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アナウンサーからセンター長へ!3児の母、小川知子のキャリアパス
2023年7月、TBSで長年アナウンサーとして活躍してきた小川知子さんがアナウンスセンター長に就任しました。TBSで活躍する女性社員は数多く存在しますが、アナウンサーからセンター長への昇進は26年ぶりという珍しいパターンです。表舞台で活躍していた彼女が、裏方に徹しようと決めたのはなぜでしょうか。その理由や、アナウンサーとしてTBSで働く魅力について聞きました。
入社以来、初めての内示でまさかのセンター長に
2021年7月に現場を離れ、マネジメント業務に専念するようになった小川さん。今年7月にアナウンスセンター長に就任しましたが、内示を受けたときの状況は?
小川 社長から直々に内示をいただきました。社長はいつもフランクな方なんですが、その時はすごく緊張感が伝わってきました。ですから私自身は、これは「できる/できない」とか、「受ける/受けない」とかいうレベルじゃなくて、”やらなきゃいけない”と感じました。これまで異動したことがなかったので、内示は入社以来、初めての経験でした。
センター長になり、具体的にどんな仕事をしていますか?
小川 主にアナウンスセンターの社内調整窓口です。52人いるアナウンサー宛にいろいろな案件のご相談がくるのでその調整を行います。ほかにはレギュラーシフトや評定も行います。来年から評定方法も変更があるで、今はその運用方法についてかかりっきりです。立場が変わって変化したことといえば…相談する相手ですかね。これまでお世話になってきた現場の担当者に加えて、局長とも話すことが増えました。
アナウンサーとして表舞台で活躍していたのに、なぜマネージャーサイドへ行こうと思ったんですか?
小川 自分で選択したというよりは会社の方針ですね。今まではプレイングマネージャーのように、プレイヤーでありマネージャーである、といった緩い仕切りでやっていましたが、2年前にもっとしっかりマネージメントサイドとプレイヤーサイド分けようということになり、私に声がかかりました。
現場から完全に退くと宣言される方は、アナウンサーの中でも珍しいと聞きました。マネジメントに徹するのも覚悟が必要だったのではないでしょうか?
小川 どうでしょう、でもずっとモヤモヤしていたところもありました。自分がアナウンサーの一席や、生放送の枠を持っていることで、後輩たちの活躍の場を一つ奪ってしまっていると感じていました。経験がない若手だからまだできない、と慎重になる部分もあるのですが、本人の努力と現場の助けによって若手自身も大きく成長できると思っています。アナウンサー試験をくぐり抜けてきた人たちなので能力的には十分で、チャレンジングなことでも頑張れる人が多いんですよ。だから、どんどんチャンスが増えたほうがいいなと思っていました。
でも、現場からは「小川さんでお願いします」という声もあったので自分から断ると話がややこしくなってしまいそうで。悩んでいたときにマネジメントの話が来たので、流れに身を任せてみました。
もっとプレイヤーでいたかったとか、フリーアナウンサーになりたかったとか、そういった思いはなかったんですか?
小川 フリーになるには実力だけでなく、あらゆる点で覚悟が必要です。私はどうしてもプレイヤーでいたいというわけではなかったですし、自分の感覚では実力も覚悟もないと思っていました。だから、同期の小島慶子さんと堀井美香さんの姿を見ると、相当な覚悟があったんだろうなと思います。
子育てで意識しているのは、「健康・安全・時間」
アナウンサーという仕事にどんな魅力を感じていましたか?
小川 アナウンサーの仕事は本当に楽しいですよ。生の一次情報に触れられて、さらにそれを自分の言葉で伝えられることが何よりもやりがいがあります。災害現場やアテネオリンピックの現場、裁判の判決を聞いた被害者の方々へのインタビューなど、どれもすごく心に残っています。アナウンサー時代、特に子どもが産まれる前はいろいろな現場に出張していました。
小川さんには3人のお子さんがいらっしゃいます。子育てしながらセンター長として働くのは、なかなかハードな印象です。いかがでしょうか?
小川 大変といえば大変ですね。でも、TBSには働くお母さんが多いので、皆さんの働き方を参考にしていました。家庭と仕事の優先度や働き方って人によって意外と違うのだなとわかり、考え方が近い方に寄せていった感じです。子どもが規定の年齢に達するまでは有給の時短勤務もできますし、産休・育休など含めて制度的にも充実していると思います。
子育てでどんなことを意識していますか?
小川 子どもたちにもよく言っていますが、「人生で大事なことは健康と安全と時間」です。何かあったらこの3つを判断基準にしています。
これからどんどん1人で行動していくようになるので、子どもたちには何を優先するのかに悩んだときはこの3つを判断基準にするよう、伝えています。例えば、友情やその場の空気で流されるときもあると思うんです。「みんながやってたから」といった場面もあるでしょうし。でも「それは本当に安全かな?」とちゃんと考えてほしいんです。自分の「健康と安全と時間」を大事にするのはもちろんですが、同じように友達や周りの人の「健康と安全と時間」も大事にしようねと。
TBSアナウンサーなら、テレビ以外にラジオでも活躍できる
ところで、小川さんは学生の頃からアナウンサーを目指していたんですか?
小川 全然そんなことないんです。大学生の頃は競技スキーをやっていて、ほぼ山に籠っていました。大学3年生になり、父に「そろそろ就職先を考えないと」と言われてから、「そういえば以前、母がアナウンサーという仕事があると言ってたな」と思い出したくらいです。その後、アナウンサーの学校にも行ってみましたが、合わなくてすぐ辞めてしまいました。
アナウンサー以外の就職試験も受けていましたか?
小川 受けていません。就職試験の中でもアナウンス試験が一番早かったので、TBSの内定が出た段階で就活を終えて、その後は教育実習に行きました。自分の言葉で人に何かを伝えることは当時から好きだったんだなと感じています。
アナウンサーとしてどんな人材がほしいですか?
小川 基本的に嘘をつかない人です。アナウンサーの一番の仕事は「情報をお伝えすること」なので、“親しみやすさ”と“信頼”が大きなキーワードになります。例えば面談で「○○って知ってる?」と聞かれて、知らないのについ「知ってます」と言ってしまうのはNGです。知らないなら「これから勉強させていただきます」と言えばいいし、「知りません」と言えることもすごく大事。その場しのぎで取り繕うのは、長い目で見るとマイナスだと思います。
アナウンサーとしてTBSで働く魅力って何でしょうか?
小川 TBSはテレビだけでなくラジオもあるので、アナウンサーとして個性を出しやすいと思います。ラジオは自由にしゃべるところが多く そこに個性が出ます。例えば 番組冒頭挨拶のあとフリートークがあったりして、その時間は自由に喋っていいんですよ。テーマは自分次第ですから、そこですごく個性が出ます。
でも実はこの「自由にしゃべる」って こわいんですよ。何でもいいよ、と任せられるとかえって難しく考えてしまいます。何をしゃべったらいいんだろう?なんで今その話?って聞かれたらどうしよう、とか。そこでポイントは、「伝えたいこと」を決めたら誰にどう伝えるか意識することです。例えば、お友達やお母さんやおばあちゃんといった年代の違う身近な人に向けて話してみる。一つの話を3人くらいに喋ると、だんだん慣れてきて、どこで聞き手が理解につまずくのか、どこで感心するのかがわかるんですよ。そうやって徐々に話がこなれていくと思います。
アナウンサーの仕事は毎日うまくいったり、いかなかったりの繰り返しで飽きないお仕事だと思います。個人プレーとチームプレーの両方の楽しさがあると感じます。
最後に就活生にアドバイスをお願いします。
小川 学生のうちは何らかの答えがある世界にいる人が多いと思いますが、社会に出たら答えがない上に、今は変化が激しい時代です。だからこそ、TBSでは一緒に考え、悩んでくれる人を募集しています。
TBSの特徴を挙げるとしたら…照れ隠しもあってかTBSのことを積極的にアピールしない人が多い印象です。例えるなら、TBSは自分の親みたいな感覚だと思います。親のことを大好きって外では言わないけど、じゃあ嫌いかといったらそうでもなくて、信頼してるし、好きだし、ベースになっている。そんな存在だと思います。他社さんでは愛社精神を全面に出しているところもありますが、実はTBSの社員も会社への愛に溢れているんですよ。
小川知子
1995年TBSテレビにアナウンサーとして入社。報道・情報・ラジオ番組などに出演ののち、2023年7月、アナウンスセンター長就任。
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