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火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』の美術デザイナー・TBSアクト安藤帆南がセットに込めた思いとは

TBS系列で毎週火曜よる10時から放送中の火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(以下:『18/40』)。18歳の未婚妊婦と、40歳目前のアートスペシャリストの間に芽生える友情やそれぞれの恋愛模様が描かれています。同ドラマの美術デザインを担当したのは、TBSアクトの安藤帆南。『18/40』の美術デザインに込めた思いや、デザインが生まれる過程などを聞きました。

主人公・瞳子のマンションは抑揚や質感を意識

『18/40』では、どの部分をデザインしましたか?

安藤 今回は、福原遥さん演じる仲川有栖のアパートと、深田恭子さん演じる成瀬瞳子のマンション、通うクリニックの診察室や廊下などのセットをデザインしました。基本的に毎回、ドラマの中で登場する頻度が高い場所はセットを建てて、他はロケで撮っています。

ロケは基本的に美術制作の方が担当してくれます。箱物件と言われる飾りが多いロケに関してはデザイナーが担当することもありますが、その区分けは担当するデザイナーと美術制作によって変わりますね。

特にこだわったところは?

安藤 瞳子のマンションです。ト書きに「センスよく作品が並んでいる」と一行しか書かれていなかったので、どうするか悩みました。高層マンションという設定は決まっていたので、それを守りつつ、職業のアートスペシャリストにあわせてリノベーションした空間に作品が並んで絵になるような空間にしました。作品は、ドラマの監修を務めてくださったThe Chain Museumのアートスペシャリストの塚田さんが選んでくださいました。

火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』のセット


ほかにも、伝わるかわかりませんが、裏テーマとして意識したのは高低差を意識しました。セットではよく使われている手法ではありますが、リビングに向かって下がっていくことで、広い空間の中にも抑揚がついてみえるように取り入れました。また、面によって表情が変わるように、壁の質感を変えたり、タイルを入れたりと質感を変えて間延びしないように意識しています。

並んでいる家具も安藤さんが選んだ?

安藤 家具は装飾部の方と話し合いながら選びました。基本的に買うことができないので、毎回タイアップという形で借用していただける企業さんを探したり、大道具で作ってもらったりします。

今回で言うと、間仕切りのところに置いたガラス製の棚は、私がネットで見つけた写真をもとに図面を書いて、大道具さんに作っていただいたものです。アイディアを出すのはデザイナーですが、作ってくれるのは大道具さんなので、「どうしたらできますか?」と相談しながら進めています。

火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』のセット

不測の事態は日常茶飯事、デザインは発注ギリギリまで検討

デザインはどうやって考えていますか?

安藤 台本を読んでお芝居を想像しながら考えています。台本通りの動きが自然にできるように、かつ部屋として違和感のないようにする必要があるので大変な部分もありますが、そこがおもしろさでもあります。例えば、入り口とキッチンの距離があるとこの動きができないかも…など図面をぐるぐる動かす作業を延々としてます。

作業の流れとしては、最初にイメージボードを作り、監督やプロデューサーとイメージをすり合わせながら、一緒にイメージを膨らませていきます。セットの色合いなど、台本に書いてない部分はデザイナーのイメージで0から立ち上げている部分も多いです。

デザインは何を参考にしていますか?

安藤 Pinterestを使うのが一番近道ではありますが、私は本や雑誌を参考にすることが多いです。新しい案件が始まるときは、毎回最初に本屋に行って、インテリアなどの本を見ながらイメージを膨らませています。私は大学で日本画を専攻していたこともあり、建築の知識は基礎的なことしかわからないので、勉強しながら進めています。

デザインはいつ頃から考えていましたか?

安藤 『18/40』は5月末にセットイン(※スタジオセットでの撮影開始日)が決まっていて、そこからセットの建て込みに1週間、発注に2週間かかるので、逆算すると4月末には発注しなければ間に合わない状態でした。なので、今回は3月から考え始め、4月には提案し始めて、徐々に決めていくんですが、デザインは発注ギリギリまでずっと考えています。

デザインにこだわっていると、発注が間に合わないこともあるのでは?

安藤 当然あります(苦笑)。そのときは「最悪リミットいつですか?」と聞いて、謝るしかありません。デザイナーの横で大道具さんや小道具さんが待ってくれているので、「作れるところから作ってください」と伝えています。

監督やプロデューサー、技術部などいろいろな人の意見が重なって、急にプランが変わることもありますし、早めに進めていても毎回何かしら想定外のことが起きてしまうので、どうしてもギリギリになってしまいます。でも、少しでも作品を良くしたいので、できるだけ意向に沿うためにギリギリまで粘っています。

TBSアクト・安藤帆南

演者も絶賛した、『クロサギ』甘味処セットのこだわり

今まで手がけた作品で特に大変だったものは?

安藤 スケジュールの都合で大変だったのは、『クロサギ』ですね。他のドラマよりも準備期間が限られていたので、美術プロデューサーと協力しながら急いで進めていました。誰のせいでもない、不測の事態はよくあることです。

『クロサギ』は2006年4月期の放送以来、16年ぶりにドラマ化されました。前作と比較される部分もあったと思いますが、セットデザインも大変だったのでは?

安藤 セットもバーではなく、「かつら」という甘味処と前作とは設定が変わった空間を作らなくてはなりませんでした。

亭主が三浦友和さんということは聞いていたので、「三浦さんがいてかっこいい空間を作ろう」というのをモチベーションにデザインしていました。普段は演者さんというよりも、キャラクターをイメージしながらデザインしていますが、『クロサギ』はキャスティングの印象が強かったです。

特にこだわったところは?

安藤 甘味処「かつら」の庭の部分です。「かつら」は昼間はお客さんがきて賑やかで、夜は裏取引の場所になるという二面性を持った場所である必要がありました。雰囲気をガラッと変えるためには外光がポイントだと思ったので、庭をがっつり作って、掃き出しの外光が入る部分を多くしました。昼間はそこから光が入って明るくなり、夜はトーンが落ちて間接照明だけで見せる、というところにこだわりました。

ドラマ『クロサギ』のセット

台本には「庭」と書かれていたんですか?

安藤 書かれていません。庭は背景としてしか使われなかったので、ここで演技するシーンは一度もなかったですが、かなりこだわって日本庭園のような広い庭を作りました。周りからは「本当に抜けだけのために作るの?」と言われましたが、あの庭があるからこそ、空間に奥行きがあって綺麗に見えたと思うんです。

ドラマ『クロサギ』のセット

これを知った上で見直したら、印象が変わりそうですね。反響はいかがでしたか?

安藤 一番嬉しかったのは、制作発表会見で演者さんがセットを褒めてくださったことです。細部も作り込まれていたと言ってくださいました。苦しいときもありますが、こういった反響が糧になるので、美術デザイナーの仕事はすごくやりがいがあると思います。

TBSアクト・安藤帆南


安藤帆南
女子美術大学 美術学科日本画専攻卒業
2019年アックス(現TBSアクト)入社、バラエティのドラマの美術制作、デザインアシスタントを経て2022年からチーフデビュー。主なデザインを担当した番組は「クロサギ」「100万回言えばよかった」など

■火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』
https://www.tbs.co.jp/1840_tbs/

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