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『たまむすび』から『こねくと』へ、帯番組を続けて担当するTBSラジオ中野堅介の挑戦
TBSラジオでは、2023年4月からお昼の帯番組『こねくと』(毎週月~木曜日、午後1時~3時)を放送中。番組名には、前番組『たまむすび』にもあった「むすび」のニュアンス、ラジオならではの「つながり」を大切にしたい、という意味が込められています。両番組を担当するのは、TBSラジオでコンテンツ制作を担当する中野堅介。プロデューサーとしてPodcast戦略や番組立ち上げ時の様子を語ります。
『こねくと』から新しいPodcast戦略をスタート
Podcastに力を入れているというTBSラジオ。地上波で放送中の『こねくと』は、Podcastでも配信中です。どんな工夫をしていますか?
中野 これまでは生放送したものをそのまま、曜日やコーナーの種類にかかわらず、一つの番組としてアーカイブ配信していましたが、『こねくと』は番組内のコーナーごとに切り出し、それらを独立した一つの番組として配信しています。
例えば、『こねくと』で放送中の町山智浩さんの『アメリカ流れ者』というコーナーは、Podcastでも多くの方に聴かれています。極端な話、『こねくと』というラジオ番組は知らないけど、『アメリカ流れ者』というコーナーは知っているという方も多いです。なので、『こねくと』という番組名でアーカイブしていくよりも、『アメリカ流れ者』という番組単位で配信した方がより多くの方に届くし、使い勝手もよくなるだろうと思い、この施策を始めました。
その施策は『こねくと』から始めたんですか?
中野 そうです。今のところ他の番組ではやっていません。他にも、Podcastでは権利上、楽曲を配信できないので、番組内で使用するBGMは全て著作権フリーのものを使用しています。
例えば、番組内で「この曲、懐かしいね」と話していても、曲の部分がカットされていたら、Podcastで聴いている方にとっては興ざめしてしまうだろうなと。そうならないように、生放送の単なる2次使用に留めることなく、Podcastとしての完成度を意識しながら作っています。
立ち上げを手掛けた『OVER THE SUN』は想定外の大ヒット
Podcastといえば、『OVER THE SUN』も担当されていましたね。
中野 2023年4月で外れてしまいましたが、立ち上げ時は担当しました。僕はもともと『ジェーン・スー 生活は踊る』の金曜日担当ディレクターでした。編成上の理由で金曜日のレギュラー放送がなくなるタイミングがあり、そのときスーさんが当時の番組プロデューサーに「堀井美香さんとの組み合わせでPodcastをやらせてほしい」と提案しました。その流れで『OVER THE SUN』も担当することになり、最小人数でコソコソやっていて、気付いたら大きくなっていましたね。
Podcast 関連の賞を数多く受賞したり、メディアで取り上げられたりと大人気です。こんなにヒットすると予測してましたか?
中野 予測していませんでしたが、スーさんと堀井さんのおしゃべりはおもしろいし、人気もあったので、その魅力が世間に知られる機会が増えたのだと思います。
リスナーの中には『OVER THE SUN』をきっかけに『生活は踊る』を聴くようになった方もいて、これまでにない逆の流れがあるのはすごいですよね。
番組非公式のオープンチャットができるほど、ファンに愛されている番組です。なぜここまで人気になったと思いますか?
中野 PodcastのアプリはiPhoneなら最初から入っているし、ストリーミングサービスを利用する人も多いので、単純にリーチしやすくなったというのが一つ。
あと、これまで40~50代の女性同士のおしゃべり番組があまりなかったことも大きいのではないでしょうか。若い世代にとっては憧れの大人像であり、2人と同世代の方にとっては圧倒的な共感がある。でも、決して女性だけをターゲットにしているのではなく、性別や年齢の枠を越えて、色とりどりの人生経験が寄せられる。それも特徴の一つだと思います。
番組終了と立ち上げを兼任したのは、ラジオ業界でも異例
テレビの帯番組の総合演出やプロデューサーは、終了する番組と始まる番組を兼任することはほとんどありませんが、『こねくと』の立ち上げと『たまむすび』の終了を兼任したのは大変だったのでは?
中野 ラジオでも新しく番組を立ち上げる人は、新番組に専念するイメージがあったので、大変ではありました。それに、僕は自分が番組を立ち上げるなんて遠慮したいタイプですし、この話がなかったら「こんな大きな仕事をやらなくて済んだ」とホッとしたかもしれません。でも、この話が他の人にいっていたら悔しかったと思います。『たまむすび』のリスナーに引き続き『こねくと』も聴いてもらえるよう、赤江珠緒さん、石山蓮華さんと並行してお話しできたのは、『たまむすび』を担当していた自分でないとできないことなので、その点はよかったです。
ありがたいことに、『こねくと』は多くの『たまむすび』リスナーに支えられているので、今後は「『こねくと』だから聴いている」というリスナーを増やすことが課題だと思います。
パーソナリティを石山さんに依頼したのはなぜですか?
中野 自分が新番組を担当するからには同世代の人とご一緒したいと思い、石山さんが一番最初に思い浮かんだからです。『たまむすび』のゲストに出ていただいたとき、石山さんから出てくる数々の言動や、突拍子もない危うさみたいな部分がすごく印象的でした。石山さんはTBSラジオのヘビーリスナーですし、『たまむすび』や赤江さんへのリスペクトもすごくあるので、良い形で新番組につなげられたと思います。
毎週金曜日には『金曜ワイドラジオTOKYO えんがわ』が放送中です。こちらも担当されていますが、どんな番組ですか?
中野 『金曜たまむすび』を担当していた、外山惠理アナウンサーと玉袋筋太郎さんが引き続きパーソナリティを務めている番組です。午後2時からの「ラジオ東京リメイク」は、「ラジオ東京」から始まった「TBSラジオ」を振り返り、ただ懐かしむだけでなく、未来につなげていく企画です。刺激的で楽しいですよ!
TBSグループなら、思いもよらない仕事に出会える
そもそも中野さんがTBSラジオを志望したのはなぜですか?
中野 TBSラジオを知ったのは、高校の通学時間にラジオを聴いていたのがきっかけです。でも実は、メディア業界は全然志望してなくて、食品メーカーを中心に就職活動をしていました。TBSラジオは採用時期が遅かったからあまり構えずに受けられたのと、本当に好きだったので嘘がなかったのがよかったのかもしれません。
どんなところにTBSラジオの魅力を感じますか?
中野 思いもよらない仕事ができるところです。制作だからといってラジオ番組の制作だけではなく、例えば、『たまむすび』の番組イベント「たまむすび in 武道館 ~10年の実り大収穫祭!~」にも携わることができました。武道館はお客さんとして行ったことはありますが、よもや自分が武道館の主催者になるとは全く想像していませんでした。他にも番組グッズのプロデュースなど、自分次第でいろいろなことにチャレンジできるのは魅力だと思います。
TBSグループ会社の人と関われるのも楽しいです。特にTBSテレビのバラエティのプロデューサーである高柳健人さんをはじめ、イベントの仕事をきっかけに、つながりができたのはグループならではの大きな財産です。
TBSラジオを志望する若者にアドバイスをお願いします。
中野 僕は一つのものを突き詰めて好きになることがあまり得意ではありません。「この分野の話なら誰にも負けない!」みたいな、名刺代わりの強みがないのがコンプレックスで、制作には向いてないと思っていた時期がありました。
だから、学生時代は自分の「好き」を探してみるといいと思います。人の「好き」にはきっと好きになるだけの良さがあるから、たとえそれに興味がなくても、とりあえず接してみることで世界が拡がるはずです。「やっぱ合わない」が分かることも収穫なので。
中野堅介
2015年、TBSラジオ入社。編成部を経て、2017年よりこれまで、『たまむすび』『ジェーン・スー 生活は踊る』『OVER THE SUN』などに携わり、現在は『こねくと』を担当。