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赤坂をエンタテインメントで溢れる街並みに!舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で仕掛ける全社プロジェクトの裏側

TBSが掲げる赤坂エンタテインメントシティ計画の第1弾としてスタートした、ハリーポッタープロジェクト。舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の上映や、街の装飾によって赤坂サカス周辺を盛り上げています。
全社を挙げたプロジェクトですが、今回は代表してライブエンタテインメント局神戸賢一、古川彩乃、松村亮、デザインセンター平本健太にそれぞれの担当や思いについて話してもらいました。
「赤坂をハリー・ポッターファンの聖地に」劇場をハリポタ世界観満載に、大幅改修。更に、ハリー・ポッターのカフェやショップもオープン!

今回のプロジェクトは普段の舞台とどう違いますか?
神戸 通常は舞台公演の実施に最大限注力しますが、今回はエンタテインメント・シティ計画の一環として、舞台だけでなく、赤坂にハリー・ポッターのカフェやショップ、大階段などを作って街全体で盛り上げているのが今までと全く違います。
権利元に「赤坂をハリー・ポッターファンの聖地にすべく、様々な施設を作り、立体的に盛り上げたい」とプレゼンしましたが、最初は「世界でどこもやってないから無理だ」と言われました。そこから交渉を重ねて許諾を取り、何を作るか、デザインもすべて我々TBSから提案しました。だからこれと同じデザインの大階段は今後、世界のどこにも作られることはありません。
準備期間はどれくらいですか?
神戸 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は世界でも大人気の演目ですので、優先交渉権を得るまでに体感として4年以上はかかっています。通常の演目は、大体数週間、長くても1~2ヶ月ぐらいの実施期間ですが、今回は今後数年に及ぶロングランに向けたチャレンジです。プロジェクトの規模としては、一つの会社を作ったような感覚があります。
海外の舞台と違う点は?
神戸 公演開幕時に「ハリー役トリプルキャスト」として、藤原竜也さんや向井理さん、石丸幹二さんを発表させていただいたように、一般的な人気や認知度が非常に高い方々をキャスティングしてるのも日本公演の特色の一つです。国内で言うと、ストレートプレイ(歌を歌わない演劇)のロングラン作品は今回が初めてなので、すごく壮大なチャレンジだと思います。
劇場に一歩足を踏み入れた瞬間からハリー・ポッターの世界観を感じていただけるよう、今回の舞台専用の劇場に作り替えました。かつてない規模の投資を実施してますので、責任感と覚悟を持って、長く皆様に愛していただけるような舞台を続けていこうと思います。
劇場や街のデザインも権利元の厳しいデザインルールに則りすべて日本オリジナルのものに

権利元とのやり取りはどうでしたか?
平本 まず、資料もミーティングもすべて英語だったので、先方の意図を汲み取るのが難しかったです。また、時差があったり、日本より休暇が多かったりするので、毎回のラリーにも苦労しました。当初「この規模感だと着手してから実現までに少なくとも3、4年はかかる」と先方から言われていた中で、今回は約1年で仕上げる必要があったため、提案を投げている間に見切り発車で作業を進めたり、先方も急いでくれたりなど、なんとかすべての設計、施工を完了できました。
難しかった点は?
平本 実は劇場と周辺エリアの権利元が違っていて、考え方や使える素材も違うのですが、デザインルールが非常に細かく、解釈にかなり時間がかかりました。タイムターナーのある大階段だけでも何十案も作成しました。ただ、デザイン的にNGというより、例えば「日刊預言者新聞は魔法界にしか存在しないからここで使うのはNG」のように、物語としての文脈や設定に則っているかをすごく重視されました。
今回感じたIPの管理の厳しさや身についたノウハウは、今後TBSが自社IPを使ったビジネス展開をする上ですごく役に立つと思います。それに、ハリー・ポッターはどんなに有名なアーティストでもなかなか個人レベルでは扱えないコンテンツですよね。ここまで大きな仕事ができるのはTBSに入ったメリットの一つだと思います。
今まで手掛けてきた番組セットのデザインと意識を変えた点は?
平本 番組のセットを生で見てくれる人は観覧のお客さんに絞られますが、今回のプロジェクトは街の空間としてリアルに体験してもらうことになるので、ファンの方にも喜んでもらいつつ、ハリー・ポッターをよく知らない方にも伝わるようなバランスを心掛けました。
また、赤坂にしかない景色を作るために、既存の建築に馴染む形で装飾するのが自分のテーマでした。毎日サカスエリアで写真を撮る人を見られるのは新鮮な感覚で嬉しいです。
全社を挙げて取り組んだハリポタウィークは圧倒的な認知拡大につながった

プロモーションも今回は大規模に仕掛けましたか?
古川 来週始まる「ハリー・ポッターウィーク」は新たな取り組みです。朝の帯番組からゴールデンタイムの番組まで、ほぼ一週間全番組がハリー・ポッターを取り上げてくれています。
「ハリー・ポッターウィーク」の効果は?
古川 2022年3月と5月にも行いましたが、チケットの売れ行きアップに加え、舞台ハリポタの認知度向上にも大きく繋がりました。全社を挙げて協力していただいて本当にありがたいですね。会社全体で一つのコンテンツを1週間もプロモーションするのは過去になかったので、これもTBSにとって大きなチャレンジです。
難しかった点は?
古川 世界観を伝えるために「映画ハリー・ポッター」の映像も使いたいのですが、今回宣伝したいのは、あくまで「舞台」なので、誤解を避けるような表現方法が難しかったですね。映像を使うにしても、この場面を使うことで、誰に対して何を伝えたいのか、目的を明確にして権利元に許可をとらなければならない。「日本サイドとして、テレビでの宣伝が最も有効と考える根拠は?」「スポットCMの想定効果は?」なども聞かれ、宣伝プランを考える上での厳しさも感じました。他にも細かいルールがたくさんあって、私は番組制作の経験がありますが、そこでは体験しなかったハリー・ポッターならではの苦労がありました。
でもすごくやりがいがあります。番組は週に1回しか放送されないけど、ハリー・ポッターウィークは自分が頑張ったものが朝から晩までずっと流れるし、渋谷の大型ビジョンにもCMが流れるし、こんなに大きなプロジェクトに携わってる自分ってかっこいいと思いました。
団体営業はプロジェクト継続に必要不可欠。学生が増えることで街の活性化も期待

団体営業はどんなことをされていますか?
松村 企業の福利厚生や、学校の修学旅行や芸術鑑賞など、集団で舞台を観劇してもらうための営業をしています。今回新たにできたチームで、今後新しい劇場ができたときにも営業できるようにするため、中長期的にも重要な仕事です。
1年間の目標動員数が約50万人で、そのうちの20~30%を団体のお客様で占めるのが長く続けていく秘訣だと考えています。学生に来てもらうことで街の活性化も期待しています。
苦労した点は?
松村 最初は学校向けの特別プランを作るのがNGだったことですね。学校は「芸術鑑賞」や「修学旅行」など、学生さんとしての予算があるのですが、日本の事情を説明するのに、諸々苦労しました。今は皆さんの努力によって、交渉しやすい条件が設計できています。
実際、動員は順調ですか?
神戸 海外の人気公演を日本に招聘した場合も5万人動員したら大成功と言われているので、この舞台が現時点で累計40万人を動員したのは大盛況だと考えています。一方、劇場や街全体を巻き込んだ規模感を考えると、ここで満足ではなく、今後数年にわたって、如何に盛り上がりを持続させていくかを日々考えています。
松村 既に40万人来てしまったという思いもありながら、新たなお客様の集客を考える上で、まとまったお客様に来ていただくのがすごく重要だと思います。プレッシャーもありつつ、やりがいを感じています。
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」は、赤坂であなたの来場をお待ちしてしています。
また、TBSデザインチームが総力を挙げて手掛けた、劇場を中心に街が魔法につつまれている様子は、TBSグループのブランドムービーでも紹介しています。
■舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」
https://www.harrypotter-stage.jp/
■ブランドムービー#3
https://innovation.tbs.co.jp/bighat_movie/
神戸賢一
他業界での経験を経た後、TBSに転職。主に、財務や経理畑を歩み、2019年度から現職。米国公認会計士試験合格者。
平本健太
2018年入社。「音楽の日」,「日本沈没-希望のひと-」など様々な番組の美術デザインを経験し、現在は空間,グラフィックを中心に拡張領域分野のデザイン,ディレクションを担当。
古川彩乃
複数のTV番組で制作実務を経験。当プロジェクトの宣伝強化タイミングで、現在の部署に異動。
松村亮
プレイガイドでチケット営業を6年経験し、2022年より本公演の団体販売チームに参加。
