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TBSの新たな脚本家発掘プロジェクト「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」に込めた思いとは
TBSは、次世代の脚本家を発掘・育成するためのプロジェクト「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」を実施すると発表しました。9月1日から脚本の公募を開始し、受賞者には賞金と、副賞として受賞者の中から必ず1名以上の脚本家デビューが約束されているほか、ドラマプロデューサーと共同でドラマの企画開発をしていく「ライターズルーム」の参加権も付与されます。
このプロジェクトにはどんな意図があるのでしょうか。コアメンバーであり、ドラマ部に所属する韓哲と松本友香に話を聞きました。
「連ドラ・シナリオ大賞」の反省を踏まえ、新たなプロジェクトを発足
「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」の企画はどのように始まったのですか?
韓 最初はTBSが過去6回にわたって行ってきた「TBS連ドラ・シナリオ大賞」を復活しようという話から始まりました。復活することに異論はありませんでしたが、当時は反省すべき点が多々あったので、どうやって進めていけばいいのか時間をかけて議論しました。
「連ドラ・シナリオ大賞」では、どんな反省点があったのですか?
韓 当時はドラマ制作部だけでやっていたので、人を含めたリソース不足が慢性化していました。当然、通常業務もありますし、忙しい中で運営するので、毎年ちゃんと開催するという形がとれなかったんです。ちょうどその頃、働き方改革の流れもあって、今のまま続けるのは難しいという判断があり、しばらく中断することに。気付けば6年近く経ってしまいました。
今回も、やるからにはまた途中で終わってしまうのは避けなければならないので、編成部やTBSスパークルの方にも参加してもらい、前回より多くの人数で進めていく予定です。
「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」に期待することは何ですか?
松本 タイトルに「NEXT」が入っているように、次世代の目線を持つ人に出会えたらいいなと思っています。幅広い年代の方に応募していただきたいのはもちろんですが、これまでにない斬新なアイディアを持っていたり、グローバルな目線を持っていたりする人に注目したいです。
連続ドラマの1話目の脚本を募集していますが、連続ドラマにこだわる理由は?
松本 今や地上波以外に動画配信サービスでも多くのドラマが配信されている時代ですが、ドラマというコンテンツであれば、単発のものより連続ドラマが変わらず人気ですし、そもそもTBSはまず地上波を意識しているからです。
脚本に加え、企画書も出していただく点は他のシナリオコンクールとは違うところなので、連続ドラマとの適正や新しい才能が見えてくるのでは、と期待しています。
韓 書き手の方からすると、単発ドラマの方が完結した作品を書けるから完成度の高いものができると思いますし、それはそれで当然読んでみたいですが、我々は連続ドラマに最も力を入れて作っているので、連続ドラマを作るにあたって必要な、続きを見たくなるような作品を書ける人に出会いたいですね。
受賞者とともにドラマの企画開発をしていく「ライターズルーム」の設置も
「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」は受賞作を決めるだけでなく、受賞者は「ライターズルーム」に参加できるんですよね。
韓 そうですね。選ばれた人たちの中から希望する方にはライターズルームのメンバーになっていただき、一定の期間をかけて連続ドラマの企画から脚本までを一緒に作っていく予定です。今回は複数名選ばせていただくので、皆さんに参加してもらえば約7人集まります。これはTBSとしては初めての試みですね。
普段はプロの脚本家さんとお仕事されているので、新人育成はハードルが高いように感じますが、どんな意図があるのでしょうか?
韓 やってみないとわからない部分もありますが、ここで将来的にご一緒できる方と一人でも多く出会うことができれば嬉しいなと思っています。脚本家は孤独な作業が多いですし、同期もいないですし、横のつながりもなかなか作りづらい。脚本家さん同士のコミュニケーションで生まれてくるアイディアもあるはずなので、ライターズルームに参加することで、脚本家を目指すみなさんにとっても良いきっかけが生まれたらいいなと思います。
松本 私たちプロデューサーや監督、そして脚本家の同士、互いに良い環境になるといいですね。というのも、私のような若手プロデューサーは、時々、個人的に新人脚本家さんとプロット開発をしているのですが、そういう人たちの方が連続ドラマへの固定概念がないので斬新でおもしろいものが生まれることがあるんですよ。私も連続ドラマの作り方に慣れ、「これだと連続ドラマには向いてないな…」という保守的な考えになってしまうことがあります。経験が少ないからこそ出てくる斬新なアイディアを見てみたいですね。
普段から脚本を読む機会がたくさんあると思いますが、どんな脚本に魅力を感じますか?
松本 やっぱり、セリフがおもしろい脚本は特別だと思います。その人にしか書けないセリフやキャラクターだと、本を読むかのように読み進めていけるんです。「何でこのセリフを発したんだろう」「なんでこんな行動するんだろう」などと考えて、読むのに詰まってしまうときもありますから。
韓 僕も同じです。付け加えるとすれば、「人」を描けていることが一番大きなポイントですかね。あとは、その人の書きたい想いやオリジナリティがある人の脚本に魅力を感じます。
TBSなら、ドラマの放送だけで終わらないコンテンツ展開ができる
ところで、お二人がドラマを作る仕事をしようと思ったきっかけは何ですか?
松本 私は子どもの頃からドラマが好きで、雑誌『テレビジョン』に載っていたドラマの登場人物の相関図を、自分の理想のキャスティングに貼り替えて遊んでいたんです。そしたら、「そういうのはテレビ局のプロデューサーがやる仕事だよ」と親が教えてくれたので、ドラマのプロデューサーを目指しました。
TBSを選んだのは、女性で活躍するプロデューサーがいる局を調べていたら、TBSに磯山晶さんがいたからです。それと、TBSなら1年目からドラマ部に配属でき、ずっとドラマを作ることができるというのも決め手になりました。
韓 僕は高校生の頃、すごく悩んでいた時期に観た、フランク・キャプラ監督の作品に勇気付けてもらったのがきっかけです。どうすれば映画やドラマに関わる仕事ができるのか考えていたときに、テレビ局なら何の実績がなくてもものづくりができるのではないかと思ったので、TBSを受けました。
これまでTBSでドラマを作ってきて、どんなところにTBSの魅力を感じていますか?
松本 やりたいことがあったら、結構何でもできるところですかね。例えば、『君の花になる』では、8LOOMというアイドルを作り、そこからライブイベントやグッズ販売など、ドラマだけでは終わらないコンテンツ展開が生まれました。最近は特に一つのコンテンツからいろいろなことに膨らませていこうという流れができていて、話に乗ってくれる人も多いです。アイディアをくれる人は他部署にも増えてきているので、ビジネスの良い流れが生まれ始めているなと感じています。
韓 TBSは放送局であると同時に制作会社でもあります。世界で見ると珍しいタイプの会社かもしれません。安定した制作環境の中で作って学びながらお給料をもらえるので、クリエイターを目指す方にはとても魅力のある会社だと思います。
最後に、「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」に挑戦する脚本家さんをはじめ、ドラマに関わる仕事をしたい人にアドバイスをお願いします。
松本 最近、就職試験の面接官をするようになって思うのは、他の人があまりしたことのない経験がある人の話はおもしろいんですよね。その人だから出せるアイディアや、ビジネスの考え方が生まれてくると思うので、個性的な経験をしておくといいと思います。就活生の中には「ドラマに関わる仕事をしたいけど、制作に関わりたいわけではなく、ドラマの宣伝やビジネスをやりたい」という学生さんも結構いるようです。その発想もおもしろいと感じていて、制作プロデューサーと一緒になってどんどんアイディアを作ってくれる人が増えるといいなと思います。
今のTBSは地上波連続ドラマ3本以外に深夜ドラマもあり、動画配信サービスも増えてきて、コンテンツを出す窓口が広がってきています。「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」では、テレビ局のドラマという固定概念をなくし、世界に通用するアイディアを楽しみにしています。
韓 ドラマ業界を目指すなら、何か一つでもいいので、好きなドラマがあることと、それのどこが好きなのか語れるようにしておくといいと思います。今まではこの業界に入るための道が限られていたので、興味があったのに断念した方もいらっしゃるかもしれませんが、コンテンツのニーズが高まっているこの時代には、すごくたくさんのチャンスがあると思います。この業界は、ものすごくつらい下積み時代を何年も経験しないといけないというイメージがあるかもしれませんが、変わってきている部分もあるので、興味がある方は臆せず目指してほしいです。
特に、脚本家は何歳でもなれますし、年齢を重ねたことでより書きたいものが生まれた人もいると思うので、一度断念された方もぜひ「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」に挑戦してもらいたいです。
韓哲
1997年TBS入社。報道やバラエティのディレクターを経て、2006年からドラマ制作部へ。『家族ノカタチ』(2016)、『アルジャーノンに花束を』(2015)、『S -最後の警官-』(2014年)、『ATARU』(2012)などを担当。現在放送中の火曜ドラマ『18/40~ふたりなら恋も夢も~』をプロデュース。
松本友香
2015年TBS入社。入社3年目に『3人のパパ』(2017)でプロデューサーデビュー。『私の家政夫ナギサさん』(2020)、『この初恋はフィクションです』(2021)、『ユニコーンに乗って』(2023)などを担当。
■TBS NEXT WRITERS CHALLENGE
https://www.tbs.co.jp/tbsnextwriterschallenge/
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