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Netflixドラマ『離婚しようよ』でチーフデビュー、TBSアクト安藤帆南の軌跡

TBSアクトは12のTV制作会社が結集して誕生した日本最大級の総合プロダクション。TBSテレビの番組制作の技術や美術、CGの分野を担っています。

同社は、2023年6月22日から全世界配信が始まった、Netflixドラマ『離婚しようよ』の制作も担当。デザイン部の安藤帆南が美術デザインを手掛けています。同作の美術デザインのこだわりや、美術デザイナーになるまでの道のり、就活生へのアドバイスなどを聞きました。

ドラマ『カルテット』でテレビ美術に興味を持つ

安藤さんがTBSアクトに入社したのはなぜですか?

安藤 テレビ美術の仕事をしたいと思っていたからです。もともとテレビの美術にすごく興味があったのと、ものづくりや絵を描くことが好きで、美術系の高校から美大に進学しました。就職活動のときはテレビの美術会社しか受けていませんでした。

学生時代は何を学んでいましたか?

安藤 高校から美術系の学校で、大学は美大で日本画を専攻し、アーティスト寄りの絵を4年間描いていました。テレビ美術のデザイナーを目指すなら、空間デザインや彫刻など他の分野を学ぶのもよかったかもしれませんが、あまりピンとこなくて。自分は絵を書くことや何かを表現することが得意だったので、それを4年間で極めてみようと思っていました。

就職活動のときは、絵を描くことで自分の頭の中をシェアすることができるという点を武器にしていました。

日本画とドラマセットのデザイン、一見すると全然違いますが、絵を描くのを極めたのは今の業務にも活かされていそうですね。

安藤 そうですね。プレゼンで監督にイメージを共有するとき、私はいつもパース画(絵)を書いているので、そこでは活かされていると思います。プレゼンはデザイナーによってやり方に違いがあって、3Dを立ち上げるなど、絵を描かない人もいます。

テレビの美術に興味を持つきっかけとなった作品は?

安藤 ドラマが好きで、よく見ていましたが、特に好きなのは『カルテット』です。坂元裕二さんの脚本がすごく好きなこともあり、いつかこういうテイストのドラマ美術をやってみたいと思いました。

また、他局のバラエティ番組を見てたとき、生意気ですが「私だったらこういうのにしないな、私だったらどうするかな」と自然に考えるようになり、夢が具体的になりました。

『カルテット』の美術で特に良いと思ったのはどこですか?

安藤 ペーペーの私が大先輩のセットに対してコメントするのは大変恐れ多いですが…。主人公たち4人が住むことになる軽井沢の別荘の部屋が素敵だなと思いました。特に印象的だったのは、4人が並んで演奏するシーンです。美術で物語を膨らませられるのがすごいと思いました。一番良い画を一から考えられるのがセットの利点だと考えています。日常の中にありながらちょっと特別な空間に見えるのはおもしろいですね。

ドラマ『カルテット』のセット

2年間の研修を経て、ドラマ『離婚しようよ』でチーフデザイナーに

入社当初は何をしていましたか?

安藤 入社から2年間は研修期間で、ドラマとバラエティの両方を経験しました。3年目からドラマ部に本配属され、約1年はアシスタントとして活動し、その後、チーフデザイナーとして一人でデザインを任されるようになりました。

研修中はどんな作品を担当しましたか?

安藤 研修で一番最初に担当したのは、『4分間のマリーゴールド』というドラマです。主人公の義姉が画家という設定だったんですが、私はたまたま絵が描けたので、劇中に出てくる絵をちょこちょこ描いていました。

バラエティでは、単発の番組やインフォマーシャルなどを担当していました。規模の小さい番組では、メインでやらせてもらったこともあります。

本配属の前、ドラマとバラエティーで迷いませんでしたか?

安藤 すごく迷いました。バラエティの方がよりテレビっぽいというか、表現の自由度が高いところが魅力的ですごく楽しかったです。でも、やっぱりやりたかったのはドラマだったので、ドラマ部に行くことにしました。

初めて1人で担当したドラマは何ですか?

安藤 TBSが制作するNetflixドラマの『離婚しようよ』です。美術プロデューサーがデザイナーでもあるので、監督してもらいながら作業していました。配信は今年6月ですが、去年の初月から動いており、初夏頃まで撮影していたのでがっつり取り組めた作品でした。

『離婚しようよ』のセットでこだわったところは?

安藤 主人公が議員と女優の夫婦という設定だったので、2人が住むマンションは高級感を意識しています。どのようにしたらかっこよく見えるか、棚の厚みや仕様にまで一つ一つ気を抜かずに向き合いました。美術プロデューサーの教えのもと熟考し、一から構築したセットです。セットの様子は、6月22日に配信開始した『離婚しようよ』本編でぜひご確認ください。

TBSアクト・安藤帆南

TBSはものづくりを目指す人に最適な環境

チーフデザイナーになり、活躍の幅が広がった安藤さん。TBSアクトに入ってよかったと思うところは?

安藤 「ドラマといえばTBS」という風潮があるので、TBSドラマに携われるのはすごく嬉しいです。他の局も素敵ですが、TBSドラマは美術を徹底的に作りこむことができて、より良いものを作ろうとしている人たちがたくさんいる、素晴らしい環境です。

また、TBSグループの中に技術部や編集スタッフがいるので、スムーズにやりとりできるのも他社とは違うと思います。距離感が近いのはグループ会社ならではの強みですね。

デザイン部にはどんな人がいて、どんな人材を求めていますか?

安藤 今のデザイン部のドラマ担当デザイナーは建築や舞台美術を専門で学んできた方が多いです。日本画や油絵といったファインアートを学んできた方は珍しいかもしれません。経験を積めば積むほど視野が広がるので、私も早くいろいろな番組を担当して経験値をつけたいです。

この仕事は発想の転換とスピード感が必要なので、デザインを修正しなきゃいけないときにすぐに代案を出せる瞬発力や、切り替えの早さがある人が求められていると思います。ほかにも、どんどんアイディアが出てくる人は、一緒に働いてすごく魅力を感じます。

美術デザイナーを目指す人にアドバイスをお願いします。

安藤 行き詰ったときにアイディアが出るように、学生のうちにいろいろな経験を積んで、引き出しを増やしておくといいと思います。その経験がいつか役に立つ日がくるはずです。

TBSアクト・安藤帆南

安藤帆南 プロフィール
女子美術大学 美術学科日本画専攻卒業
2019年アックス(現TBSアクト)入社、バラエティのドラマの美術制作、デザインアシスタントを経て2022年からチーフデビュー。主なデザインを担当した番組は「クロサギ」「100万回言えばよかった」など

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