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カメラマンから知識0でウェブメディアの立ち上げへ。報道局・南部諒生が明かす「TBS NEWS DIG」月間1億PVまでの道のり

TBS NEWS DIG Powered by JNNはTBS系JNN28局のニュースをまとめて扱うニュースメディア。立ち上げ4ヶ月で1億PVを記録し、スマートニュースが主催する、良質なコンテンツとその担い手に贈るアワード「SmartNews Awards 2022」では、「大賞」を受賞しました。

NEWS DIGはどんな戦略で作られ、今後どう展開していくのでしょうか。NEWS DIGの立ち上げメンバーで、システム設計などを担当している報道局JNNネクストメディア準備室所属の南部諒生に話を聞きました。

立ち上げ時は競合分析とマーケティングに注力

NEWS DIG運営チームの一部 左から 豊田和真、南部諒生、赤川史帆
NEWS DIG運営チームの一部 左から 豊田和真、南部諒生、赤川史帆

 

NEWS DIGの立ち上げは何から始めましたか?

南部 まずは競合分析です。最初に目標にしたのはFNNプライムオンラインや東洋経済オンライン・ダイヤモンドオンライン、文春オンラインなど。直接的なライバルというよりも、高みを目指していくために彼らが一体どういう戦略で何をやっているのか知る必要がありました。

それに加え、どんなニュースにニーズがあるのか入念にマーケティング調査を行いました。この2つがうまくはまったのかなと思います。

そこからどうやって月間1億PVのメディアに育てたのですか?

南部 そもそもNEWS DIGを立ち上げる前に、TBSのニュースサイトをやっていたんですよ。当時は地上波でオンエアしたものを切り出して配信するのがメインだったので、なかなかユーザーに届いてないと感じていたし、実際にPV数も低かったです。マーケティングしていくと、動画媒体よりもテキスト媒体の方がニーズがあるということもわかったので、うまくテキスト化して適切なタイミングで配信するようにしました。

ただ、動画をやめてテキストのみを扱うということではありません。今まで動画しか出せなかったら動画を見たい層にしかリーチできていませんでしたが、動画ユーザーも引きつけつつ、テキストを読みたい人、写真を見たい人などいろいろな層にリーチできるようになったのかなと思います。

それと、TBSはキー局と言われているものの、関東のローカル局なのでどうしても関東のニュースが中心になってしまい、全国のニュースを網羅できてはいなかったという実態があります。だからNEWS DIGではJNNをまとめて全国的にニュースを展開していくことに意味があったのかなと思います。

サイトを運営して改めて感じるのは、いくらマーケティングや競合分析を行って仕組みを作っても、原動力となるのはあくまでもコンテンツだということです。NEWS DIGが短期間で1億PVを越えることができたのは、TBS/JNNの取材力やコンテンツがユーザーに高く評価された結果だと思っています。

記事は1日にどれくらい公開していますか?

南部 TBSのニュース記事だけでも1日100本以上です。基本的には地上波のニュースに準拠するものが大半で、ニュースが発生するたびに配信しています。他にもオリジナルコンテンツなどさまざまな記事を公開しています。

サイトを運用していく上で指標にしているものは何ですか?

南部 やっぱりPV数は重視していますね。今はまだ立ち上げ段階なのでとりあえずそこを伸ばそうとしていますが、時間とともに指標は変わっていくと思います。「PV数を追い求めるのでいいのか」という議論は当然ありますが、「PV数を追い求めずに中身のいいものを出したからいいよね」というスタンスだと、どんどん軸がぶれてしまう。「絶対に毎月1億PVとらなきゃいけない」という話ではありませんが、落ちてはいけないとは思います。
 

ウェブメディアの運営を通し、テレビの力をあらためて実感

南部諒生

 

NEWS DIGは広告も出していますか?

南部 SNSなどウェブには出していますね。PV数を上げるためというよりも、サービスを知ってもらうのが狙いです。地上波で取り上げることもありますが、そのシナジー効果はすごいですよ。テレビで一言呼びかけたら一気にPV数が跳ね上がります。テレビのリーチ力のすごさを改めて感じます。

テレビは爆発的な拡散力があるんですね。テレビとウェブにはどんな違いを感じますか?

南部 やはりユーザーの反応をリアルタイムでかつかなり詳細に見れるところでしょうか。放送だと他局の状況や天気・時間などコンテンツそのもの以外にも変動要因が多いと思います。一方でウェブは純粋にタイトル・サムネなど含め、コンテンツが魅力的かどうかで判断される面が大きいです。だから自分たちでコントロールできる領域が大きいし、ユーザーの動きが全部データでわかるので、おもしろいですね。

NEWS DIGは今後、どう展開していきますか?

南部 地上波はどうしても枠や尺が限られてしまっているので、出し切れないことがたくさんあるんですよね。例えば、専門家に話を聞いてもオンエアで使うのはそのごく一部で終わってしまう。だから、そういうものをデジタルに最適化して出し続けていこうと思います。

ただ、今やっていることの延長だと、まだまだ伸びると思う一方、いずれ上限がきてしまう。なので、コンテンツのコンセプトをどんどん広げていかなければならないと考えています。例えば、不動産や漫画、レシピとか、もしかしたらもっと生活情報に近いものとか。さらなる成長のために、もっと我々がニュースとして捉えるものの幅を広げていこうと思っています。

TBSの魅力はチャレンジできる土壌があること
 

南部諒生

 

そもそも、以前からウェブに関する知見があったのですか?

南部 僕は元々技術として入社したのですが、ウェブに関する知見は全くありませんでした。2013年から2017年まではカメラマンとしてロンドン支局にいて、帰国後は報道システムを担当し、JNNネクストメディア準備室には2021年7月に異動になりました。

元々、技術的なことをやっていたのに、今は全然違うことをされているんですね。

南部 TBSにはたくさんの職種があるので、ある種、社内で転職したような気分です。一口に技術と言っても、カメラマンとWebサイトの設計は全然違いますし、ウェブメディアを運営するのも、番宣のサイトを立ち上げるのとは全く違うんですよ。どうやってリーチさせるかがすごく重要なので、勉強しながら戦略を練ったのがよかったと思います。

TBSの魅力は何だと思いますか?

南部 ここ数年で「チャレンジすることが大事」という文化がすごく根付いたような気がします。社長が「失敗してもいいからとにかくチャレンジしなさい」と言ってくれるのは大きいと思いますね。

最後に、TBSの報道局を目指す若者に向けてアドバイスをお願いします。

南部 これからのテレビ業界は今までやってきたことの繰り返しだとおそらく成長できないので、今までと違う新しいことにチャレンジしようという気持ちを持つことや、ちゃんと自分の考えで行動することが大事だと思います。

仕事をやらされてると思うと急にきつくなると思いますが、僕は自分でやっているんだという感覚があります。特にデジタルの領域だと、やったことがすぐに結果として返ってくるので、その意識を強く感じられますね。
 

南部諒生

2007年入社、スポーツ・バラエティなどのカメラマン。2013年から2017年までロンドン支局に赴任。2021年7月にJNNネクストメディア準備室に異動、NEWS DIG立ち上げのシステム開発チーフ、ときどきNEWS DIG編集長も。

 

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