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TBSのFortniteでのオリジナルゲーム企画が本格始動!メタバース事業の裏側

TBSテレビは、全世界で5億人がプレイしているといわれるオンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」上でオリジナルゲームを制作し、4月27日に「JAPANESE ZOMBIE SURVIVAL」、5月3日にに「HUMAN HEAD CLIMB」の配信をスタートしました。

昨年3月、Epic Games社は、Fortnite上でオリジナルゲームを開発・配信できる「クリエイティブモード」で、更に自由度の高い開発を可能にするツール「Unreal Editor for Fortnite(UEFN)」 を公開。今回はこのUEFNを用いて、オリジナルゲームを開発しました。

この企画は新規IP開発部に所属するメンバーが中心となって進めていました。なぜFortniteでゲーム開発をしようとしたのか、どんな思いが込められているのか、企画に携わった木村健二、吉原瑠那、佐竹颯太、相川拓也に話を聞きました。

世界中のゲーマーに愛されるコンテンツを目指して

TBSがオリジナルゲームの開発を始めた経緯は?

吉原 TBSでは、バーチャルエンタメ推進プロジェクトという社内横断型のプロジェクトで、様々なメタバース関連のプロジェクトの検討を進めていました。

その企画の1つとして、TBSの番組などのIPを使ったメタバース空間である「TBSランド」を作りたいという話になり、多くのユーザーを抱えるFortnite上で構築しようという話になりました。ディスカッションを重ねる中、Fortniteは「メタバース」の要素はありますが、やはり「ゲーム」なので、Fortniteのユーザーに向けたゲームを突き詰めようという話になり、番組のIPを使わない完全オリジナルのゲームを作る事にしました。

現在このプロジェクトは、2023年7月にできた新規IP開発部という部署に統合されて、この4人のメンバー中心に進めていて、Fortniteのゲーム開発はAlche株式会社にお願いしました。
 

TBS吉原瑠那、相川拓也

Fortniteのゲームを作ることになった理由は?

木村 TBS独自のメタバースのプラットフォームを一から作るとなると、そこに人を集めるためのプロモーションを自分たちで全て行う必要がありますが、Fortniteは日常的に人々が遊びに来てくれる環境が既にあるため、我々が一から集客する必要がないメリットがあります。また、Fortniteはグローバル展開されているので、世界に向けてコンテンツを発信できるところも魅力です。

開発面でのメリットで言うと、Fortniteは「UEFN」という開発ツールが提供されているので、ゲームを開発しやすい環境も整っています。そのため、今回は2本のゲームを4か月程度で作ることができました。Fortniteはユーザーの動向を見ながら、アジャイル的にアップデートしていくことができるので、リリース後のユーザーの反応を見ながら変えていくことができるという特徴もあります。

Fortniteで展開する場合、サーバー代を我々が負担する必要がなく、継続的に運用しやすいというメリットもあります。

今回リリースしたのはどんなゲームですか?

「JAPANESE ZOMBIE SURVIVAL」キービジュアル

相川 一つは「JAPANESE ZOMBIE SURVIVAL」(島コード:1037-3543-1629)というタイトルのゲームで、いわゆるゾンビを倒していくゲームです。Fortniteはプレイヤー同士が銃を撃ち合い、相手を倒して自分が長く生き延びるというのが一般的だと思いますが、協力して共通の敵を倒すゲームとなっており、最後には巨大なボスとの戦闘もあり、普段のFortniteでは味わえない体験ができると思います。

「JAPANESE ZOMBIE SURVIVAL」の1シーン

佐竹 普段のFortniteは三人称視点と言って、自分の背後にカメラがあり、自分が動かしているプレイヤーの動きがわかる仕様になっていますが、カメラの位置を高くし、動かしているプレイヤーを俯瞰的に見えるように変更しました。ゾンビに囲まれる様子が見える視点の新鮮味と、次々敵を倒す爽快感を味わえます。

「HUMAN HEAD CLIMB」キービジュアル

もう一つのゲーム「HUMAN HEAD CLIMB」(島コード:6482-8686-1670)は、目や鼻や口などの様々の顔のパーツで構成された、巨大で奇妙な顔型オブジェクトの周りを登っていくタイムアタック型のアスレチックゲームです。銃を撃って敵を倒すというシューティングスキルがなくても楽しめるゲームを作りたいと思って開発しました。

登っていこうとしても、顔の様々なパーツが進行の妨害をしてきます。人間のように目が二つ、鼻と口が一つではなく、あちこちに目や鼻がたくさんあるというイメージで、パーツごとにギミックが異なり、それをよけながら登っていくのは、なかなか中毒性があると思います。

「HUMAN HEAD CLIMB」の1シーン

「HUMAN HEAD CLIMB」の遊び方
1.Fortniteを起動
【対応デバイス】
 PC / Nintendo Switch / PlayStation 4 / PlayStation 5 / Xbox One / Xbox Series X/S
2.Fortnite上の検索欄で、下記の「島コード」で検索
 「JAPANESE ZOMBIE SURVIVAL」:1037-3543-1629
 「HUMAN HEAD CLIMB」:6482-8686-1670

開発中に意識したことは?

相川 いくつかありまして、まずは海外も含めた多くの人に触れてもらうことです。「JAPANESE ZOMBIE SURVIVAL」は、海外向けも意識し、和のテイストを取り入れました。また、10代に絶大な人気を誇る“フォトナユーチューバー”のLiaqN(りあん)さんに企画に入っていただき、プロモーションにも力を入れています。彼は海外のコンテンツに知見がありますし、世界に発信していく上で強みになると思っています。

また、繰り返し遊んでもらうこと、長時間遊んでもらうことも意識しています。一度プレイして満足するのではなく、多様な遊び方、難易度の変更やレベルアップの仕組みやコース設定を導入することで、飽きの来ない作り込みをしました。

TBSオリジナルゲーム企画始動時のビジュアル

佐竹 数あるコンテンツの中から選択してもらうことにも意識しました。Fortniteのプラットフォームには、TBS以外にもコンテンツを提供している制作者がたくさんいます。そこから選んでいただくために、検索のしやすさを考慮したジャンル設定やゲームタイトルの考案、アイデアの奇抜さや見た目のインパクトを強く意識したゲームのサムネイルを作成しました。

Fortniteのゲーム開発では、どんなところに苦労しましたか?

佐竹 ゼロからゲームを生み出すという点です。これまで、TBSは番組を題材にしたゲームを開発したことはありますが、今回はあえて番組のIPを使わず、プラットフォームに寄り添って作りました。Fortniteではどんなゲームが受け入れられるのか、どんなマップにすればユーザーが獲得できて収益化に繋げられるのか考えながら、なおかつユーザーにとってわかりやすくて誰でも遊べるような形にするのは難しかったです。番組IPを使わないゲームを制作することは、TBSがゲーム業界で認められるきっかけになるのではないのかなと思っています。

TBS木村健二、佐竹颯太

番組IPを使ったゲーム開発の魅力とは

一方、昨年9月には『風雲!たけし城』の「Roblox」ゲームが本ローンチされました。反響はいかがですか?

『風雲!たけし城』「Roblox」ゲームのビジュアル

木村 日本をメインでプロモーションしていましたが、アメリカやインドネシア、マレーシア、ブラジルといった海外のユーザーからもプレイされています。Robloxでは、配信したゲームのプレイヤーの属性データが見れるダッシュボードが提供されているのですが、2ヶ月間ぐらいマレーシアのユーザーの比率が1位だったときもありました。これはRobloxが世界で幅広くプレイされているプラットフォームであることと、『風雲!たけし城』という番組がグローバルに知名度があることの二つの要因があると思います。

「風雲!たけし城」Robloxゲームの遊び方はこちら

番組をベースにしてゲームを作る魅力は?

『風雲!たけし城』「Roblox」ゲーム内の1シーン

木村 昭和に放送されていた番組が令和にメタバースで復活することで、当時を知らないユーザーにも楽しんでいただけるのは非常におもしろいと思います。特にRobloxはZ世代、α世代のユーザーが多いので、若い人にも楽しんでいただける環境があるのは魅力的です。

番組をベースにしてゲームを作る上で難しいところは、番組という既存のフォーマットがある中で、ゲームをヒットさせるために、それをどこまで崩すかの判断かと思います。これまでも定期的にアップデートしてきましたが、今後はよりゲームとして受け入れられるような大規模アップデートをしていく予定です。

番組をベースにしたゲームと、番組の要素を使わないFortniteのゲーム開発ではどんな違いを感じましたか?

木村 Fortniteに関しては、グローバルなプラットフォームなので、全世界のユーザーに向けたコンテンツを作りたいと部内で話していました。その時に「番組」という枠に縛られるのではなく、あくまでFortniteのゲームとして世界で受け入れられるゲームを作る事を目指しています。

一方で、Robloxで展開している『風雲!たけし城』は、番組自体に認知度があるので、それを強みにどんどん展開できますし、フォーマット自体がおもしろいので、そのフォーマットを活かしたゲームを展開しています。

TBS木村健二、吉原瑠那、佐竹颯太、相川拓也

メタバース上での音楽フェスを初開催。多様なコンテンツ展開が進む

ところで、新規IP開発部が企画して開催されたメタバース音楽フェス「META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ」。これはどんなイベントだったのでしょうか?

「META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ」キービジュアル

木村 「META=KNOT」はメタバース上で開催する音楽フェスです。かつて「ライブの聖地」と言われていた赤坂BLITZのバーチャル空間を、VRChatというメタバースプラットフォーム上で再現し、そこで1日4組、4日間で計16組のバーチャルシンガーを集めた音楽フェスを開催しました。

Xやアンケートなどで、パーティクルライブ演出などVRならではの表現に感動したなどの声を多くいただき、VRChatでの同時接続数も他ではなかなか見られない数字を記録したようです。反響はとても大きかったと感じています。

META=KNOT 2024 アーカイブ動画:Week1Week2Week3Week4

「META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ」の1シーン

メタバース上での音楽フェスはTBSとして初の試みです。企画した意図は?

木村 今回イベントを開催するVRChatは、YouTubeやTikTokのようにUGC(一般ユーザーによって作られたコンテンツ)の要素があるプラットフォームです。VRChatは、まだ一般の人々には知名度は高くないですが、ソーシャルVRとも言われていて、アバター同士でバーチャル空間内で交流が行われていて、世界から多くの方がその空間に集まっています。

一般の方自身が、VRChat内に空間を作り公開する事もでき、才能溢れるクリエイターが集まっています。例えば、ニコニコ動画から米津玄師さんが出てきたように、VRChatからも新しい才能が出てくるのではないかとプロジェクトチームでは期待して企画しました。世の中の人に、この新しい才能を知ってもらうキッカケとなればと思っています。今回、新しいバーチャルシンガー「猫 The Sappiness」などもデビューしましたが、VRChatから新しい音楽シーンが誕生する事を期待しています。

バーチャルシンガー「猫 The Sappiness」

アンケートの中には、「今回のイベントを通じて新しいアーティストを知る機会になって良かった」、「新しい推しが出来た」という声も多くいただいておりまして、このイベントの目的は果たせたのかなと思っています。

今回、復活したバーチャル赤坂BLITZのレンタルも開始し、TBSだけでなくさまざまな企業やアーティストと共創しながら、よりサステナブルに、この世界が盛り上がる形を作ることができないだろうかと考えているところです。

TBSはゲーム開発やメタバース事業の本格化が進んでいます。最後に今後の展望や、ゲーマーの方にメッセージをお願いします。

木村 Fortniteでのオリジナルゲームも『風雲!たけし城』のRobloxゲームも、ダッシュボードからユーザーの大まかなデータがわかるので、知見をためながら次のゲームに活かしていきたいと思います。

吉原 Fortniteはリリースしてからもアップデートできることが強みなので、ユーザーの反応を見ながらリリース後も改良していきたいです。

佐竹 ゲームは無料なので、まずは試しにプレイしてもらいたいです。Fortniteのクリエイティブモード内にTBSのゲームをたくさん出して、「TBSランド」という形でまとめられたらいいなと思っています。そのためにリリース後のデータを分析しながらトライアンドエラーを繰り返し、事業拡大していきたいです。

相川 TBSとしてはゲーム事業を頑張っていきたいと思っているので、一緒に取り組むような会社さんがいらっしゃったら嬉しいですね。

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TBS木村健二、吉原瑠那、佐竹颯太、相川拓也

木村健二
2006年TBSテレビに入社。入社後、ドラマ・音楽・報道など各番組やプロジェクションマッピング・舞台など幅広いジャンルで、CGプロデューサー・ディレクター・制作業務を担当。その後、TBSが保有する様々な技術のライセンス事業など、デジタル領域の新規ビジネスを担い、現在はメタバース関連事業やブロックチェーン関連事業などに従事。

吉原瑠那
2019年TBSテレビに入社。入社後、宣伝部(現プロモーション部)でドラマやバラエティといったコンテンツやイベント・キャンペーンのプロモーションを担当。現在ブランドコミュニケーション戦略部でコーポレートブランディングを行っている。新規IP開発部を兼務し、メタバース関連事業に従事。

佐竹颯太
2021年TBSテレビに入社。入社後、テクノロジー部門で映像素材を管理・編集するシステムの運用・開発業務やラジオ番組と同時にVtuber配信をするシステムの開発を担当。新規IP開発部を兼務し、ハイパーカジュアルゲームの開発やメタバースゲームの開発に従事。

相川拓也
2021年TBSテレビに中途入社。入社後、プラットフォームビジネス局DXコンテンツ部にて、TVer・TBS FREE・U-NEXTなどの無料・有料での配信事業の拡大に従事。現在はTBS FREEの編集長を務める。Fortniteの熱狂的なプレイヤーでもあり、本プロジェクトに参画。

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