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今、Podcastが熱い!再生回数は月間2000万回以上、配信業者として日本トップクラスを誇るTBSラジオ井上重吾の挑戦

今、世界的なブームが起きているPodcast。TBSラジオもその流れに乗って、Podcastに力を入れています。デジタル音声市場に新たな活路を見出すために、TBSラジオはどんな戦略を考えているのでしょうか。

解説するのは、TBSラジオの井上重吾。井上はMBA留学を経て、コンサル会社に勤めていたという異色の経歴の持ち主です。TBSラジオを志望する若者へのアドバイスも含めてたっぷりお話を伺いました。

井上重吾

TBSラジオはPodcast誕生当初から世界でトップクラスの配信事業者だった

Podcastは今、世界的なブームが起きています。その理由は何でしょうか?

井上 Podcastは意外と歴史が長くて、2000年代に誕生して最初のブームがありました。今は第2次ブームで、2014年頃からアメリカで「Serial」というドキュメンタリー番組がすごく話題になったんです。その番組は実際に起きた未解決の殺人事件を扱っていて、番組を機に再審するなど社会現象になりました。

そこから、アメリカではSpotifyやAmazonといった大手プラットフォーマーがPodcast市場に参入したり、音声の広告市場が拡大したりと盛り上がりを見せました。

日本でもデジタル音声市場を作っていこうと、ラジオ局やPodcastアプリ事業者、広告代理店などが、今すごく力を入れています。

TBSラジオがPodcastを始めたのはいつ頃ですか?

井上 実はTBSラジオはPodcastが誕生したときからPodcastを始めていて、当時から世界でトップクラスの配信事業者だったんですよ。その頃はあくまでもPRとしてやっていましたが、莫大なサーバー代がかかっていたので一旦Podcastをやめて、ラジオクラウドというアプリだけで配信していました。

昨今のPodcastブームと、システムが進化したことで配信の費用負担も少なくなったので、もう一度Podcastに舵を切ることになり、2022年10月頃からいろいろな番組をPodcastに出し始めました。2023年1月の総再生数が月間2000万回ぐらいで、おそらく日本でもトップクラスの配信事業者だと思います。

地上波ラジオはこれまで通り続けつつ、Podcastも配信していくということですか?

井上 そうですね。Podcastではトータル70番組ぐらい出していますが、ほとんど地上波の二次配信やアフタートークです。今後はもっとオリジナルを増やそうとしていて、4月に始まる地上波の番組もPodcastを前提に立ち上げようとしています。

TBS Podcast

地上波とPodcastの内容は具体的にどう変える予定ですか?

井上 例えば、ラジオではよく映画の紹介をしていますが、Podcastではそれのネタバレ回を作るとかですね。ラジオよりもコアな内容の番組ができるので、Podcastならでは感を出していくことを目指しています。

人気番組「OVER THE SUN」によってマネタイズの可能性が広がった

井上重吾

Podcastのマネタイズはどう考えていますか?

井上 いろいろな方法が考えられますが、放送局としては広告で収益化することで、無料で多くの方々に聞いて頂きたいですね。ジェーン・スーさんと堀井美香さんがパーソナリティを務める人気番組「OVER THE SUN」は、広告収入はもちろん、他にも公式ファンブックやグッズを販売したり、イベントを開催したりと、多方面でマネタイズできているので可能性を感じています。

先日開催した番組イベントは、オンラインとリアルの両方で行って、配信チケットが約8000枚売れました。配信画面のチャットもすごく盛り上がって、追いきれないくらい(笑)。他にも、3500人くらい集まっている非公式のLINEのオープンチャットもあります。TBSラジオは全く関わっていないんですよ。

すごいですね。「OVER THE SUN」はなぜ人気なんでしょうか?

井上 スーさんも堀井さんも、それぞれ異なる業界でキャリアを積んできて、今も社会で活躍されている方なので、女性にとって励みになる存在なんだと思います。二人の「負けへんで」って言葉に勇気付けられているリスナーが多いようです。

競合として意識しているのはどういうところですか?

井上 ラジオ局はもちろんですが、大手プラットフォーマーやテレビ局・新聞社などが、オリジナルのコンテンツを作っているのは意識しています。ただ、競合というよりも一緒に音声コンテンツの業界を盛り上げていきたいという意識の方が強いですね。

MBA留学中にPodcastと出会い、コンサル時代の経験が今につながる

井上重吾

ところで井上さんはMBA留学をされていたそうですね。その理由は何ですか?

井上 新卒でラジオの制作会社で働いていたとき、番組のゲストにアメリカのビジネススクールで教えている日本人の教授が来たことがあったんです。当時、ウェブメディアが台頭する中で、ラジオ業界が今後どう成長するのか焦りを感じていました。そんな中、その教授がアメリカではビジネススクールで学んだ人がメディア企業の経営をしているという話を聞いて経営学を勉強しようと思って、その先生に推薦状を書いてもらって2年間アメリカへ留学しました。

アメリカ生活でもPodcastを聞いていたんですか?

井上 実はアメリカに行ってからPodcastを聴き始めたんですよ。海外ではなかなか日本の番組は配信されていませんでしたが、『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』や『安住紳一郎の日曜天国』はPodcastで配信されていたので聴いてました。そこからTBSラジオを好きになりましたね。

そこからなぜTBSラジオに転職しようと思ったのですか?

井上 帰国後は9年弱くらいコンサル会社に所属していて、そこでたまたま音声業界の将来に関するレポートを書いたんですよ。そしたらそれを偶然TBSラジオの人が読んでくれて、お話しする機会がありました。それでまたラジオに関わる仕事をやりたいと思うようになり、ちょうどキャリア採用をしていたこともあって、その流れで転職しましたね。

前職での経験はどんな風に活きていますか?

井上 前職ではメディア企業のコンサルを担当していたのですが、特に印象的だったのが新聞社さんです。紙の新聞の購読率が下がる中、新たなビジネスモデルを作るためにWEBメディアの立ち上げを支援していたのですが、今Podcastをやっている状況とそっくりでした。当時の経験は今の業務に活きていると思います。

TBSラジオは異業種から転職された方も、こうやって活躍されているんですね。今後はどんな人材を求めていますか?

井上 ラジオやPodcastを含め、音声コンテンツが好きであること。あとは、デジタル領域でどう戦っていくかが会社として一番のミッションなので、新しい音声の楽しみ方を一緒に作っていくことに積極的に関わりたい人に来てほしいです。

それと、今後は新たなコミュニケーションツールを使ったり、Web3の技術を使ったりと、番組の楽しみ方をアップデートしていこうとしていますが、テクノロジーに強いメンバーが少ないので助けてほしいという思いもあります(笑)。

最後に、TBSラジオを志望する若者に向けてアドバイスをお願いします。

井上 とにかく番組をたくさん聴いておくことと、昔からあるラジオというものを今の時代に合わせてゼロから新しく作るならどんな楽しみ方がいいのかを思い描いて来てもらうのが一番いいかもしれないですね。

■TBSラジオ

https://www.tbsradio.jp/

井上重吾 プロフィール
TBSラジオ UXデザイン局・UXビジネス局 事業創造センター。早稲田大学卒業後、シャララカンパニーにてラジオ番組制作に従事。2011年よりデロイト・トーマツ・コンサルティングにて、メディア企業を中心としたコンサルティング業務に携わり、2020年4月TBSラジオ入社。

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