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TBSラジオ『脳盗』『東京閾値』担当の松重暢洋に聞く、番組制作の裏側

世界的に音声コンテンツが急成長している昨今、TBSラジオは地上波・Podcastともにさまざまなジャンルの番組制作を行っています。

入社6年目の松重暢洋は、制作部としては珍しく、1年目から一貫して番組作りを担当。ワイド番組『パンサー向井の#ふらっと』に携わる一方、『脳盗』や、Amazon audible『東京閾値(tracks)』など自身で企画も手掛けています。企画・制作にどんなこだわりがあるのか、話を聞きました。

Spotifyの人気コンテンツからTBSラジオで番組を企画

『脳盗』キービジュアル

松重さんが担当している『脳盗』は、Podcast番組『奇奇怪怪明解事典』(※現在は『奇奇怪怪』として配信中)を自主制作していたDos MonosのTaiTanさん、MONO NO AWAREの玉置周啓さんに声をかけて始まったそうですね。

松重 そうですね。もともと『奇奇怪怪明解事典』を愛聴していて、TaiTanさん、玉置さんと一緒にTBSラジオで何かできないか考えていました。というのも、Dos MonosとMONO NO AWAREは、どちらもライブを観に行くくらいのファンだったんですよ。それで、知り合いを通して何度かお会いするうちに、「一緒にやりたいです」と言ってくれて番組が始まりました。

番組内のトーク内容やコーナーは、松重さんも企画提案しているんですか?

松重 提案することもありますが、番組の構成を全て考えているわけではありません。毎週TaiTanさんと3~4時間くらい会議をしていて、そこで出た内容だったりを最終的にトークに落とし込んでもらっています。

番組内の「脳盗王」という企画で街裏ぴんくさんが優勝し、TBS Podcast『虚史平成』が始まりましたね。

松重 そうですね。『虚史平成』もプロデューサーという形で携わっています。ここ最近、「平成」を扱うコンテンツが増えてきていますが、それをすべて嘘で話したらおもしろいものができるんじゃないか、というコンセプトで始まりました。

大変ありがたいことに、番組が始まったタイミングで『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』に街裏さんが出たことも後押しし、興味持って聴いてくれる方が増えました。街裏さんの才能のおかげです。

『脳盗』を作る上で『奇奇怪怪』とはどう差別化を意識していますか?

松重 『脳盗』は地上波番組なのでPodcastよりも音楽を自由に使えます。番組ジングル、トーク、BGM、サウンドステッカーといった音の要素をシームレスに編集で組み立て、一番気持ちいいタイミングで曲をぶつける。「この曲のためにすべてがあったんだ」みたいな、その曲の聴き方が完全に変わってしまうような体験を提供できる番組を目指しています。

「おもしろい」「かっこいい」といった名前のついた感情になる前の、「脳盗」される瞬間を求めて聴いてくれたら嬉しいです。

編集は楽しいですか?

松重 楽しいですよ。編集がラジオの仕事の中で一番好きですね。僕は学生時代に映像制作をやっていたので、ある程度スキルを落とし込める部分もあるのかなと思います。

サウンドステッカーもほぼ毎回作っています。少し乱暴な言い方ですが、音回りがダサくならないよう、とにかく気持ちいい放送を目指して編集しています。

企画や編集だけでなく、『東京閾値』では自ら出演も


2023年4月から半年間、地上波で放送されていた『東京閾値』では、ご自身が出演し、都内のあらゆる場所で取材されていました。この番組の成り立ちは?

松重 これは『金曜たまむすび』で放送していた「たまむすびTOKYOもん」というコーナーを継承したものです。東京にまつわる人、もの、場所を毎週一つピックアップして特集するコーナーで、僕はこれを2~3年担当していました。

『金曜たまむすび』が終わってから、編成の方に「東京のルポみたいな番組をできないか」と聞かれのですが、「たまむすびTOKYOもん」でやっていたことを30分番組に落とし込むことなら自分一人でできると思い、この形に落ち着きました。

番組内では都内のいろいろなところに行かれていますが、取材先はどうやって決めていたんですか?

松重 『金曜たまむすび』の放送作家をしていた洛田二十日さんと一緒に考えています。これまでいわゆるメディアで大々的に扱われてこなかった場所で市井の人々に声をかけ、あまり知られていないその土地のリアルを聞いていました。

取材相手とコミュニケーションをとるうえでどんなことを意識していますか?松重さんは取材が上手ですよね。

松重 それはうまく編集しているだけですから…これは自分で編集することのメリットだと思います。一つ意識しているとしたら、編集や撮れ高を意識しすぎないことですかね。「たまむすびTOKYOもん」のときは、ワイド番組のコーナーの一つなので、1時間取材したとしても2~3分しか流せなかったんです。だから、その分さえ録ればいいので、自分が欲しい答えに誘導しているような訊き方をしてしまっていることに後から気付くこともありました。でも、そういうのは意外と見抜かれてしまうもので、相手も身構えてしまう。だから極力目線と波長を合わせるように意識していました。

現在はリニューアルされ、『東京閾値(tracks)』として10月からAmazonオーディブルで独占配信中です。これはどんな経緯で?

松重 Amazonオーディブルさんがこの番組に興味を示してくれたんです。コンテンツに魅力を感じていただいたのかなと思っています。

地上波放送の頃は市井の方に話を聞きつつ、玉袋筋太郎さんやなぎら健壱さんなど東京にルーツを持った方を取材する回もあったのですが、リニューアル後はアーティストや芸人の方にその人ならではの東京観を聞いています。

4か月の育休はキャリアを見つめ直す転機に

ところで、松重さんはTBSラジオにはどんな思いで入ってきましたか?

松重 好きなものがいろいろある中で、中学時代からむさぼるように聴いたり見たりしてたのが音楽とお笑いでした。ラジオなら音楽とお笑いの両方に携わることができるし、その二つを融合しておもしろいことをやっている人もいるなと思い、TBSラジオを受けました。

学生時代は何をしていましたか?

松重 大学は映画や舞台など文化的なことを志す学生が集うような学科で、ショートフィルムを作ったり、CMコンテストに応募したりしていました。当時、ちょうどYouTuberの勃興期で、カメラや機材も比較的安く手に入ってクオリティ高いものを作れる時代だったので、周りにも映像をやってる友人が多かったです。

松重さんは入社以来ずっと制作部にいられるそうですね。今後も制作をやっていきたいですか?

松重 正直、まだ何も成し遂げられていないので、制作で頑張らせていただけるうちはやりたい気持ちはあります。ただ、そこは会社の判断なので、強い要望があるというよりも、例えば営業部に行ったとして、自分にできるのかなという不安はあります。得意なことと苦手なことが両極端にあるので。

現在、さまざまな番組を手掛けられていますが、ここまでの転機は何だと思いますか?

松重 強いて言えば、2年前に約4か月間、育休をとったことですかね。それまでは既存の番組を担当していましたが、どこかでこなしていたというか、甘えている感覚があったし、自分で動いて何かをするというのができていませんでした。でも、会社という組織から一旦離れることで、時間に余裕ができたので、どうやって自分のキャリアを育てていくか考えていました。

育休期間を4か月にしたのはなぜですか?

松重 僕は10月に育休に入ったので、2月くらいに復帰して4月の改編のタイミングに向けて会社になじめるようにと4か月にしました。TBSラジオは育休を取得する男性社員も多いです。

将来はどんな風になりたいですか?

松重 偉くなりたいですね。半分冗談ですけど、半分は本気。将来的には『脳盗』のような番組のユニバースをどんどんつなげていきたいと思っています。今は30分番組ですけど、枠を広げて1時間番組、週1のワイド番組、ゆくゆくは月~金曜日のワイド番組になるとか、そういう上昇志向はあるので、自分が今担当している番組をどう育てていくのか考えていきたいです。

最後に、TBSラジオをはじめ、ラジオ業界を目指す就活生にアドバイスをお願いします。

松重 僕は正直、ラジオはあまり聴いてはいませんでしたが、学生時代にずっと好きでやっていた映像を作ったり編集したりすることは、意外と今の仕事にも繋がっています。自分ではそんなに頑張っている感覚はないのに、人から評価されることもあるので、学生のうちから好きなものややりたいことがある人は強いと思います。自分は何をしているときが心が躍って脳が喜んでいるのか突き詰めていけば、どうにでもなるんじゃないかなと思います。

松重暢洋
2018年TBSラジオ入社。『アフター6ジャンクション』『TALK ABOUT』などの番組ADを務めた後、現在は『脳盗』『東京閾値』『パンサー向井の#ふらっと』
などを担当する。

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