャンペーンなどを企画しています。
ズバリ、Season2の見どころを教えてください。
鈴木 Season1のゆったりとした世界観はそのままに、美しい映像と音楽によって、心が浄化されるような作品に仕上がったと思います。自分で食事を作り、自然と向き合いながら生活する、人間の本来の姿ー。慌ただしい生活を送る私たちですが、忘れかけたことを思い出すきっかけになってくれたらいいなと思います。
BS-TBS独自の世界観を楽しめるオリジナルドラマを作りたい
ところで、鈴木さんはなぜBS-TBSに入社されたのでしょうか。
鈴木 BS-TBSを知ったのは、大学時代にCDショップでアルバイトをしていた頃です。配属されたフロアに『吉田類の酒場放浪記』のDVDが置かれていて、TBSにはBSの放送局もあるんだなと知りました。
その後、ホラーが好きでずっと見ていた『怪談新耳袋』シリーズも、BS-TBSだと判明しました。映画のレギュラー放送枠があったことも魅力で、いつか関わりたいなと。そんないろいろなつながりを感じて興味を持ち始めたことから、今に至ります。
BS-TBSの魅力はどこにあると思いますか?
鈴木 BS-TBSにはコアな物事に焦点を当てた番組が多く、マニアックさを追究できるところ。視聴者の皆さんが追体験できるような題材の番組が多く、どれも豊かな内容です。また、衛星放送なので全国一波、日本のどこにいても同じ時間帯に同じ番組を見ることができ、視聴体験を共有できるのも魅力だと思います。
TBSテレビやTBSラジオなどと同じTBSグループなので、時にはコラボすることも。グループ全体としてコンテンツが豊富なところも良いと思います。
BS-TBSドラマの今後の展望は?
鈴木 BS-TBSが今につながるオリジナルドラマの制作を再スタートさせたのが、約2年前。個人的には『天狗の台所』のようなスローライフがテーマの作品など、ドラマのメインジャンルとしてあまり取り上げられないようなものに焦点をあてて、BS-TBSドラマを作っていけたらと考えています。
最後に、就活生に向けてメッセージをお願いします。
鈴木 私の就職活動を振り返ると、好きなものを熱量高く伝えられたことが良かったかなと思います。好きなものを深掘りして、自分だけの深い世界を持っておくのがおすすめです。特に、BS-TBSはマニアックな番組が多いので、自分の“好き”を突き詰め、言語化できる人が強いのかなと思います。
私はテレビや映画、音楽、漫画といったエンタメがずっと好きで、テレビ局やレコード会社などの就職試験を受けながら他の業種も受けていました。ですが違うと感じたら、一つの業界に絞ってみるのもいいかもしれません。自分の芯を曲げないことも大事かなと思います。
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鈴木駿
BS-TBS コンテンツ編成局 編成部。2019年入社。
営業・編成トラフィックを経て、現在は『天狗の台所 Season2』のほか、『サンド伊達のコロッケあがってます』『ラーメンを食べる。』『カンニング竹山の昼酒は人生の味。』の編成を担当。また、『土曜デラックス』では、映画の作品買い付けを担う。