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『形から入ってみた』総合演出の須藤有加に聞く、バラエティ制作の魅力

TBSの『形から入ってみた』は、変わりたい女性を応援する密着バラエティ。形から入ってみたら人は中身まで変わるのか、1か月かけて検証していく番組です。昨年9月に初回放送され、7月7日よる10時から特番としてオンエアされます。同番組の総合演出を担当するコンテンツ制作局の須藤有加に、番組の見どころやバラエティ番組を作る魅力について聞きました。

「良いADになりたい」という1年目の思いを番組に

『形から入ってみた』の企画が生まれたきっかけは?

須藤 自分を含め、世の中には目標にうまく向かえない人はいっぱいいると思ったのがきっかけです。最初の企画会議では、「良いADになりたい」と思って過ごしていた1年目の頃の話をしました。憧れの先輩の真似をしたら、いつの間にか自分も成長できそうな気がしたので、先輩と同じADバッグを使ったり、フロアで先輩と同じ言葉を言ったり、同じご飯屋さんに行ったりしてたんです。こんな風に形から入ることってありますよね?って。それで通った企画です。

この番組で須藤さんは総合演出という立場ですが、どんなチームですか?

須藤 初めての配属番組で出会ったディレクターさんたちと作っています。当時は一番下っ端だった私を、入社から11年を経た今、「おもしろいと思うものやれよ」と言って受け入れてくれる、すごくかっこいい人たちです。私は人に恵まれているなと感じました。

番組では、取材対象の方に1か月間密着されています。

須藤 30日あれば人は変われると思い、1か月間にしています。取材対象の方とは信頼関係を構築してから密着に入るんですが、期間中は毎日連絡を取り続けているので、煩わしいと思われる瞬間があります。途中で「できない」と言われたり、思っていたのとは違うものが撮れたりと、毎回想定外のことが必ず起きるので、ドキュメンタリーを撮っているような感覚です。TBSの中でも一、二を争うんじゃないかと思うくらい、カロリーの高い番組だと思います(笑)。

7月7日に放送される特番の見どころは?

須藤 「大谷女子」という、大谷翔平選手の熱狂的なファンの方をテーマにしています。大谷女子の皆さんは、自己肯定感がすごく高くて、エネルギッシュなんです。彼女たちは、大谷選手が出てる試合や大谷選手のかわいい動画を見て元気をもらってるそうなので、本当にパワーをもらえるのか、自分に自信がなくて悩んでいる2人の女性に密着し、どう変わるのか?を検証しています。

大谷女子の間でブームになっている大谷選手の地元・岩手の聖地巡礼や、大谷女子のフィルターを通した名言紹介も見どころです。

テーマを大谷女子にしたのはなぜですか?

須藤 今、世の女性たちの多くは、大谷選手に好感を持っていますよね。実際に取材をしたら、LAまで試合を見に行ったり、大谷選手のグッズを作ったりして、「大谷選手のおかげで人生が豊かになった」という女性がたくさんいました。でも、彼女たちの中には野球に詳しい人ばかりではない。なのに、なぜそこまで女性が熱中するのか不思議に思いました。

それと、大谷選手の特集はどうしても男性目線のものが多く、野球に疎い自分には難しい部分もあったんです。だから、女性目線で展開する大谷選手の番組があったらおもしろそうだと思いました。この2つが推進力になりました。

TBS 須藤有加

学生時代には想像できなかった、バラエティ制作の魅力

須藤さんは『形から入ってみた』を担当する傍ら、いろいろな番組を手掛けています。

須藤 今、携わっている番組は『CDTV ライブ! ライブ!』や『この歌詞が刺さった!グッとフレーズ』など、全部で5つです。もちろん今あるレギュラー番組をよりよくしていくことも大切ですが、新たに会社の基盤になっていけるような番組を生み出す努力も必要だと思うので、周囲の皆さんに協力していただきながら挑戦をし続けています。

『CDTV ライブ! ライブ!』でのポジションは?

須藤 ディレクターです。総合演出の下に歌チームと演出チームがあって、私はその両方を担当させてもらっています。歌チームは楽曲に合わせた照明やカット割りを決めて技術さんと一緒に撮っていくんですが、見せ方には正解がないから難しいんです。私に歌演出を教えてくれる師匠は「こないだ観たグラミー賞のワンシーンのこういうところの雰囲気がこの歌に合う」というような伝え方をされていて、インプット量のすごさを感じました。

印象的だった回は?

須藤 2022年の大晦日に放送した、『CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル!2022→2023』です。これが音楽チームとしての演出デビューでした。本番で年を越すんですが、カウントダウンするためのCGが本番の20分前になっても上がってこないなど、本当に間に合うのかヒヤヒヤしながらやってました。5日間かけて100曲ぐらい撮影・リハを行い、最後に生放送があるのですが、全員が寝不足の状態でやるので事故が起こらないことを祈るしかなくて。そんな極限状態でも最高のクオリティで放送を出すスタッフの皆さんに痺れる回でした。

バラエティ番組の制作ってすごく大変そうですね。

須藤 でも、大晦日のオンエアを任せてもらえてすごくラッキーだったと思うんです。学生時代はこんな人生を想像しないで過ごしてきましたから。やりきった現場の空気感はすごく素敵なものでした。

それに、自分が手掛けた放送物を世の中の人が見てるというだけで、相当恵まれてると思います。『形から入ってみた』を例にするなら、MCのかまいたちさんがおもしろい番組にするために一緒にいろいろと考えてくれますし、視聴者の方からはリアルタイムで反応を受け取れるし…こんなに幸せなことないと思う瞬間は多々あります。

会社の予算で番組を作らせてもらえるのも、信頼してもらえているからだと感じて嬉しいです。つらいこともありますが、チームの皆さんがいるから孤独じゃないし、この仕事を辞めたいと思ったことはありません。いろいろな人たちとおもしろいものを作れるのは、この仕事の醍醐味だと思います。

TBS 須藤有加

番組制作に目覚めたのは、TBSの『クリスマスの約束』

須藤さんはもともとバラエティ番組を作りたいと思っていたんですか?

須藤 いや、テレビやラジオは大好きでしたが、自分はバラエティを作れる人間だとは1ミリも思っていませんでした。でも、2009年に放送された小田和正さんの『クリスマスの約束』を見て、おもしろいだけがバラエティじゃない、笑い以外でも心を動かす番組があると思ったんです。

当時、韓国に留学していて、現地の制作会社でインターンやテレビ局の見学をしていたんですが、この番組をきっかけに、熱量の高い番組を作るこのチームの一員になりたいと思いました。就職活動ではいろいろな制作会社を見ましたし、OB訪問もたくさんしました。

学生時代から映像制作に興味があったんですね。

須藤 そうですね。中学の国語の先生が自分で舞台の脚本を書いちゃうくらいの舞台マニアで、その先生から一緒に文化祭で劇をやろうと誘われたんです。当時は演出部にいて、大道具担当の子に「こういうものを作ってほしい」と頼んだり、演技する子たちに演技指導をしたりと気付けば今とほぼ同じポジションにいました。それがすごく楽しくて、大学では映像制作ゼミに入って自分たちで脚本を書いて作品を作っていました。みんなで作品を完成させたときの達成感や、楽しい感覚を糧に就職活動を頑張っていました。

就活生にアドバイスをお願いします。

須藤 就活中は、試験を受ける会社のどこか一部でも好きになれるといいんじゃないかと思います。私はTBSのOB訪問で出会った人がすごくいい人だったので、TBSの「人」に魅力を感じました。テレビ局員はかっこつけてるイメージがありましたが、わからないことは正直に「わからない」と応えてくれたんです。その誠実さが好印象でした。

TBSは、自分のやりたいことがないと何もできない環境でもあると思います。これだけいろいろな事業を手掛けているのに、やりたいことがないともったいないですよね。TBSには自分が好きなものを主張したら聞いてくれる人がたくさんいるので、1個ぐらい好きなものがあった方がすごく楽しく過ごせると思います。

TBS 須藤有加

須藤有加
2012年、TBSテレビ入社。情報制作局に配属となり、バラエティ番組を中心にAD・Dを経験。コンテンツ制作局へ異動し、ディレクター4年目「有吉と採点したがる女たち」で初企画採用。今年からはプロデューサーとしても番組を担当。

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