• AKASAKA REPORT

4000冊を並べる書店「双子のライオン堂」 本屋の新しい可能性「選書」に力を入れる

見よう見まねでオンライン書店を開設

赤坂で本を買いたいと思ったときは、書店「双子のライオン堂」へ!

2015(平成27)年にオープンした同店。オーナーを務めるのは、1986(昭和61)年生まれ、東京・目黒出身の竹田信弥さん。高校生のときにオンライン書店を開いたことをきっかけに本の販売を続けています。

「もともと本が好きで、部屋中が本だらけの状態でした。高校生のときに不登校だった時期があり、家にいて何もしないわけにはいかない。そんな中でぼんやりインターネットを眺めていると、社会で活躍されている人たちの中に、ホームページを開設して書店を構えている人がけっこういたことを知りました。それを見よう見まねでやってみたというのが始まりです」(竹田さん)

2003(平成15)年、竹田さんは古本の販売からオンラインでスタート。自身が読んでいたライトノベルや雑誌、漫画などを売り始めました。当時は良くて月に5万円ほどを売り上げていました。

約11坪の店内に、人文、哲学、思想、文学、海外、アート、ビジネスなど合計4000冊の本を並べる同店
約11坪の店内に、人文、哲学、思想、文学、海外、アート、ビジネスなど合計4000冊の本を並べる同店

初のリアル店舗は文京区白山

竹田さんは大学へ進学し、社会人になった後もオンライン本屋を続けます。大学在学中にはせどりを行うための免許「古物商許可証」を取得。25歳のとき、働いていた会社を退社と同時に本屋での活動を軸にすることを決意し、父親の会社の手伝いやアルバイトをこなしながら生計を立てていきました。

やがて本の“在庫”が増えて倉庫を探しているときに、スペースを提供してくれる人と出会った竹田さん。そのスペースを使ってリアル店舗「双子のライオン堂」を、2013(平成25)年に文京区白山にオープンさせました。

最初は知り合いや、イベントを通じて知り合った人らが客として訪れました。しかし、新規顧客をもっと獲得していかないと、ファンはもちろん売り上げも増えないと感じ、「ゲーム会」など小さなイベントから始めることに。みんなで好きな本を読み合う「読書会」も取り入れて少しずつ客を増やしていき、1カ月平均で15本のイベントを催していきました。

赤坂6丁目、赤坂氷川神社に向かう「氷川坂」の途中にある同店
赤坂6丁目、赤坂氷川神社に向かう「氷川坂」の途中にある同店

赤坂に移転、目指すは100年続く本屋

倉庫の持ち主だったオーナーが倉庫を手放すというタイミングで白山を離れる決意をした竹田さん。移転先の候補物件の中から予算はもちろん、イベントもできて本屋にもなれる広さ、自宅から自転車で通える距離など、いくつかの条件に当てはまったのが赤坂でした。そして2015(平成27)年10月、移転しました。

コンセプトは「100年続く本屋」。移転後の業績は右肩上がりで、本屋運営は順調に進んでいきました。竹田さん自身もラジオや雑誌、新聞などメディアに取り上げられる機会が増えていき、知名度も一気に上昇。しかし、2020(令和2)年なると新型コロナウイルスが大流行し大打撃を受けることに。打開策としてオンラインで読書会を開催し始めると、驚くことに地方や世界各地から参加する人も現れたそうです。

さまざまな仕掛けも用意。小説とその中に登場するカレーを商品化して販売し、物語の中に出てくる言葉や場所を格好良く着られるTシャツも製作。読書に合った音楽をつくってCD化も行い、本をつくっては出版するなど、いろいろな角度から世の中の関心を引こうとチャレンジを続けていきました。

小説とその中に登場したカレーを販売する同店
小説とその中に登場したカレーを販売する同店

選書の可能性=本屋が生きる道

オンラインが発達し、情報過多により本屋が消えるというニュースは日々絶えません。この先本屋が残る可能性として竹田さんは「選書」に注目します。

選書とは、その字の通り、多くの書物の中から選ぶこと。書店にはスタッフの選書によってつくられたコーナーが実際に多くあります。世の中には星の数ほど本があり、一つのテーマに絞られて選ばれることは即ち莫大なデータ処理であり、立派な技術であると竹田さんは説明します。

読者からすれば、他人が選んだ本や本棚が見られることは楽しみの一つと言えるかもしれません。たとえば、ある著名人による選書コーナーがあれば、きっとおもしろいと捉える人もいるでしょう。もしかしたらそれは、バーテンダーのように客から得たキーワードで酒をつくる感覚かもしれませんし、占いのように自分の未来や運命を知りたいときに選書が役に立つかもしれません。

「当店では、何から読んで良いか分からない読者に向けて、有料で選書サービスを行っています。本の代金とは別に『選書料』としてお客様から賃金をいただいております。これが今後世の中にある書店にとって『希望の光』になると思っています」(同)

沖縄物産などを扱う「橋本忠勝商店」に貸し出ししているスペース
沖縄物産などを扱う「橋本忠勝商店」に貸し出ししているスペース

竹田さんは「作家とのコネクションがあったので新刊をメインにした本屋にしたかったんです。オープンからまもなく10年。いまは次の10年に向けて、本やイベントなどの固定観念を一度捨てて、もう一度新しい感覚になって取り組んでいきたいと考えています。本屋がいまどんどんと消えていっていますが、そのほとんどが新刊をメインにしている本屋。そんな本屋や世の中の読者たちに『選書の可能性』についてもっとアピールしていきたいです。まずは、地元で働く人や住む人たちに有効活用していただけるような『新しい本屋』として、さまざまな取り組みを行っていきます」と語ってくれました。

Tシャツなどグッズ販売も行う同店。Tシャツには店のシンボルである扉が描かれている
Tシャツなどグッズ販売も行う同店。Tシャツには店のシンボルである扉が描かれている

赤坂で唯一の存在ともいえる本屋「双子のライオン堂」。気になる人はぜひ一度足を運んでみてください。

店舗情報

「双子のライオン堂」

住所:港区赤坂6-5-21
営業時間:15:00~20:00
定休日:日曜、月曜、火曜
ホームページ
https://liondo.jp

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