• People

妻夫木聡・佐藤浩市・目黒蓮が馬と心通い合わせる神秘的な現場に…TBS日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』頂点を目指す“人と馬の物語”、情熱の制作秘話

TBSで放送中の日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(毎週日曜よる9時)が、2025年12月14日(日)に最終回を迎えます。

原作は早見和真氏による同名小説(新潮文庫刊)で、競馬の世界を舞台にひたすら夢を追い続けた、人間と競走馬の20年にわたる“継承”の物語です。

妻夫木聡演じる税理士・栗須栄治(くりす・えいじ)が馬主である山王耕造(さんのう・こうぞう)との出会いによって競馬の世界へ。熱き大人たちが、家族や仲間たちとの絆で奇跡を起こしていく様子が描かれています。

この作品の協力プロデューサーを務めたTBSスパークルの小髙夏実に、制作の裏側や最終回の見どころのほか、自身のキャリアについて話を聞きました。

競馬を知らない人でも楽しめる作品を目指し、徹底取材

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

小髙さんが担当している「協力プロデューサー」とは、どんな役割でしょうか。

小髙 簡単に言うと、プロデューサーと協力してプロデューサー業務を行う役割になります。言葉のままですみません…。企画を立てた加藤章一プロデューサーと共に、作品全体に関わるプロデューサー業務を、同じく協力プロデューサーの大河原美奈さんと私の二人体制で務めることになりました。

これまでAP(アシスタントプロデューサー)として4本ほど作品に携わってきましたが、その時には関わってこなかった本打ち(※台本制作の打ち合わせ)や仕上げ(※編集や音楽入れなど)への参加、予算の管理、キャスティングにも携わらせていただいてます。「プロデューサーをサポートする」という気持ちでいてはダメで、あくまでもプロデューサーの一人だという意識で全体を見られるように取り組んできました。

個人的に意識したのは、現場で話しかけやすい存在であることです。自分はまだ若手なので、ささいなことでもスタッフのみんなが何か困ったときや、してほしいことがあったとき、気軽に「まずは小髙に話してみよう」と思ってもらえるような、距離が近い存在でいられたらいいなと思っていました。

着用する黒い長袖シャツは、妻夫木聡さんがスタッフにプレゼントしてくれたもの
着用する黒い長袖シャツは、妻夫木聡さんがスタッフにプレゼントしてくれたもの

加藤プロデューサーにより企画が動き出したのが2019年だそうですが、小髙さんはいつごろから制作に参加しましたか?

小髙 私が参加したのは、2025年4月ごろです。私は2020年に入社しましたが、入社してすぐにお世話になった先輩方が、『ザ・ロイヤルファミリー』には多く参加しています。

まず入社して初めて参加した作品が『カンパニー~逆転のスワン~』(2020年、NHK)というドラマなのですが、その作品で加藤さんが制作統括、大河原さんがAP、松田礼人監督がチーフ演出(※『ザ・ロイヤルファミリー』で演出を担当)を担当していました。

さらに、その次に参加した作品『着飾る恋には理由があって』(2021年)では、『ザ・ロイヤルファミリー』の演出陣である塚原あゆ子監督、府川亮介監督と一緒でした。

入社間もなくからお世話になった先輩方と約5年の時を経て、『ザ・ロイヤルファミリー』という「継承」をテーマにした物語を一緒に作れることが、とても感慨深いです。

加藤プロデューサーの制作チームの導き方をはじめ、先輩方の作品への向き合い方は本当に勉強になります。

先程挙げた内容以外では、どんな業務を担当しましたか。

小髙 例えばキャスティングですと、私が参加したころには、配役はかなり決まっていましたが、椎名展之(しいな・のぶゆき)役の中川大志さんは、加藤プロデューサー、大河原協力プロデューサーと相談し、私からオファーさせていただきました。

8話から登場する展之はシーン数は多くないものの、インパクトの強いキャラクターです。7話で山王耕造(演・佐藤浩市)が亡くなったあと、8話では一気に世代が変わり、目黒蓮さん演じる中条耕一(なかじょう・こういち)×展之×市原匠悟さん演じる野崎翔平(のざき・しょうへい)のシーンが登場してくる中で、新たなワクワクが生まれてくるようなキャスティングを考えた際に、中川さんが浮かびました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

また、撮影を安全に行えるように、リスク管理に目を向けることも大切です。500人規模のエキストラの方たちに協力していただく撮影では、人が多すぎてパニックになる可能性も考えられます。そのため、安全にスムーズに撮影が行えるよう、助監督陣と当日の対策の相談をして撮影に臨みました。ほかにも炎天下の撮影ではこまめな水分補給を促したり、体調不良のスタッフやエキストラの方への対応だったりも行いました。

特に今回の作品は、本当にたくさんのエキストラの方々の協力がなければ成り立たないシーンが多くありました。現場で見ていると、「この間も参加してくださってましたよね!」と思う方もたくさんいらっしゃいました。ご参加いただいた皆さまには感謝の気持ちでいっぱいですし、少しでも安心して楽しかったと思っていただける現場になっていたら嬉しいです。

脚本作りはいかがでしたか?

小髙 今回は脚本家さんとプロットライターさんが入っていらっしゃるので、プロットと脚本作りを同時進行していきました。

大前提として、今回は競馬を知らない人も楽しめる作品を目指しています。私自身、競馬場に行ったことも、競馬を見たこともなかったので、実際に見に行って勉強しました。

原作を読ませていただいた際に、本当に自分でも気付かないうちに涙が流れている瞬間があったのですが、初めて競馬場でレースを見た時も同じような無意識の涙がこみ上げました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

競馬はギャンブルのイメージが強いかもしれませんが、実際に目にするとスポーツの側面も強く感じます。レースに至るまでに実にたくさんの方が関わっていて…そんなたくさんの方の「想い」を乗せて走る馬たち。地鳴りを感じるぐらい、彼らを熱狂的に応援する観客たち。ゴールの瞬間のあの一体感は、競馬でしか感じることのできない魅力の一つだと思います。馬がゴールする瞬間は、思わず「彼らがこの場所にたどり着くまでにどんなドラマがあったのだろう」と、「人が、馬が、生きていくということの熱量のようなもの」が胸を打ち、目頭が熱くなりました。

また、今回はJRAさんの全面協力のもと、茨城・美浦と滋賀・栗東のトレーニング・センターに伺って、実際に調教師さんに厩舎をご案内いただいたり、ロケでも伺った競争馬の生産・育成牧場である社台ファーム(北海道)さんだったり、たくさんの関係者の方への取材をもとに脚本が作られていきました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

ドラマでは登場する人物をどのように造形していったのでしょうか。

小髙 脚本を作っていく中で、脚本家とプロデューサー陣での話し合いや監督の意見、それからキャストさんの意見も反映されて、キャラクターは形作られていきます。

妻夫木聡さん演じる主人公・栗須栄治はどんな話し方をして、どんな服を着て、どこに住んでいるのか。原作で多くを描かれていない部分などを脚本家さんと相談しながらキャラクターを定めていきます。

衣装ひとつとっても、それぞれのキャラクターの色が出ます。多くの場合、事前にプロデューサー、監督、セカンド助監督、スタイリストまたは衣裳部でそれぞれのキャラクターの方向性を打ち合わせしてから、衣装合わせの日に衣裳チームが選んできてくれます。

山王耕造は白やオレンジ色など派手な色が多いです。衣装だけが並んでいるのを見て、これを着こなせる人なんているのだろうかと感じてしまいましたが、佐藤さんが着て出てこられると「確かに、耕造がいる!」と感動しました。一方、沢村一樹さんが演じる耕造のライバル・椎名善弘(しいな・よしひろ)はこれでもかと言うくらいに全身真っ黒です。これは衣装合わせの際に監督と衣裳部の話し合いによって生まれました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

中条耕一はクタッと首元の伸びたシャツなどでどこにでもいそうな平凡な大学生でありつつも、はじめは謎の役として登場してくるので、どこか印象的な雰囲気もある絶妙なスタイリングだと感じます。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

また、今回の物語は20年間の物語です。2011年当時の流行から、だんだん現代へとスタイルも変化しています。スタイリストさんや衣裳さん、持ち道具さんたちのこだわりによって、キャラクターたちがより生き生きと輝く力になっていて素晴らしいです。

それから、今回は悪人のキャラクターがいないところも特徴です。1話では黒木瞳さん演じる耕造の妻・山王京子(さんのう・きょうこ)と小泉孝太郎さん演じる長男・山王優太郎(さんのう・ゆうたろう)が敵かのように描かれていましたが、実際はそうではありません。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

耕造に隠し子が発覚したあと、優太郎は「熟年離婚なんてコスパが悪いでしょう。別れないよ、あの2人は」と言っていましたが、本当は京子は夫を大切に思っていて、ロイヤルファミリーのデビュー戦を見届け、涙を流しながら耕造を看取りました。これは原作とは異なる展開ですが、黒木さんの京子に対する思いも込められており、最高にすてきなシーンでした。

ヘアメイクでこだわった点を教えてください。

小髙 これまた、メイクチームが素晴らしくて。ビジュアル面でもすごくナチュラルに20年間の変化が感じられると思います。耕造の髪色の変化が目立つかもしれませんが、栗須の白髪も徐々に増えていたり、松本若菜さん演じる野崎加奈子(のざき・かなこ)も髪型や肌の色が徐々に変化しています。この細部へのこだわりが、物語をさらに魅力的にしてくれたと思います。

涙が出るほど美しい、早朝の中山競馬場に感動

キャストの皆さんの雰囲気はいかがでしたか?

小髙 キャストの皆さんは、とにかく仲が良くて。カットがかかったらすぐに楽しそうにお話されていて、その雰囲気が画にも生きているように感じます。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

主演の妻夫木さんはお人柄が素晴らしい方です。視野がとても広くて、常に周囲を気にかけながら現場に立っていらっしゃる印象です。たくさんいるスタッフ一人一人の名前も覚えてくださって、感心するばかりでした。佐藤さんとは旧知の仲でいらして、お互いに信頼しあっている様子が見られました。

また、妻夫木さんと目黒さんは今回が初共演ですが、クランクインの前は妻夫木さんが直接ご連絡されたり、北海道では佐藤さんを含めた3人でお食事に行かれたりと、関係性を深めていかれたようでした。

妻夫木さんが「泣くつもりはなかったのに、泣いてしまった」とおっしゃって、栗須が涙を流すシーンが増えたことも印象的です。例えば、7話で栗須と耕造が牧場でロイヤルファミリーを待ちながら語らい合うシーンでは、耕造から「俺は馬主としては凡庸だったが、お前をこの道に引きずり込んだことは手柄だったな」と声を掛けられ、栗須が涙を流します。私もすごく大好きなシーンなのですが、このシーンで妻夫木さんは泣くつもりではなかったそうなんです。現場の空気も相まって、自然と涙のシーンにつながったようです。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

撮影はロケが多かったようですが、いかがでしたか?

小髙 JRAさんのご協力のおかげで、中山競馬場(千葉)、東京競馬場(東京)、新潟競技場(新潟)のほか、美浦トレーニング・センター(茨城)や競馬学校(千葉)など普段は入ることさえできない、さまざまな場所へロケに行かせていただきました。JRAさんの協力がなければ絶対に撮れない画ばかりです。

特に、6話で栗須が「特別な場所」として耕一と待ち合わせた、早朝の中山競馬場にはとても感動しました。競馬場は美しい芝に囲まれて広く、遠くまで見渡すことができます。実際にみんなで朝日が昇るのを待ち構えての撮影だったのですが、朝日が昇ってきてオレンジ色の光が差し込んで場内を照らす様子を見たときは、思わず涙が流れるほど美しかったです。こんな素晴らしい景色を映像におさめられたことが嬉しかったですね。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

競りのシーンのロケも記憶に残っています。あのシーンは、実際の鑑定人さん(※競りの進行役)とスポッターさん(※競りの係員)に出演していただいています。プロの皆さまのお力添えもあり、本当に競りが行われているようなリアリティーあるシーンとなりました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

今回の作品は特に、私が今まで生きてきた中で触れてこなかった場所や出会ってこなかった職業の方々と知り合えるなど、全てが興味深いことばかりでした。大勢の馬主さん、調教師さんにご協力いただき、現役のジョッキーさんにもご出演いただき、作品に関わってくださったすべての競馬関係者の皆様に心より感謝しています。

ほかにも、北海道には夏の終わりと秋に2回ロケに行きました。現地の方が「この辺りはあまり雨が降らないんですよ」とおっしゃっていたのに、私たちが行ったときだけ、すごく雨が降っていたので、制作陣の中に雨男か雨女がいると話題になりました(笑)。

レースシーンはどのように撮影したのでしょうか。

小髙 ドラマのために実際にレースをしていただくことは難しいので、実際のレース映像を使っているところもあれば、1頭や2頭で実際に走ってもらっているところもあります。何度も走ってもらうことはできないので、一発本番勝負の撮影でした。カメラマンチームも素晴らしく、その一瞬を逃さない撮影が行われました。

台本上も映像上も意識しているのは、毎回、同じレースにならないよう、逃げ馬、差し馬、鼻差のゴールなど、勝ち方のバリエーションがあることです。原作に書かれているレース展開に寄せるときもあれば、少し違うゴールの仕方になっているときもあります。そして何より、それぞれのレースの中に物語としての人間ドラマがどう関わってくるかも大切なところです。

ジョッキーの佐木隆二郎(さき・りゅうじろう)を高杉真宙さんが演じています。

小髙 高杉さんのシーンは、実際に馬に乗っていただいて撮影しています。高杉さんはもともと乗馬ライセンスをお持ちだったので、乗馬がとてもお上手です。今回の撮影のために、競馬学校で実際に指導している先生とマンツーマンで何度も練習していただきましたが、先生からも「才能がある」と絶賛されていました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

少し乗馬経験があった調教助手・安川(やすかわ)すみれ役の長内映里香さん、全く経験のなかった青年期の野崎翔平役の市川匠悟さんにも、今回のために乗馬練習をしていただきました。皆さん、馬への愛があり、すぐにお互いに心を開いていて、おかげですてきなシーンを撮影することができました。毎度、優しくも熱心に指導してくださった競馬学校の先生にも感謝の気持ちでいっぱいです。

レース以外にも、馬とのシーンがありましたね。

小髙 馬との撮影では、人と馬の気持ちが通じ合っているのかもしれないと感じる瞬間が何度もありました。ポスター撮影の時からなのですが、佐藤さんにはびっくりするぐらい、どんな馬もすぐに懐いていました。壁を作らずに自然体で接していらっしゃるので、その雰囲気を馬も感じ取っているのでしょうか。馬も嬉しそうな表情をしているように見えました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

妻夫木さんも元々馬との関係性をお持ちで、馬との撮影の仕方についてもアドバイスをくださいました。妻夫木さんはじめ、松本若菜さんや調教師の広中博(ひろなか・ひろし)役の安藤政信さんといったキャストの皆さんが、撮影の合間、優しく馬に話しかけている姿がよく見られ、馬との信頼関係が自然と築かれていったと思います。

また、キャストの皆さんもインタビューにて答えていらっしゃいますが、7話で栗須と耕一が加奈子のいるノザキファームを訪ね、耕一が初めてロイヤルファミリーと触れ合うシーンがありました。仔馬との撮影だったので、撮影は厳戒態勢ですごく遠くからカメラを構える中、3人に自然と仔馬が寄ってきたあの姿はとても神秘的な光景でした。人が心を開くと、それが馬にも伝わるのだと感じました。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

今回の制作を通して、特に学んだ点は何でしょうか。

小髙 キャスト、スタッフ、そして協力してくださった皆さん、誰が欠けても成立しなかったと思うほど、全員の力で作られたドラマだと思います。

学んだことはたくさんありますが、加藤プロデューサーや塚原監督が、世界を見据えてドラマに取り組む姿は特に印象的でした。それは決して夢物語ではなく、世界に届くための根拠を具体的に言語化し、それを積み上げていらっしゃいます。その姿勢をとても尊敬しますし、今後、作品を作り続けていく上で不可欠な視点だと思います。

まもなく最終回が放送されます。見どころを教えてください。

小髙 最終回では、20年にわたる物語がついに完結します。果たして彼らは「有馬記念」という大きな夢の舞台にたどり着けるのか、そして勝利をつかむことができるのか。ぜひリアルタイムで見届けてください。誰も予想しえない最高に気持ちのいい最終回が待っていると思います。

この作品は、登場人物たちの持つ生命力や熱い思いが、見る人の心に響き、自然と涙があふれてくるのだと思います。私自身、原作を読んで泣き、脚本を読んで泣き、撮影をして泣き、そして完成した映像を見るたびに泣くという、なかなかない経験をしています。「夢は頂点!」とひたむきに突き進むキャラクターたちの姿が、「自分も頑張ろう」という前向きな気持ちにさせてくれると思います。

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』劇中写真

目標は「あの人と一緒に頑張ってみよう」と思ってもらえる存在になること

ところで、小髙さんはどんな経緯でTBSスパークルに入社されたのでしょうか。

小髙 幼少期から物語が好きで、たくさんの本を読んでいて、将来は言葉を扱う仕事がしたいと思っていました。大学では漫画やドラマ、映画の作品研究をしていたのですが、3年生のころからドラマや映画を制作する仕事自体にも興味をもつようになりました。

特に映像の仕事をしたいと思ったのは『義母と娘のブルース』(2018年)がきっかけです。祖母が亡くなったタイミングで物語自体にも感じることがあったのですが、元々原作の4コマ漫画を読んでおり、ドラマとして「このように映像表現できるのか」ということにも驚き、映像業界により興味を持ちました。

TBSスパークルに関しては、ある企業のインターンで偶然仲良くなった友人から、TBSスパークルという会社ができることを教えてもらいました。映像制作の経験はありませんでしたが、入社前からドラマ部を志望し、「ドラマ部以外は考えられない」という気持ちで入社試験を受けました。

小髙さんにとって、ドラマ制作の魅力は何ですか?

小髙 ドラマ制作に携わって2025年で6年目になりますが、この仕事を続けてきて「辞めたい」と思ったことは一度もありません。もちろん、ものすごい失敗をして、己の未熟さを恥じてどこかへ走り出したくなることはありますが、それでもこの仕事をしなければよかったと思うことはないです。

ドラマ制作は、時に早朝からの撮影など大変なこともたくさんありますが、それ以上に大きな喜びを感じられます。完成した作品を視聴者の方々が見てくださり、「面白かった」、「感動して泣いた」といったコメントをいただく時、心から「頑張ってよかった」と感じます。このような体験ができる仕事は、他になかなかないと思います。

もしかしたら作品を見たどこかの誰かが、「次も楽しみだからあと1週間頑張ってみよう」と思ってくれるかもしれない、もしかしたら作品を見た誰かが作中の仕事をしてみたいと新しい「夢の種」になるかもしれない。携わった作品たちがそんな存在になれたなら、とっても幸せなことだと思います。

TBSスパークル小髙夏実

小髙さんの今後の展望を教えてください。

小髙 プロデューサーとして自分が企画した作品を作ることが今の一番の目標です。

また、『ザ・ロイヤルファミリー』でご一緒した加藤プロデューサー、塚原監督のような、現場でのあり方を目指したいです。現場のみんなが気持ちよく仕事ができるように気を配り、キャスト、スタッフからとても信頼されています。スタッフ一人一人に「この作品は面白い、この作品をたくさんの人に届けたい」と思ってもらうためには、この配慮ができるかどうかは、とても大事だと私は思うんです。

もちろん、連続ドラマの制作には、大変なことがつきもの。それを乗り越えてみんなで一丸となって頑張れるかどうかは、監督やプロデューサーのあり方で変わってくると考えています。ですから、「あの人と一緒に頑張ってみよう」と言ってもらえるような、そんな頑張りができる人間になりたいです。

最後に、小髙さんのように、ドラマ制作の仕事を目指す就活生に向けてメッセージをお願いします。

小髙 この仕事は誰にでも挑戦できる仕事だと思います。もちろん、その先でヒット作を生み出すかどうかは別ですが、取り組むこと自体に特別なスキルは必要ありません。ドラマ制作に興味があり、人と協力して何かを作り上げたいという思いがあれば、ぜひ飛び込んできてほしいです。

人生は一度きりで、本当にあっという間に過ぎていきます。特にドラマの仕事に就いてから、信じられないほどの速さで毎日が過ぎていくと感じています。だからこそ、毎日、自分のしたいことをして、会いたい人に会い、見たいものを見る。そういった経験の全てが、いつか必ず役に立つと信じています。とにかく毎日を楽しく生き、人を大切に過ごしてほしいです。

そして、この仕事は一人では何もできません。私も、日々一緒に過ごす仲間への感謝と尊敬の気持ちを忘れずに、これからも生きていきたいと思います。

>NEXT

TBS火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』プロデューサーが明かす制作秘話

TBSスパークル塚原あゆ子監督に聞く、日曜劇場『下剋上球児』での新たな挑戦

TBSスパークル小髙夏実

小髙夏実
2020年TBSスパークル入社。約3年間助監督を務める。
映画『わたしの幸せな結婚』と『下剋上球児』(ともに2023年)、『西園寺さんは家事をしない』(2024年)、『クジャクのダンス、誰が見た?』(2025年)でアシスタントプロデューサーを担当。日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』では、GPドラマで自身初の協力プロデューサーを務める。

本サイトは画面を縦向きにしてお楽しみください。